天女 第2回連載
いつもの様に令室と情を交わすのだった。一方で令室は私にとってマテリアルに過ぎず、いわば、露な媚態そのものだった。だが、正直、そこまでする真意を測りあぐねていた。どうして媚態をあそこまで私に示そうとするのか。ただ、作為ではない面も感じられた。それは、不思議なあどけなさだった。年増といえば、それまでだが、色香はあった。仄かながらも。その中に潜む無垢な面。それとは不釣り合いともいえる豊満な胸だった。横臥し、ただ、誘う限りにある、そういうしかない。
言葉なんか不用だった。だが、互いが互いを激しく求め合うというものではなかった。マテリアル。そう、所詮は。
そうであるのにもかかわらず、しかも、私が、令室にあそこまでの隔たりを醸しているというのに。だが,そういった屈辱ともいえるものを,令室は今や、受容する向きになっている様だった。まさか?そのいじらしさにほだされている向きになっている訳でもないだろうに。と思いつつ、あの媚態に決して魅せられたりしないなど言い切れるものでもなかった。そこに、自制する何かがあった。だが、沈着にも見据えれば、単なる片意地に過ぎなかった。だから不感症になる様に努める。
僅かに見せるしおらしさ。それが、令室一流の手練であろうがなかろうが。だが、根本に矛盾を感じていた。一応は、住み込みのピアノの家庭教師でありながら、実態は情夫であり、そうでなければならないという必然性がないにもかかわらず、それに甘んじているという。いわば、抗えるのに抗おうとしないという。