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天女  作者: 南清璽
78/112

天女 第78回連載

「そう、さっきのお尋ねになったことね。」

 ご新造様は、私が、「お一人で芝居を」との、問いに答えようとするのだった。それに関して、縷々述べたが、脈絡もない言葉の並びで、少々分かりかねたのも事実で、要約すれば、如何に自身が嫁ぎ先で疎外されているかということだった。ただ、聞き流せない事柄もあった。

「夫には、心に想う人がいるの。私と結婚しておきながら。納得がいかなくて。」

 察するところ、それは天女のことだった。

「お辛いことでしょう。」

 私は、そう述べつつ、その女が天女であることを知っていらっしゃるのか気になった。手管として、かまをかけるのも一考であったが、どうしたものか妙案ともとれる、尋ね方が出来なかった。

「これが役に立つときが到来したのかしら。」

 そうして懐から懐剣房を取り出した。金糸の刺繍だった。蝴蝶と桜だろうか。桃色の地に映えていた。

「嫁いだ際、父が持たせてくれました。」

「早まってはいけませんよ。」

「だって、忌々しいじゃありませんか。」

 その胸の内を打ち明けてもらうべきだろうか。だが、正直その心中を察しあぐねていた。好いた惚れたの婚姻ではなく、親の決めた相手だけに、それ程までに想う必要がある理由などないとも思えた。

「どうして、そこまで思い詰めるのでしょうか。」

「そうよね。所詮は、親が決めた者との結婚。」

 物憂げな表情を浮かべていた。そうして、「先陣を取られるのならまだしも、全く私に触れようとしない。夫には、その女の残像が付き纏っているのよ。きっと。妻としてだけでなく、女として認めてくれない。これほどの屈辱ってありますか。」と、捲し立てるものでもなかったが、それらの言葉の重さは感じずにはおれず、私は、相応しい言葉が浮かばなかった。もし、“そんなに思い悩まない方がいいですよ。”という物言いをすれば、きっと逆効果にしかならなかっただろうし。と思いつつ、未だ、その心持ちを汲み取ることができなかった。だから、当然、何も言いようがなかった。ご婦人方にこれほどまでに男性像が影響するとは。だが、反面、深い淵があるかの様で、神秘的に捉えた。


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