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天女  作者: 南清璽
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天女 第70回連載(死亡診断書)

 診察室に戻る。そうして、死亡診断書診を作成した。「昭和✖️✖️年✖️✖️月✖️✖️日✖︎✖︎時✖︎✖︎分」。死亡日時をそう記入した。ここまではよかった。だが、これより後をどう書くか。そういえば「劇症」という言葉があった。この言葉なら、要領を得た説明になるはずだ。

「所見にて細菌性による劇症を認む。これによる多数の内臓組織壊死の為死亡。」

 直接の死因をこうした。通常、この書きぶりでは、偽の診断書であることぐらい、容易に看破されるかもしれない。もっともこんな田舎町に、警察が、お館様の死に不審を懐き、内偵を施すことは、確率的に少ないだろうし、役場の人間とて、私の見る限り、事務に精通した者がいる様にはなかったから、この様な診断書でも素通りし、戸籍に死亡を記すことは十分に期待できた。

 私は、診察室の机の抽斗に入れていた、この診療所の記名印と印鑑を取り出した。そうして、玉筆で書いた一枚目とカーボンで写された二枚目のそれぞれに記名印と印鑑を押した。それから、使用したカーボンを抜き取った。此処で徐に封筒を取り出し、その診断書を封入、封緘した。こと慎重になさんが為だったが、必要もなく厳粛に行うべきだという気持ちが働いていた。そうして、カーボンで写された控えの方をミシン目から切り取った。思えば、この控えは診療録に綴るものではなく、いわば、証拠隠滅するものだった。だから、この記名押印は不要であったと顧みた。だったら、焼燬しているお館様の遺骸の火の中へ焚べよう。

 だが、死体を燃やしている処へ行くと、既に燃え尽きようとしていた。点火した直後と違い、炎は煌々と燃え上がっていなかった。この間を長く感じていたのだろうか。相当な時間は、経過していたが。もちろん、この診断書を此処の焼却炉に焚べて、何か一緒に燃やすことはできるのだろうが、やはり、この目で灰となってしまうまで確認したかったのだ。私は、ポケットにあったマッチを取り出し、この診断書の控えに火を点けた。

 だが、焚べようとしたが、風に煽られた。燃えたまま、宙に舞ったかと思うと、すぐに灰となって、散り散りになってしまった。これはこれで都合のいいものだった。こういった光景は、昔、どんど焼きの折にあった。書初めの習字を焚べたときだ。子どもなりに、苦労して、書いたものが、瞬く間に燃え尽きる。私は、子どもながらに、そういう感慨に浸ったのだった。


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