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天女  作者: 南清璽
33/112

天女 第33回連載(診療所)


 看護婦は、丁度、張り紙を貼ろうとしていた。しばらく休診するという内容だった。

「おはようございます。」

 私を認めたその看護婦は、訝しげに、全くの儀礼に過ぎないとの程で挨拶をした。

「おはようございます。あそこの産婦人科では、廃業にすると伺いましたが。」

「そうなるはずだったんですが、ここを引継ぐ医師を見つけてくれるという方がいまして。」

 それが、すぐに K だと分かった。だが、この段になってもその男をその名で呼べないのが、頓狂に思われた。

「カシ何とかという男ではなかったでしょうか。」

「その様なお名前でした。ところで、そちら様は?」

 ますます訝しい、この看護婦はそんな向きになっていた。

「私ですか。この上の屋敷の使用人です。」

看護婦は、一応の合点がいったと風な様子だった。そうして、

「今からそちらのお屋敷に立ち寄って、ここの鍵一式をお渡しするところです。」

「丁度いいではないですか。私がお預かりして執事に渡しておきましょう。」

「そうしていただけるのならお願い申し上げます。」

 私は、この幾つかある鍵の重みを感じた。やはり、この人里離れた寂しい場所で営んでいるというのに、厳重すぎる鍵の数だった。

「こちらのお医者さんですが、出奔したと伺いました。あの産婦人科医からですが。心を病んでいらしたとか。」

 何でも情動が不安定となり、置き手紙一つ残し、そうしたのだと。その手紙に残した文面も意味不明なものであったことも聴いたと。

 この一連のことに対し、一応ともいえる、ねぎらいの言葉を述べた。もちろん、それは初めて会った人へのそれ相応のという具合で、世間体を取り繕うのに過ぎないものでもあった。一方で、意識下にあるものを悟られまいとしつつ、当為ともいえる、仰々しい物言いをするのをためらいもしていた。そうありつつも、僅かな関心を示すことも怠らなかった。それというのも、K の算段では、いつ頃の再開を見込んでいるかを知りたかったからだ。もっともその看護婦によれば、目途がたたないとのことだった。

 やはり、K に直接確かめる他はないようだ。





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