2:異世界転移
「えっ!?ここどこ?」
あたりは自分の知る大阪駅ではなかった。昨日の半グレ男子に絡まれたくなかったので、回り道して来たが、ここは新設されたのだろうか……いやいや、そんな訳がない。アマゾンのように木や草が生い茂っている。
景色がまるで大阪とはかけ離れている。しかも、俺は大阪駅から遠回りして、東梅田駅に向かっていたのだ。このマップを見て……あれ?おかしいな。スマホにマップが表示されない。
ギガはあるはずだし、どうでもいいクーポンの通知も来る。とりあえずインターネットには繋がっているようだ。
だとしたら、マップが表示されないのはおかしい。一体、ここはどこなんだ?迷い込んでいるのは俺だけじゃないかもしれない。
「誰か〜!誰かいますか〜?」
何も返事がない。
俺は状況を把握できなかった。ネットにも情報が出ていない。
途方に暮れて、辺りを見回していると、細い声が聞こえてきた。俺以外に迷い込んだ人がいたのか。
「どなたですか?」
「えっと、ルアですが…ここは〜」
声のした方に振り向くと、人ではなくドワーフがいた。異世界系のラノベやアニメでよく見る人外キャラクター「ドワーフ」だ。僕の身長の半分以下で、すごく小さい。
なんでドワーフがいるんだよ。ここはどこだ?異世界なのか?とうとう、俺は頭がおかしくなってしまったのか?
スマホの時計は22時を回っている。配信をみんなが待っているんだ。ツイキャスには繋がる。だが、こんなとこから雑談配信するのはおかしいな。
俺は、外配信をあんまりしない。風の音が入ったり、他の人の声が入ったりと、雑談配信に向いていないからだ。
だが、この状況を楽しんでいる自分もいた。
そうか。この異世界のような場所に迷い込んだことをツイキャスで配信したら……バズるかもしれないぞ。
そう考えた俺は、スマホでサムネを設定して、テロップに「異世界から配信/初見さん甘々対応します」と書いた。
そして、配信開始ボタンを押した。「異世界から配信」と通知を送った。
「で、どこから来たのですか?」と、ドワーフが細い声で聞いた。
「えっと、大阪駅からです。さっきまでそこの大阪駅にいたんですよ」
もうそこには木しかないが、俺は、自分が元いた場所を指さした。
「オオサカとは何でしょう?」
〚異世界から配信ってどういうことだよ?ww〛
〚どこにいるんだ!?〛
〚教えて〜〛
〚嘘にもほどがあんだろ!〛
配信に続々と人が入ってきた。同接は50人を簡単に突破した。配信を付けて3分で、新記録が出てしまった。異世界の力はすごいな。
「ここはオオサカではなく、フラワーダンジョンの前ですよ。」
ドワーフが指さした先にはレンガのような石で組まれたトンネルがあった。その先は真っ暗だ。
「フラワーダンジョン!?あれが?」
〚フラワーダンジョン?〛
〚誰と喋ってんだ!?〛
〚異世界見せて〜〛
〚嘘つき〛
〚実写にしたら良いじゃん〛
同接はすでに100人を超えている。実写に切り替えたら、もっと伸びるだろうか。
「あ、名乗るのを忘れていました。私はエルーです。よろしくお願いします」
「あっ、よろしく」
俺はそう言いながら、配信画面を見た。同接は150人を超えた。
俺は実写に切り替えることにした。もちろん顔は出さないが、それでも伸びるだろう。
そして、外カメラで景色とドワーフを映した。