表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/74

21話 相互理解

 三本の木。そこでトゥルーがフェイに礼を告げた。互いに相性が悪いと何処か感じていた。

 トゥルーはフェイの事が嫌いであった。だが、マリアを救ったのは事実であるのだから礼を言わないわけには行かなかった。


 それだけ言って彼は一刻も早くここから去りたかった。フェイが怖いからだ。人道に反さない為に、礼を行ったから、もうここから去りたい、彼の頭はそれでいっぱいだ。




(未だに……恐怖が克服できないとは情けないな……僕は……でも、やはり、《《これ》》の怖さを忘れられない。深淵……とでも言ったらいいのか。同族嫌悪に似た、恐怖、それが強くなる。《《自身の理解から外れた化け物》》僕はこれがダメなんだ……)



 得体の知れない恐怖。眼の前の存在がどうにも嘗てのフェイではない。全く違う別次元の常識の範疇の存在であると感じてしまう。人間は未知に対して恐れを抱く者である。


 トゥルーと言う存在はそれを十三歳の時に、その深淵を見てしまった。あり得ない程の執念。何かまでは彼は知らないが、その圧倒的な覇気が本能に刻まれてしまった。


 神ですら理解できない魂の深淵を僅かに覗いてしまった者へ対してのそれは呪いのようであった。



「……」

「……」



(早く、ここから去ろう)




トゥルーが足を孤児院に向けようとしたその時、とある二人組がフェイとトゥルーの元にやってくる。紅蓮のような紅い髪に同じように燃えるような眼の男、反対に氷結のように冷めている眼に、青い髪の男。



(確か、彼らは)



トゥルーにはその二人に見覚えがあった。仮入団期間の時からトゥルーに絡んできていた二人組であったからだ。円卓英雄記と言うノベルゲームではトゥルーが絡まれ、何度も戦闘を迫られるイベントが存在する。



これはアーサーも実はこの二人に絡まれており、二人で倒して互いの好感度を上げると言うイベントでもある。



*注意 尚、アテナの意向により、トゥルーとアーサーが二人組に絡まれるイベントシーンはフェイが出てこないのでカットされております。



「また、君たちか」

「おう、またオレ達だ、戦おうぜ。模擬戦だ!」


赤い髪の少年が好戦的な視線を向ける。だが、トゥルーは無闇に戦闘をしたくはないために首を振る。


「僕達も貴方の実力が気になっているんですよ。基全属性持ち(オールマスター)である貴方の実力が」


冷ややかな視線を向けながらも引くつもりがないとでも言いたげな青髪の少年。


「悪いけど、僕は」

「たく、どんだけビビりなんだよ。まぁ、所詮は孤児上がりだからな。オレ達みたいに、戦ってきたわけじゃないから期待はさほどしてないけどよ」

「……孤児が関係あるのか」

「あー、別に悪いとか言うつもりはないけどよ。オレたちはずっと冒険者として活動してきたから、ただ孤児院でぬくぬく育った奴と腕っぷしが同じわけがないってだけさ」

「ほう、それは面白い」



赤髪の男とトゥルーとの会話の間にフェイが入った。赤い髪の男と同様に僅かに好戦的な眼を向けている。



「お前が言っているのは孤児は劣っていると言う事に変わりない。ならば代わりに俺が相手になってやろう。俺も孤児だが、ぬるま湯に浸かっていたわけでもない。それを教えてやる」

「……へぇ、いいぜ」

「僕としては、トゥルーの方が気になっていたんだが……面白い」

「二対一で構わん」

「オレ達だったら、そこのトゥルーを入れても相手にならねぇよ」




明らかに舐められているそうトゥルーは感じていた。自身個人であれば問題ないが、孤児であることを馬鹿にされ劣る存在であると言われたことは彼だけでなく孤児院の家族を馬鹿にされているような気もしていた。





