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鏡越しの菊

作者:

 特に何の気もなしに家の外をふらついては夕焼けを眺めていた。

 心地よく火照った体に冷たい夕日が染み込んでくる。臓腑にも届くような涼しさだ。

 西に向いて歩を進めながら、色調の移り変わりを見ていく。黄色味を帯びていた橙色は赤みを増し、やがては青紫のようになっていった。

 一生を終えていく人間も日のように、燃え上がった情熱がくすんだ紫色に冷めていくのだろうか。自分の中の「生」は一体何色なんだろうか。冷えた四肢にから黄色い情熱を持っているとは考えられない。良くても熟した赤だろう。

 自嘲気味に口元が歪む。

 そんなふと顔を上げた時、家と家の隙間にある路地に菊の花が目に留まった。薄暗い建物の影で周囲の落ちた色合いの中、菊の花だけは絵の具をべたべたに塗ったような黄色を輝かせていた。

 不思議と引き寄せられた私は路地の中へと進んだ。冷えた四肢に日陰の温度は日向と大差なかった。

 私の見た菊は建物の裏に捨てられた鏡の中に映っていた。肩幅ほどの割れた鏡に映った菊は静かに黄色く塗られていた。自然界にあるはずの無い黄色。

 薬漬けの私のように人工的な菊はそれでも綺麗に咲いていた。

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