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天女  作者: 南清璽
73/112

天女 第73回連載(隠滅)

 どれほどの時が経ったのだろうか。令室が、この診療所を後にしてから。こうして、私は、この日の自分の行い、あるいは、それに付随した一連の出来事を省みていた。あの日、お館様から、錫杖で打たれ、頭に傷を負った、そのときが、事の全ての始まりだった。あの産婦人科で、縫合をしてもらい、この診療所のことを聞いた。医師が不在となり閉院されようとしていると。そうして、そのまま赴いたところ、あの看護婦に会った。

 丁度其処を出ようとしていた。その彼女からこの診療所の鍵を預かった。それは、代わりにお屋敷に届けるという親切心からのことだった。だが、私は、こともあろうか、その鍵で、中に入った。その折だった。今回の企てを、例えあらましであっても、思い浮かんだのは。

 いや、むしろ、あそこの産婦人科で、お館様と天女の身受けのいきさつにおいて、あの産婦人科医の虚偽の診断書が用いられた事実を知ったのが、この企ての所以だったかもしれない。そうして、変装のための、友人から借りた鬘それにシャツ、含み綿を、ここに持ち込んだ。だが、その日付けが、明確に思い出せない。いや、Kに会い、この殺害に使ったピアノ線をもらったあの日、夕刻、こっそり館を抜け出し、此処へ持ち込んだ。そうだった。

 今から、友人の元へ行き、借りていた鬘を返そう。だが、その前に証拠を隠滅しなければならない。指紋が付着したと思える箇所は、ハンカチで拭き取ろう。だが、シャツは、どうしよう。何の変哲もない、何処にでもあるシャツだ。でも、用心のため、あの焼却炉で燃やすことにした。やはり、令室の目が気になる。そのシャツを着続けたために、その装いから、日常の醸すそれとは違うものを感じ、あの時の医師が着ていたのと同じだと、看破するやもしれない。私は、そうして、館を出た当時のシャツに着替えた。そうだこの鍵。何処かの河に投げ捨てようか。いや、指紋を拭き取り、この診察室の抽斗にしまい込んでおこう。あの看護婦が此処に忘れた、とKは考えるであろうから。


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