(こいつは……なぜ、対戦を受けた? 何か訳があるのか……。だが、孤児であることが劣っているような言い回しは僕も気に喰わない……。こいつが何を考えてそれを受けたのかは知らないが……)



(……マリアはコイツが守った。今だって孤児たちの評価を覆そうしているのはコイツなんだ。僕は、ここで引いても良いのか……)



葛藤。恐怖と意地。二つの間で彼は揺れていた。だが、悩みに悩んで彼は一つの結論を出した。



(僕は進むと誓ったのに……また、恐怖に折れようとしている。それでいいのか。例え克服が出来なくても、それを成そうとすることに意味があるのではないか……だとしたら)



「僕もやるよ。二対二だ」

「それでいい。そうじゃないと盛り上がらないぜ? なぁ、フブキ?」

「あぁ、その通りだね、グレン」




赤い髪の燃えるような少年はグレン、青い髪の冷ややかな少年はフブキと言うらしい。本来であるならばアーサーとトゥルーのタッグによってあっさりと倒されてしまう二人組である。



「気絶か、木剣が手から離れる、壊れる。そして降参の宣言で勝負を決めようぜ!」



だが、異分子によってその結果が変わる。



互いに木剣を構える。トゥルーは置いてあったフェイの予備の剣を、グレンとフブキが持ってきていた木剣を抜く。


最初に動いたのはフェイだった。地を蹴り、急激に接近をする。それを受け止めたのはフブキ。フェイの不完全星元強化、フブキも完璧ではないがフェイより精度は上である。



剣の腕ならばフェイが上だが、それを生かす地力がない。



あっさりとフェイの剣を受け止める。そして、フブキの表情と雰囲気が一変する。



「ヒャッはぁぁぁぁあ!!! やるじゃねぇかぁ!!! この僕にそう言われるなんて! 大したもんだぁ!!」




 先ほどまでのクールなイメージが急に変わり、大声で戦闘狂なことを言い始めるフブキ。そして、呼応するように暑苦し言葉使いであったグレンも変わっていた


「言い忘れていた……フブキは戦闘になると性格が変わる。暑苦しくて、合理的に欠ける動きをするが、まぁ、オレが使えば問題ない」



(この二人……急に人格が変わった!?)


 低い氷のように冷たい声。フブキとグレンの人格が入れ替わったように見えるかもしれない。現にトゥルーは内心驚きを隠せていなかった。



「……っち」



 トゥルーが舌を打つ。魔術によってフェイをサポートをしようとしたがそれが出来ない。常にフェイが目まぐるしく動くので狙いが定まらない。それにグレンとフブキもフェイを盾のようにしながら動くので尚更であった。


 二対二ではなく、最小な動きで最大の利益を出す、二対一の動き。フェイもフブキとの戦闘をしながらグレンの魔術サポートは捌ききれない。


 グレンの炎の矢がフェイの肩を打ち抜く。



「……」



 痛みを訴えるような視線は向けず、だが、左腕が使いモノにならない。片腕のみ、右で剣を振り続ける。



 トゥルーの魔術サポートも上手く行かない。理由は単純だった。フェイに気を割かれ続けてしまうから。フェイと言う駒があまりに主張が強い。そこに常に意識を持っていかれる。


 グレンの魔術サポートを相殺、それよりもまずフェイが気になって仕方ない。敵よりもまず味方の方を脅威と捕らえてしまうあり得ない現象である。



「どうやら、本当に期待外れだったな……オレ達の敵じゃねぇ」



 フェイが吹っ飛ばされた。次の瞬間にはトゥルーの前にグレンとフブキが突撃をする。二対一、吹っ飛ばされたフェイはどうなったのかと気になり視線を向ける。頭の皮膚が削れて血がでている。口も切れて、そこからも血がでていた。




