表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天女  作者: 南清璽
20/112

天女 第20回連載

 出血していた。傷口を手で押さえたとき、その手に血が付いていた。お館様は不意に錫杖を持ち出し、私の頭頂部にそれを見舞ったのだ。しばらくは、その場にうずくまったが、幸い疼く様な痛みはなかった。それから察すると骨には異常ない様だ。だが、出血は止まらず、額に血が幾分か流れているのが分かった。

 だが、このままうずくまるのがいいのか,それとも立ち上がった方がいいのか。お館様のその手にはまだ錫杖があった。更なる一撃があるかもしれない。ならば立ちあがろう。その方が振り下ろされる錫杖に対して、身を躱すこともできようというものだ。一方で、どういった表情を繕いお館様に対峙すべきかを考えた。薄笑いでも浮かべてみるか。幾分とも不気味さを醸せば、お館様はそれに慄き気持ちを落ち着かせるかもしれない。いや、それとも凄みを出すか。眼光鋭く睨んでみせるという具合に。この手の御仁は、存外にこんなことでも恐怖を覚えるたちかもしれない。

 私はお館様に対峙した。そうして鋭い眼差しで御仁を見つめた。

「どうです。お気は済みましたか。」

 お館様は、何も語らず、その場に錫杖を投げ出し部屋を出た。どうやら狼狽の色は隠せなかったようだ。ろくすっぽ私の顔を見ようともせずに。もちろん、お館様の言葉など無用なものだった。正直、何も言わないでこの場を去ってもらったのは幸いだった。もしかしたら、ものの言いようによっては、お館様が自身の言葉の連想から、あらたな謂れのない怒りを私へぶつけるかもしれなかったからだ。

 大概は、私の蔑む態度に発していた。お館様は、それを察しその怒りを向けた。時として狼藉を行う。これは、お館様への一種の復讐でもあった。未来永劫に続く、一連のものとして。そう、蔑まれ、それに対し、怒り、狼藉を働かすという。それから抜け出せない自身に苦しんでいるのに気づいているに違いない。そう思わない限り、私の気がすまない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