もふもふとの出会い
家に帰ったら、白いもふもふがいた。
大学の授業はいつもつまらない。
いや、全てがつまらないわけじゃないけど、退屈だった。
思い切って、地元を出て都会の大学に入学したけれど、友達と呼べる友達なんていない。
毎日学校と、家の往復を繰り返し、スーパーやコンビニに行って食べ物や、生活必需品を買っていた。
ただただ、退屈だった。
大学生活もいつの間にか1年過ぎていた。
2年生になっても、生活はあまり変わらなかった。
1年も大学生活を続けていれば、自然に友人ができるかもしれない、何か楽しいことがあるかもしれないと思っていたけど、全くそんなことはなかった。
そんな生活を続けていたある日、大学の講義が終わって、家に帰る途中、珍しくファミレスに寄った。
自分の誕生日だったことを思い出して、少し贅沢をしたい気分になったからだ。
店内に入ると、制服を着た女の店員がやってきて、声をかけてきた、
「いらっしゃいませ、おひとり様ですか?」
どう見てもお一人様なのだが。
普段以上に、誕生日に一人でファミレスに食事をしに来たという事実が、悲しい。
店員に案内された窓際のボックス席の近くには、部活の仲間らしい男女のグループが楽しそうに話していた。
自分も何か部活くらい入るべきだったんだろうか?
最も、大して興味を持てるほどの部活はなかった気がする。
できるだけ、自分と彼らを比べないように、ショートケーキを一つ注文することにした。ここのショートケーキは美味しかった筈、誕生日くらい贅沢をしてもいいだろう、そう思っていたが、無情にも売り切れていた。
「お待たせしました、ケーキセットです」
窓際のボックス席の男女のところに、ショートケーキが並べられるのを見て、自分がみじめに思えてきた。
「すみません、また来ます」
そう言って、店を出た。
おそらく気分的な問題だろう、食欲が湧いてこない。
小さな駅から少し歩いたところにあるアパートに帰って、部屋の電気をつけた。
教科書の入ったバッグを玄関に置いて、そのままベッドに倒れこもうとした、その時。
部屋の中にある異変に気が付いた。
――ベッドの枕の上に何かが乗っている……?
白くて、もふもふした毛玉のような何かが、枕の上に乗っかっていた。
それが白いもふもふとの出会いだった。