「ったく、お前らぁあ! もっと気合出せよ!!!!」



 フブキの豪烈の剣によって、トゥルーの剣は宙を舞う。フェイに意識を取られ過ぎていた。完全なる彼の落ち度。



「やはり、オレ達が最強だ……たかが多少の魔術適正ではオレ達と言う相互理解を超えられないと言う証明になった」

「ははは!! 当然だな!」



 勝負はついたと言う雰囲気の二人。フェイの木剣も気付けば折れていた。


「所詮孤児などと言う檻の中に居ては成長はない……オレ達、やはり飛び出して正解だったわけだ」

「……」



 それだけ言って二人は去った。残ったのは敗北者の二人。フェイは直ぐにトゥルーの落とした剣を持ち再び素振りを始める。


 もうすでに、先ほどの戦闘が頭の中に染みこんでいるのだろう。常に彼は成長を続けている。



「……孤児は劣っていないと証明できなかった。僕は……何も出来なかった……クソ、またかよ……」

「……」



 トゥルーに目を向けず、フェイはただ剣を振る。その姿に自身の弱さと未熟さを改めに痛感させられた。


「もう一回、挑む……僕は……お前はどうする」

「……俺は強くならなければならない。他者の手を借り、只管に寄りかかるのは俺の主義に反する。だが、良いだろう。乗ってやる。あとはどうするか、お前が決めろ」




 その眼にはお前を試すと言うフェイの強い意志が感じられた。その眼線にトゥルーは何かを感じる。



(コイツ……僕を試しているのか……さっきの戦いももしかして、手を抜いて、僕の何かを試していた? 相変わらず、良く分からない奴だ……、でも今は一時的に同じ目的を持っていることに変わりなはい)


■◆




 最初にトゥルーが始めたのは理解だ。フェイと言う存在をいかにして理解をするべきか。どうやって連携をすればよいのか。



 あの二人は連携が取れていた。相互理解、それが完璧であった為に、フェイとトゥルーは負けた。いや、フェイはいつも通りであった。だが、トゥルーはフェイに意識を取られて、1+1がマイナスになっていた。



 フェイは得体が知れない。本人に聞いたところでその器は一切分からない。だがこれで諦めて、全く理解をしないで連携は出来ないだろうと考え、トゥルーは彼について考えていた。王都を歩きながら




(どうすれば……あ! あそこに居るのはユルル先生!)



 フェイといつも一緒に居る剣の師。フェイと大体一緒に居るの彼女なら何かを知っているのかもしれない。



「ユルル先生!」

「あ! どうもどうも。トゥルー君、どうかしましたか?」

「実は……かくかくしかじか」

「なるほど……そんなことが。フェイ君を理解ですか……うーん、フェイ君は私でも理解が難しいと言いますか……」



 ユルルでもフェイについての理解が難しいらしい。


「その二人に勝ちたいと言うか、だから何でも良いから教えてください」

「うーん、先ずフェイ君とトゥルー君が負けたという事実にちょっと驚いています。ベテランではなくその、グレン君とフブキ君は同期なんですよね? うーん、トゥルー君は優秀ですし……それにフェイ君も剣の腕はかなりの物です。状況を完全に理解できないのであまり言えませんが……フェイ君と連携がそれほどまでに上手く行かなかったと言う事なんでしょうね。……連携、フェイ君と……そんな大層な事、しなくてもいいかもですね。最悪ですが……《《フェイ君に任せて2対1でも勝てる気がしますね》》」

「え? それってどういう?」

「えっと、あんまり答えを言いすぎるのも教師としてどうかなと思うので、ここで止めておきます! でも、絶対に分かるはずです! 頑張ってください! 絶対勝てます!」

「は、はぁ」



あまり良く分からない。そう言う感想を抱いてしまったトゥルー。



「えっと、では、他に何か知ってませんか? パートナー(共闘仲間)としての相性みたいな」

「ぱ、パートナー(結婚相手)!? え、えと、フェイ君は、乱暴で危なっかしい所があるから、8歳くらい年上で、包容力のある女性が良いかもですね……。あ、あと趣味があう人、フェイ君剣が好きみたいですから……同じように剣が好きな銀髪の女性が良いかと……な、なんちゃって! 私ったら何を、言ってるんだろう! ハズカシイ!」

