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天女  作者: 南清璽
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天女 第90回連載(臥床)

 実事を持たなかった。というより、持てなかったと述べる方が適切であるかもしれない。思い返すと、この二十四時間、ほとんど寝ていなかった。寝たといえるのは、お館様の遺体を燃やしているときに居眠ったときぐらいだ。だから、せっかく令室と臥床を伴にするものの、すぐに寝入ってしまったのだ。

 だが、令室ときたら、そんなことに全く意に介せずむしろ、単に私と添寝ができたことに満喫している様だった。私の弱みを握り、支配下に置けたことが、その根底にあるのだろうが、それはそれとしても、今までの、物資的な心持ちにしかなれない、令室との実事のあり方も変わるにだろうかと考えた。

「朝食は、此処に持って来てくれる。」

 気づけば、令室は、用向きを尋ねに来た執事にそう述べたていた。そうして、私に向かって、「うなされていた。」とも述べた。

「確かに、不気味な夢を見たみたいです。」

「どんな風な?」

 私は、令室のその問いに、単に「よく覚えていないのです。」とのみ答えた。ただ、断片として記憶しているのは、自身と令室に関わる夢であったというぐらいであった。だが、そんな事を告げると、もっと詳しく知りたいとせがまれるので、それは避けるためにも、触れない様にした。

「なるべく早く、役場に行きたいわね。」

 令室はこう述べる。これは、お館様の死亡届のき提出のことだった。これを無事に終え、戸籍に載れば、その死亡が、捜査の端緒となることは無いだろう。

 私は「同感です。」と述べたが、この短い言葉でも、令室なら、私の心のうちを感じ取ってくれるだろうと考えた。

「ところで、あの天女さんと、昨日の夜、何を話したの?」

「御令室からしばらく此処に居てもいいとの、お話があったことを伝えました。それとKに、面倒みてくれそうな殿方の紹介を依頼することです。」

「そうだったのね。」

 令室は、不満だったいえば、どこか語弊があるが、醜聞に関わらない事象には、あからさまにつまらなそうな態度を示すのだった。もちろん、御曹司と天女とのいきさつ、それに御新造様が、絡むという話の展開であれば、関心を示したであろうが。


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