表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

国王を追い詰めて、召喚否定派にする

どのように追い詰めるか、ご期待ください。

 ■決意と行動■


 異世界召喚を辞めさせる――そう決意したが、具体的にどうしようか。



 王太子とエリシナさんは反対派。

 魔道士長は絶賛、賛成派。というか、私たちを召喚した主犯。


 国王や宰相は、あまり真剣に考えていなくて、他人事。

 まあ、自分たちに不利じゃなければいい。途絶えた術が復帰してめでたい。

 ……そんな感じだ。



 わたしもしずくも、幸いなことに、放り出されずにこの世界で生きている。

 ならば、これ以上「有能だ」と思われなければいいのかな。

 さらに、「もう、召喚したくない」と思わせるには、どうしたらいいだろうか?



 ふと、半年前に作った手洗いダンスを思い出した。

 国王も宰相も、「そんなことはできない」と断固拒否したんだよね。

 騎士団長まで踊ってくれたのにさ。


 つまり、「嫌なこと」なわけだ。ふ~ん。




 神殿にいるしずくと騎士団長に連絡して、積極的に手洗いをしている領とそうでない領、それぞれで流感(りゅうかん)による死者の数を調べてもらった。


 やっぱり、差が出ている。ついでに怪我による死者も減っているから、衛生管理が肝なんだよ。

 これを突きつけて、「あなたたちが率先して、やる気のない領のお尻を叩くべきです!」と言ってやろう。



 早速、王太子に相談して、国王の時間を取ってもらった。

 しずくに作戦を教えるかどうか……迷ったけど、しずくの天然具合に任せた方が面白そう。




「我々までやる必要があるのかな?」

 案の定、国王はやりたがらない。


「だから、今、必要性をご説明したでしょう」

 私はにっこりと笑顔で迫る。

「村のちびっ子たちも覚えられたから、大丈夫ですって」

 善意で追い詰めるしずく。



「国王陛下を敬う心はないのか?」

 宰相が、忠誠心の問題にすり替えようとする。


 ふーん、そう来るのねと、どう反論するか考えていたら……。



「天皇陛下に頭を下げるのは、物心ついたときから染みついているけど。

 予備知識もなく『国王だわい』って言われても、コスプレおじいちゃんと見分けがつかないし」

 と、しずくがしれっと言った。


「コ、コスプレおじいちゃん! あっはははは」

 もう、笑いが止らない。

 しずくもウケたことが嬉しいみたいで、にっこにこのいい笑顔。


 コスプレを知らない、こっちの世界の人たちはぽかんとしている。

 ひとしきり笑ったあとに、「役者さんのようなものを想像していただければ」と説明した。


 真っ赤になって震える国王。こんな失礼なこと、始めて言われたんだろうな。

 あらあら、王妃の方が怒っているみたい。慰めるように国王の手を握った。仲良しさんねぇ。

 だが、追及の手は緩めない。


「それなら、私たちは悪い魔法使いにさらわれた村娘の役だね」

 私がきっぱりと言ったら、今度は国王も宰相も青ざめた。



 異世界召喚って、そういうことなんだよ! ようやく理解したか?



「あっちは、貴族もいない国だったしね」

 と、しずくはワインを持つふりをして「ルネッサ~ンス」と歌うように口ずさんだ。


「ぷぷぷ! そういう世界だったね。あははは、そう考えたら、高位貴族って言われても『何それ』だし」


 しずくが満を持して、声を低くし「緊張せんのか~い」と突っ込む。

 それを受けて乾杯するふりをして、二人で細かく首を縦に振る。


 戸惑っている国王たちの視線をよそに、私たちは「お笑い」を完遂した。

 貴族がいないからこその笑い、だったんだろうな――と思いながら。


「いやぁ、一世を風靡した先輩たちだから、お目にかかれたら、緊張するかも」

「しーたん、そのとおりだね! あははは。

 敬意なんか、心から出るもので、強要されるものじゃないよ」


 わざと、聞こえるように言ってやるわ。不敬罪? 関係ないもん。

 ……いざとなったら王太子殿下、助けてね?



「それにさ、開かれた皇室って言って、あの方々なら手洗いダンスをやってくださると思わない?」

 しずくがまた、クリーンヒットを。

 そして、意識せずに自然に敬語が出るんだよ。国王、気付いてる?


「そう! そうだよね!

 災害があったら現地に行って被災者を慰労したり、国民に寄り添ってくれて。

 そういうお姿を見て、自然と尊敬する気持ちが育ったんだと思うよ」


 ちらりと横目で国王と宰相を見る。

 いいか、立場じゃなく、行動が尊いんだぞ。



 宰相は諦めた様子だが、国王はまだ、もじもじと抵抗している。




 では、最終兵器にご登場願いましょうか。

 王太子に合図を送ると、扉が開かれた。


「おじい様、僕が教えて差し上げます!」

 元気いっぱいに王太孫が入ってきた。


 この会談の前に「国王陛下に教えてあげてね」と耳打ちしたら、頼られて嬉しいお子様ははりきってくれた。


 国王は覚えられないのではなく、恥ずかしくてやりたくないとは言えない様子。

 いいおじいちゃんだね。



 召喚当時、第二妃を排除するために大変だったという事情は聞いた。

 その隙を狙って、魔道士長が召喚を了承させたらしいことも。

「異世界召喚は誘拐拉致」だと考えていなかったから、「まあ、いいか」と思ったんでしょう?

「日和見も罪」だからね。


 価値観の相違を、味わってくれたかな?

 気軽に異世界人を召喚したら、後々、面倒なことが起きるわよ。

 このように、ね!



 国王も宰相も、手洗いダンスを強要されたことで「異世界人は国王を敬わない」ということが身に染みて……否定派になってくれたことだろう。


話の流れはできていたのですが、織り込むお笑いネタが見つからずに三ヶ月くらい寝かせていました。

これですっきり。ルネッサ~ンス(乾杯)!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