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天女  作者: 南清璽
25/112

天女 第25回連載

「初めてではなかったわ。」

 それにしても察しがいい。私の問いかけが、人前で晒される情事のことだと察せられているのだから。

「でも、辛いなんて、とても」

 今度は、私が天女の気持ちを察し、慮る番となった。ただ、彼女に気になっていたことは尋ねた。

「ある意味誇りからですか。」

天女は、怪訝そうにした。

「交わっている最中にあれほど沈着でいられるので。」

「所詮はつまらない意地。それにお館様が憔悴する様子が見るのも楽しいし。」

 こういった会話が持たれたのなら普通、天女に何か小悪魔である感を懐くのだが、そうともならないことに合点がいった。やはり、それはお館様の人間性によるのではと思えてきた。そうどこか空回りをしている面があった。下男、下女にはああもいばりちらかしながら、そこには常に頓狂な面があった。だからといってあの異様さを頓狂という範疇に収めていいのか分からなかった。一つには、天女への執着だ。その情の交わし方について、私は相当異常に思えたのだ。

「女学校でも卒業されているのですか?」

「ええ。でもどうしてそれを」

「あなたの言葉の端々に何とも言えない知性を感じたからです。」

「そうよ。」

 だが、天女は、私が次に発する問いを察していた。

「女学校には通った。でも、父の事業が、傾いてしまって。」

「お父上の?」

「父は小さいながら建設会社を営んでいたわ。欧州で大戦が起こって随分景気はよかったんですが。」

 そうして、彼女は沈黙を保った。私は、この沈黙に未成熟とはいえない、しかし、完遂されない天女との関係に想いが至った。変芸自在になれる、そんな向きにあるともいえる。いや、むしろ、令室との関係はまさにそうだった。あしらう訳でもなく、だけど受容しない間柄という。避けられない程の。令室の情を求める態度にはそういった面があった。一方、お館様のあの貪る様な求め方。資質において、二人のそれには、同様なものがあると思えた。

 ただ、天女とは、情を交わさないという点で趣きが違っていたのは、事実だ。確かに彼女へのある感情が芽生えていた。でも、それはむしろ、憐れみというより敬いに近い概念だった。というか、そう捉えるのが無難だった。私はここでも、この天女と呼んでいる女性とも間隔を置く次第となった。


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