天女 第19回連載
一連のというべき施し。それを終えると、お館様は、天女、いやそう私が呼んでいる女性と重ねていた軀を起こした。こうして、頭巾からのぞかしたその目で、私にこのことへの所感を述べる様に促した。
だが、言葉の選びようが難しく、その上、人前で情事を行うことにうべなうものなど何もないという思いもあり、沈黙保つことになった。もちろん、はしたなさは感じていた。しかも、天女が、そういったことが晒されることへの憐れみを忍ばせることができなかった。
「どうした?いつものインテリゲンチャ気取りか。」
「申し訳ありません。」
お館様の問いに対しては、こんな風にはぐらかすしかなかった。だが、どちらかというと、こういうはぐらかし方は、嫌う質だったので、その不快さを露わにした。そうした折り、私に何か御厨から間食でも持って来る様に命じてはくれまいかと、その貌から目を逸らしつ願うのだった。
そんな中、天女は冷めた表情を保ち続けていた。と共に気がかりだったのは、天女が、どこまでもお館様に媚びないことだった。それは、お館様が腹いせに、彼女に乱暴な狼藉を施さないかという懸念を懐かせた。されど、そうとはいえ、一向に天女に意見しようとは思わなかった。仰々しい物言いをするのであれば、尊厳さを感じていたからだと。もちろん、もし、ここでお館様に単に媚びる様に云うのは、ただの太鼓持ちの所業に過ぎない。
「何も言わんつもりか。」
「申し訳ありません。」
この類のお尋ねには応えないつもりだった。きっと私のこういった態度に対し、心底において蔑んでいると気づいているであろうから、一旦、発作が起これば暴行に及ぶこともあった。だから内心は怯えていた。頭巾から見えるお館様の薄笑い。何か思いついたのだろうか。




