天女 第87回連載
「ところで、天女の今後は、如何されるおつもりですか?」
「そうよね。夫が居なくなった今、此処に居ずらいだろうし。もちろん、行き先が決まるまでは此処に居てもらってもいいと思っているわ。」
私は、令室の、その言葉に対して、「御意」と、一言述べるだけだった。それは、あたかも天女に特別な感情はないと思わせる意味があった。
「何だったら、あなたの友人の、名前なんだったかしら。」
「Kですか?」
「K?」
「名前で呼ぶのが面倒くさくて、単にKと呼んでいます。」
「そうなの。そのKさんに、世話してもらったら?面倒をみてくださる殿方ぐらい、直ぐに見つけてくれるんじゃない。」
「そうでしょうね。」
Kがどんな好色な男を、天女にあてがうのだろうか。だが、そうでなくて、あのご新造様の夫君である、御曹司に囲われることになったら。まさに、破滅だと。そのことが、ご新造様に勘付かれようものなら、そうなるだろう。一方で、必ずしもそうなるとは限らないという安易な想いも持った。全く根拠のない考えだ。だが、危険性が否定できない事実だ。あのとき、ご新造様から見せられた懐剣に想いが及んでいた。だが、其処に潜む劇的な様相に、ある種の艶を感じた。やはり、天女にもご新造様にも、業としかいえない、尋常に境涯を送れないものがあると感じた。
「明日は、何時ごろに役場に行くおつもりで?」
「お昼から行かない?」
「それで構いません。」
「後は、葬儀とあのサナトリウム。婦人科の方は、執事によれば、遊郭の連中が必要にしている様だから、そのままにしたらって。それでいいかしら?」
「それでよろしいかと。」
令室の問いに、何らの想いもなく、そう答えた。
「サナトリウムについては、そのKさんによれば、引受先がある様だけど。」
「診療所として、ですか?」
「そうみたい。」