「……な、なるほど」



(一体、誰の事言ってるんだろう……良く分からない……。共闘仲間に女性とか関係あるのか? うーん、ユルル先生って意外と難解な問題を出すんだな)




答えが出るはずもなく、トゥルーは再び三本の木の元に戻っていく。その道中でアーサーと出会った。



「あ、アーサーさん」

「……トゥルー」

「かくかくしかじか」

「……なるほど。どこの馬の骨か知らないけど、フェイが負けたんだ……」


全く知らない等と考えているアーサーだが、実は一度グレンとフブキに絡まれた事がありぼこぼこにしたのにそれを一切覚えていない。



そんなアーサーにこれまでの事を話していくトゥルー。本当ならばこの二人が組んで初見で圧倒をするのだが、そこに居たのはフェイであった。残念な事にまたしてもアーサーとフェイの好感度上げイベントがフェイによって邪魔をされたとこになる。




「それでリベンジをしたいんだけど」

「……フェイがポテンシャル全て引き出したらそんな馬鹿達に負けるはずない。でも、それはトゥルーには無理。なら、答えは一つ」

「……」

「トゥルーはフェイを怖がってる。それでマイナス。だから、足しても所詮1。なら、相手もマイナスにすればいいだけ」

「……マイナス……マイナス」

「そう、マイナス」

「何か、分かったかもしれない。ありがとう! アーサーさん何か掴めたかもしれない。他に何か知らないかな? パートナー(共闘仲間)としてどんな条件が必要とか、気を付けることとか」

「フェイのパートナー(恋人)。勿論知ってる。断固として年上にするべき。金髪で剣の腕が経つなら尚よいと思う。あと、レタスをプレゼントできる人」

「……あ、そう」

「うん。これはワタシには分かる、あと馬鹿二人はちゃんと倒しておいてね」




(良く分からない……金髪? 銀髪? 剣の腕が優れていると言うのはユルル先生も行ってたけど……。えぇ? どういう事? しかも女性限定なのはどうしてだろう……う、うーん、分からん)


(……こればかりは優れた心理学者とかじゃないと分からない哲学的な問題かもしれないな。これは短時間では無理だろ)



頭を切り替えて、トゥルーはアーサーのアドバイスをもう一度思い出す。



(……僕がアイツを強く意識し過ぎていた……なぜだ? あの時の、恐怖が……足しても僕たちはマイナス……マイナス……なら……相手もマイナスにすれば……それには……)



結局、ユルルの《《本当の》》アドバイスは理解など彼に出来るはずがなかった。




■◆




 場所は変わって、再び三本の木の場所。なんと、トゥルーはその日のうちに二人に対して勝負を挑んだ。




「同じ日に僕たちに挑むなんてね」

「また、オレ達との格の差を教えてやるよ」



並列に並ぶ、グレンとフブキ。だが、フェイとトゥルーは直列に近かった。トゥルーが後ろに行き、前ではフェイが腕を組んでいる。



「それじゃあ、始めよう。僕とこいつはもう準備万端だ」

「あ、そうかい! じゃあ、僕達も本気で行かせらもうぜぇぇぇぇ!!!!!!!!」

「手早く終わらせよう……合理的にな」



トゥルーが合図をすると、グレンとフブキが走る。だが、



「「――ッ」」




足が止まった。ここに居る誰かが何かをしたわけではない。ただ、《《フェイが圧を飛ばしているだけ》》。



眼を僅かに見開いて、剣も抜かず、ただ、覇気を飛ばす。それだけで二人の足を止めさせた。異様な魂を持つ者が、精神だけなら世界を取れるほどの猛者による気迫。無論、これは、《《ただの付け焼刃》》。



