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天女  作者: 南清璽
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天女 第71回連載

 死体の一部は、既に白骨になっていた。その筋肉あるいは内臓と思しき処も、全てが炭化し、毛布も納体袋も燃え尽きていた。残りの作業に取り掛かろう。私は、スコップであちらこちらの土を掘り、遺骸に被せていった。根気のいる作業だった。やはり、勘付かれない様にするためにも、かなりの土を被せないといけないものだ。おおよそ、表面的には、不審を抱かれない手合いで、被せられた。

 そう、埋め終わったのだ。あの令室のことだから、事後の承認を求めるだけで十分だ。勝手に土に葬ったなどと糾したりはしないはずだ。

 死体に関わる作業を終え、こうして、診察室に戻る。いつ館の者が、私の書いた死亡診断書を取りに来るか、分からない仕儀ではあったが、私は、少しぐらいの仮眠は許されるものではと考え、こうして、深いとも浅いとも感じる眠りに入った。幾度か覚醒し、その度に、玄関先に人の気配、物音がしていないかを確かめた。

 それを幾度か繰り返した訳だが、ついに令室の声を、ここの玄関の扉をたたく音とともに聴く羽目になった。

「お待ちくださらんかね。すぐに参ります。」

 そう玄関先に向かって答えた。そうして、身なりを整える。伊達メガネ、鬘、含み綿と、それらを身に付けていく。これは、いつ落ちてもおかしくない、そんな綱渡りと同じ状態なのだろうか。令室には、僅かな細部に気付く才があった。常人なら見過ごしてしまう様な些末なものでも。こんな想いがよぎった。だけど、いつまでも玄関先に待たせるのは、申し訳ない。変装を終え、玄関の扉の施錠を開けた。

「さあ、どうぞこちらへ。」

「車の中で待ってくださる?」

 令室は、例の運転手にそう言った。そうして、私に導かれ、診察室へと入った。

「ご内室でいらっしゃいますか。」

「はい。」

 私は、ここでは、一気にことの梗概を説明しようと思った。そうすれば、何の疑念も浮かばないだろうと。やっかいなのは、令室から口を挟まれることだった。


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