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天女  作者: 南清璽
83/112

天女 第83回連載

「この殺人犯の私に、ご協力下さるとは。」

 決して観念した訳ではなかった。ただ、お館様の配偶者の協力を得られるほど、好都合なことは、なかった。もっとも、確信を持ちたいので、一つ水を向けてみることにした。

「でも、私は、夫君を殺害した犯罪者ですよ。そんな私に。」

「やめてくださる。よく、ご存知のはずよ。あの人のことを、夫だなんて思っていないことは。」

 的面だった。一方で、自己嫌悪と思しきものを感じた。こんな意地の悪い物言いを、してしまったことに。でも、こうした険のある関係を、令室と続けることには、確かな意義があった。この必然ともいえる、打ち解けない関係を持続するためにも。でも、あこぎな面があるのも承知していた。令室は、煮え切らない私の態度に、意地になっていると思える向きがあったからだ。むしろ、それがある意味、私には好都合だった。

「そう、明日、役場に行って、死亡届を提出するわ。あなたも一緒に来てね。」

 やはり、最大限の協力と見るべきだろうか。このまま、死亡届が受理されたら、官憲は、そこに何らかの犯罪が潜んでいるとは思わないだろう。

「そうしてくだされれば、何よりの助けです。」

 令室は、立話も何だ、という具合に寝台に腰をおろし、私にもそうする様に促した。だが、そうすれば、いつもの様に私にしなだれてくるのだった。こうして、その頬を、私の胸にうずめた。でも、その刹那に感じる愛しさと、何故かそれを受容出来ないとの想いが拮抗する次第となった。

「いつも思っていた。早く死んでくれないかって。」

 これは、令室の偽らざる気持ちであろう。でも、私の殺害でそれが叶った、との所感は、おくびにも、述べられるものではなかった。世間ではよくある、痴情が絡んだ、下世話なものでは、決してなかった。と思いつつ、確かな解析も、行えていない。きっと今回の私の犯行の動機に、話題が移るだろう。この、正義でも、必然でもない、だが、全くの悪でないこの殺人を如何に説明を施そうか。だが、これは、むしろ愉快さをもたらした。


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