トゥルーに言われて、フェイが今まで無意識にしていたことに対して、僅かに意識を加えただけ。器用にそんな殺気をのようなと事などは彼には出来ない。



だが、《《付け焼刃の不器用でこれほどの成果を出す》》




(……本当にコイツは……意味が分からない。向けられていない僕ですらうすら寒さを感じさせるなんて)



トゥルーが考えたのはシンプルだった。この二人にもあの恐怖の一端を知ってもらう。それで互いにマイナスの状況を作り上げただけ。



(……並の聖騎士ならこれで終わりだろうね。同期でこの圧に耐えられるのが何人いるか分からないけど……)




(本当に恐ろしい……もうすでに、《《13秒稼げた》》)




 風の魔術、トゥルーの精密な星元制御によってそれは行われる。風のカーテンで二人を分断する。


 最初はフェイ()グレンとフブキ()、それを《《ただの圧》》によって足止めし、トゥルーの風の魔術によってフェイとトゥルー()グレンかフブキ()に持ち込んだ。




「……締めるか」




 フェイが口を開き、剣を抜く。




「あぁ」




 呼応するようにトゥルーも剣を抜いた。




(クソが……あり得ねぇぞ。こいつら、相互理解なんてしちゃいねぇ。あの金髪魔術師のトゥルーはただ、風のカーテンで分断しただけ。あんな大技、普通出来なぇ、なのに、なのに、《《あの圧で完璧な時間を稼がれた》》)



フブキが心の中で悪態をつく。



(……あの黒い奴、フェイと言ったか。オレ達みたいに理解をしあおうなんて思っていない、独断と絶対なる個なんだ。だから、《《ただ居るだけ》》でここまで……あれと理解など出来るはずがない……トゥルーはただ、邪魔をしなかっただけ)



グレンがすでに負けを悟り、分析をする。今後どのように強くなっていけばよいか、この敗戦を次にどう生かすか。考えていた。



(……僅か数時間でオレ達の相互理解を超えて来たのか。いや、元々超えていたと考えるべきか……フェイと言う奴は単体なら倒せる。剣の腕はかなりだろうが、星元操作があまりに不細工。だが、それを補ったあまりある何か……。それを僅かに理解をしていたアイツ(トゥルー)の勝ちか)




 フブキの剣が宙を舞った。それを見て、グレンはこれ以上の戦闘に意味はないと投げるように剣を捨てた。







「ったく、負けたぜ! オレ達の負けだよ! ちくしょう!」

「鍛錬が足りなかったようですね……」



再び人格が入れ替わったように、グレンが情熱的にフブキが爽やかになる。



「完敗だったな! 圧勝されたぜ」

「いや、僕たちもぎりぎりだったよ」

「嘘をつかなくていいですよ、僕たちは完膚なきまで負けた、それだけです」

「悪かったな、孤児が劣るとか偏見だった!」

「また一つ、学ばせてもらいました。何処でも咲く花があると」

「気にしないでいいよ。僕もいろいろ学ばせて――」




グレン、フブキ、トゥルーが三人で話していると、フェイは無駄口を叩かず黙ってそこを去った。勝利の余韻にも浸らず、無駄な干渉もせずに、ただ黙ってそこを去って行く。


去り際に見えた、無機質な顔。



彼にとってはあの程度の闘争は何も感じなかったのかもしれない。


風が吹き抜ける。その背中を見ていると三人の心は急に冷めていく。



「アイツは誰なんだ? 入試でただの雑魚だったとオレは思ってたんだが」

「……僕にも分からないよ。アイツの本質はきっと誰にも分からない。誰にも、分かってはいけない深淵のような何かかもね……」



三人は背中が遠ざかって行くのをただ見ているだけであった。拳を交えてグレンとフブキ、トゥルーが僅かに距離が縮まった。



だが、何も言わずに去って行くフェイ。三人から離れて行く彼を見て誰とも縮まらない距離を微かに感じていた。




■◆






トゥルーは俺のパートナー説浮上中!!!



