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天女  作者: 南清璽
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天女 第61回連載

「しかし、前向きに生きることも、ときとして必要だと思います。その気持ちは分からないではないですが。そのお顔、お姿を受け入れるべきではないでしょうか。」

 これは思慮してのものではなかった。いわば、お館様の反感を買おうとしていた。そんな私の物言いに対し、お館様は嫌悪感を表情に浮ばせ、「お前に云われる筋合いはない。」と述べるのだった。

「果たしてそれでいいのでしょうか。鬱屈としたものを溜め込み、その葛藤が解消されないがため、あの女性に歪な形で、情を交わす。如何に傾城風情であったとしても、人間の尊厳を踏み躙るものに過ぎませんよ。学のある人間の言うことを聞くべきではないでしょうか。」

 私はこんな具合に意見をしてみた。思えばお館様との関係も今宵限りであるし、それに作為的にあるにせよ、お館様に悪態をついた方が、今からしようとすることへの意気をあげるものでもあったのだ。それに、お館様に叱責され怒りをかった方が私には都合がいいとも思えた。

「不思議だ。お前にこんなことをいわれたらすぐにでもあの錫杖で殴りつけているのに今日はそうならない。」

「それはまたどうしてですか。」

 正直、戸惑いを覚えた。このお館様の言葉に対し、如何に態様すべきかとの想いもあったが、そこの真意を尋ねたとしても、私が企てが実行されたら、その意義が失われるのは承知できていた。

「皆んなが俺に従うのは、俺に財があることや、乱暴狼藉を働くからだ。だが、お前は違っていた。少々のことでは動じない。お前は実に不気味なやつだった。今日も嫌なところをついてきた。そうさ俺には学がない。分かるか、この心持ちを。」

 私は、お館様のそんな物言いに作為を覚えてしまった。それは人から同情を持ってもらおうというものにしか思えず、いつもの様に蔑む次第となってしまった。やはりここでも距離を取ってしまった。


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