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天女  作者: 南清璽
55/112

天女 第55回連載

「どうしたの。」

 一向に何も話さない私に対して、天女は些か訝しさを覚えたのかもしれない。

「つい思いを巡らしてしまって。」

 私は感慨を滲ませてしおらしく振舞った。もちろん、それは単なる装いに過ぎない。これも適当にあしらうことがためらわれた為で、やはり天女を無下にできない、そういった想いも醸成される間柄になっていたのだと感じた。つまりは、いわば連帯感といえるものがそこにあったのではないか、そういう思いがして来たのだった。それは天女のもつ翳り、或いは屈折から来ていたのだろうと思いつつ、私のそれとどことなく同様と思える間柄にあるのではと考えた。だが、そう云いつつも、まだ、自身の情にまつわる事を述べるにつき、わだかまりを覚える次第だった。

「正直、御令室の私への対応が、まったくの手管であると思えないんだ。」

「それは何?」

 あどけない目だった。こんな物言いに、天女は微笑みながらそう述べるのだった。だが、不思議なもので、こういう好奇な目でみられるからこそ、その期待を大きく裏切りたいとの衝動にも駆られるのだった。もっとも、単に艶やかな趣きを控えようとするていにするぐらいだった。

「全く令室の媚態には悩まされています。」

 ただ、媚態という言葉を使ったからには、その具象性に言及を施さなければならないのが筋であろう。私はそういった物言いをしたことに若干、顧みる点もあったが、言葉の行き詰まりが目に見えるようで、でも一方で、装いにしかならない修辞を選ぼうともしていた。やはり、天女の期待を裏切ってみたいという想いがあったからだ。

 これといった様子を示すことなく、天女は、水面に写る自身の姿に見入っていた。ただ、彼女の心向きには関心を持った。然程のものでもないのかもしれない。その興味が、そう、私と令室との情のあり様について。

「やはり、やめておきましょう。この手の話は。」

「少し気になる処も。」

 私の述べように、天女はこう応えた。




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