そして、何だか良く分からない二人組登場、これは……説の裏付けになっているのではないだろうか?



そして、まさかの対戦! ベタだなぁ。でも好きだよ?


 無理してボコボコにする、一発受けて一発返す戦法、『ダメージ交換』をしても良いんだが……それやるとこのイベントの趣旨からぶれる気がするんだよね。


 

「ヒャッはぁぁぁぁあ!!! やるじゃねぇかぁ!!! この僕にそう言われるなんて! 大したもんだぁ!!」


 ん? どうしたん? 急に人格が変わった感じになったぞ、この青い奴。


「言い忘れていた……フブキは戦闘になると性格が変わる。暑苦しくて、合理的に欠ける動きをするが、まぁ、オレが使えば問題ない」



 いや、絶対言い忘れてたはずないだろ。その、『言い忘れていた……』が使いたかっただけでしょ?


 それにしても、その辺の雑魚ならその変化に驚いたかもしれんが俺は主人公。そんなに驚かない。精々、小学生の時に校庭の大きな岩をどかしたら岩下に大量の知らない虫が居た時程度の驚きしかない。


 さて、さて。


 見極めさせてもらおうじゃないか? トゥルーのパートナーとしての実力とやらを……あれ? こいつなんもしないぞ? botか?



 あっさり負けたんだけが……何をしてるの? それでも俺とパートナー説浮上した奴か? これは買いかぶり過ぎたか。


 え? リベンジしたいだって? 俺だって元からそのつもりだよ。


 やはり、一回負けておかないとね? なるほどなるほど、分かってるね? 初見から連携出来たらそれはそれで面白くないもんね?


 一回負けて、そこから倒す、努力系主人公の俺に相応しいイベントじゃないかぁ。だから、最初から勝つわけには行かず、botだったのね?



 では、お前の実力を見せてもらおう。



 トゥルーは何処かに行った。情報収集でもしてるのかね? その間、俺は剣を振っている。



あ、戻ってきた?



「お前、あれは出来るか」

「あれとはなんだ」

「……昔僕との決闘でやった、あの、殺気のような何かだ」

「……知らん」

「……そうか。無意識か」



え? 何か、俺の好きそうな覚醒伏線が……やはりパートナーか?



「僕に殺気を飛ばせるか?」

「……」

「――ッ。それ今すぐやめろ!!」



ちょっと、目を見開いて威圧みたいなことをしたらビビッてるな。威圧ね……地味だな。気絶くらいして欲しいものだけど。


「それを使って勝つ」

「……あぁ」



良く分からんが、指示通り威圧をしたら滅茶苦茶ビビッてるんだが……。


しかも、再戦今日やるのか。早いね。別にいいけど。


再戦をしたらあの二色頭凄いビビってるし。しかも、良く分からないうちにトゥルーはカーテンみたいなのを張るし。



うーん、地味だな。でも、大体気とか、剣気とか氣とかって使える主人公多いイメージだからな。


まぁ、威圧は基本って事でいいか。


新しい何かを得るのは普通に嬉しい! ユルル師匠に今度見せてやろー!


新しいおもちゃを買って貰った子供の頃ってこんな風にワクワクしたよね? 懐かしい気持ちになったぜ。



 ついでアーサーにもやるか。もしかしたら、今なら勝てるかもしれない!! ジャイアントパンダに一泡吹かせてやろうじゃないか!



そうと決まれば、ここから去ろう。新しい力を得た弟子の力を見せてやりますよ。



あー、結局トゥルーは俺のパートナーなのか分からんかったな、ただ、ダブル主人公は無いと思うんだよな。トゥルーって俺より活躍してないし。俺が一番だと思うんだよ。



まぁ、それはおいおい分かるとして、ユルル師匠に威圧見せてやろー!

面白ければモチベになりますので★、等宜しくお願い致します

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=417612673&size=300
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