天女 第44回連載
「やはり精神病の患者を診ているということが何か相関しているのだろうか?」
あの精神科医が心を病んだ所以をKに訊ねてみた。だが、それは一つの手管であった。会話を精神科医の方に向けて、Kがサナトリウムの処分にまつわり、あそこに来る日をいつかを計らんがだめである。
「全く相関しないと言いきれないのと思っている。実際のところは不明だろうが。それに…。」
そうKの顔ばかりを見てはいられないという思いから胸元を見た。何分、Kが私の視線の先を気にしているように思えたからだ。
「診療所を開設したときから何か精神に異常来しているという兆候は窺えたよ。」
Kはそのことを付け加えた。
「何かの用事であのサナトリウムには来るつもりかね。」
「それを聞いてどうするつもりだ。」
やはりKは不信感を抱いているのであろうか。
「別段のものではない。せっかくだし、お館様のところで会おうじゃないか。」
「それも一興であるな。日にちが分かれば何らかの方法で知らせるよ。ここ当分は、行けないはずだ。ところでその頭の傷はまた何かお館様から理不尽なことでもされたのか。」
「人前での情事を強要されたんだ。それを拒んだらこのざまだ。」
Kは薄っすらと笑う。そしてさも興味ありげのように、
「あの女郎屋にいた女とか。」
と、訊いた。やはり察しのいい男だ。Kには、洞察力とでも言ってもいい物事を見通せるもの持っていた。だがそれには感心ばかりしていられなかった。私は、依然、最後まで警戒を怠らなかった。
「そう天女と。」
「天女?」
「私が、彼女をそう呼んでいるだけだ。」
「なかなかうまい名づけた。」
内心ではさほどでもないと思っていながら、妙に感心した様に、Kは装っていた。
「たとえ殴られようと人としての誇りを失いたくないからね。」




