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天女  作者: 南清璽
87/112

天女 第87回連載

「ところで、天女の今後は、如何されるおつもりですか?」

「そうよね。夫が居なくなった今、此処に居ずらいだろうし。もちろん、行き先が決まるまでは此処に居てもらってもいいと思っているわ。」

 私は、令室の、その言葉に対して、「御意」と、一言述べるだけだった。それは、あたかも天女に特別な感情はないと思わせる意味があった。

「何だったら、あなたの友人の、名前なんだったかしら。」

「Kですか?」

「K?」

「名前で呼ぶのが面倒くさくて、単にKと呼んでいます。」

「そうなの。そのKさんに、世話してもらったら?面倒をみてくださる殿方ぐらい、直ぐに見つけてくれるんじゃない。」

「そうでしょうね。」

 Kがどんな好色な男を、天女にあてがうのだろうか。だが、そうでなくて、あのご新造様の夫君である、御曹司に囲われることになったら。まさに、破滅だと。そのことが、ご新造様に勘付かれようものなら、そうなるだろう。一方で、必ずしもそうなるとは限らないという安易な想いも持った。全く根拠のない考えだ。だが、危険性が否定できない事実だ。あのとき、ご新造様から見せられた懐剣に想いが及んでいた。だが、其処に潜む劇的な様相に、ある種の艶を感じた。やはり、天女にもご新造様にも、業としかいえない、尋常に境涯を送れないものがあると感じた。

「明日は、何時ごろに役場に行くおつもりで?」

「お昼から行かない?」

「それで構いません。」

「後は、葬儀とあのサナトリウム。婦人科の方は、執事によれば、遊郭の連中が必要にしている様だから、そのままにしたらって。それでいいかしら?」

「それでよろしいかと。」

 令室の問いに、何らの想いもなく、そう答えた。

「サナトリウムについては、そのKさんによれば、引受先がある様だけど。」

「診療所として、ですか?」

「そうみたい。」


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