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天女  作者: 南清璽
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天女 第49回連載

 ここは一つ天女を慮ったことにしよう、私はそのことを以って今回の謀の動機とするのが一番理にかなっていると考えた。一つには私の眼前でお館様が天女との情事に及ぶということだった。だがそれを人間の尊厳にかかるものだ、いや天女の尊厳にかかるものだと言うべきだろうか。物事として、単に尊厳を侵すということでとらえることはできなかった。 なぜならそれが、精神性のない物質的な現象としての絵姿でしか私には捉えられなかったからだ。むしろ頽廃に類すると言うべきだろうか。こんな風に頽廃を、いかがわしきことだという風に、排除することができなかったのである。それはすなわち抗えず、すべてあるがままに捉えようとする私の信条でもあったからだ。それに、お館様に対して、汲むべき処があったのも確かだった。やはり、子どもの時分に患った疱瘡の為、学校に行かず、家庭教師に教わったことで、集団における葛藤やそれに向かい合うことがなく、そのため、精神を深化できなかった面は否定できなかった。たとえそうであっても、あの性への執着には、訝しさばかりしか感じなかった。

 これで充分だろうか。スコップで掘った。穴の深さを目分量で測ってみた。お館様の身体を埋めるにはこれで充分だろうか。これはもちろんあてずっぽというものであり、生来、目分量で測るということが苦手だった。だからむしろ、必要以上に深く掘っておくのが良いのかもしれない。

 風が吹く。それが木立にふれるのだが、だがそれは、表象でなくむしろ私の意想によって描かれた景色に過ぎないと思えていた。私が今から犯そうとしていることも、こんな具合に、実在しないものであればと思ったりもした。その実在を持たないということは、願望でもあり、あるいは、実体のない観念の世界であればというものだった。

 だが、確信めいたものを見出せないでいた。それを以って私に幾分かは道徳的な気持ちが存する、あるいは一つの良心と見るべきものがあるかどうか迷っていた。やはり否定できない。お館様に対し幾分かの同情があるということは。そうして空想する。私はお館様に対しこれから及ぼそうとすることが意味づけのない表象になるのではないかという、そんな具合なものを。



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