表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天女  作者: 南清璽
22/112

天女 第22回連載

「病気で話せないのかと。」

「狂言よ。」

 天女は、そう告げた。でも、それが狂言であったとは正直、思いたくなかった。何分、話さない事自体、彼女への同情の誘いであったからだ。むしろ、憐れみが失せないか気がかりだった。何分、そこに彼女に惹かれる一面があったからだ。

 他方、その答え方は相変わらず素っ気ないままだった。あくまでも同情を拒もうということなんだろうが。一方、,そうと察してしまうと、今度は、そこまでこの私と距離を取ろうとするその所以如何にという次第となった。もちろん、私に対し、おもんばかった気持ちからそうなったのであるものの、単に愚直だとも思え、その無粋さが、彼女一流の、でも、手管とは言い切れないほどで、かえって感傷を覚えさせた。もちろん、意地らしいのだが、そうともいえない大人らしい感じがした。そう、女という面を見せないという。

 私は、サイドテーブルにあった水差しからコップへと水を移し替えていた。何か行き詰まるとこの様な意味のない所作をとった。天女は私と同じく食客には違いないが、半ば執事として労働を課せられる我が身とは違っていた。だから、こんな具合に、お館様の身の回りだけでなく、この女性に対しても時折世話を施していた。

 もっともそういった折に、私は令室に見せるあの屈折した感情を顕にすることはなく、むしろ、天女には私なりの柔和な表情を向けていた。もちろん、それは愛想といわれる向きのものであって、一つの社交であり、見返り求めない、純粋な意味で奉仕ともいうべき性質の事柄だった。特段の由もなく、お館様と情を交わす間柄だけという事情を慮ってのことで、それ故の、忠誠心ともつかない、何か課せられたものだという意識と、いわば憧憬ともとれる感情で、自然に発露したという感じもしていた。

「どうして打ち明けようと?」

「人が良さそうなので。」

 ただ、その言には、辟易とした。私には、令嬢との、あの出奔の一件と同じ様に思え、好意的に捉えようにもそうできなかった。令嬢が、自分に頼ろうとした所以を述べたときと同じ言葉だったからだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