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天女  作者: 南清璽
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天女 第18回連載

 私は、食客の身でありながら、このお館様とお呼びしている御仁に敬いの気持ちが持てなかった。ただ、時おりしおらしく思えることもあった。それは、その二つの目で醸された。お館様は目計頭巾をしていた。何でも子どもの時分、疱瘡によって痘痕顔になってしまい、それを覆い隠すために頭巾被っているのだそうだ。

 もちろん、頭巾から窺えるのはその眼だけだったが、思いの外、虚ろでなく、表情が豊かであったというべきだった。あどけなさとも取れたりもした。

 一方で、稚拙さとも取れた。それは精神を深化できなかったからではないかと推察した。ご自身に確かめた訳でもないが、幼少のみぎりの疱瘡から学校へは行かず、やむなく家庭教師を雇っていたと聞いたことがあった。もちろん、通常の学校生活である他者との交わりが無かったため、葛藤が生じなくなったのが、精神を深化できなかった理由であることは十分に窺えた。

 だが、私がこんな具合にお館様を蔑む次第になったのは、何もこの事象だけではなかった。時おり、然程でもない事を「凄いな」言ってくるのだった。もっとも、それについて波長を合わせて、共感を表情に出すのが苦手であるばかりに、つい気のない返事になってしまった。

 私は、そんな自身を意識し、悟られまいとし、つい慇懃な振舞いを取りがちになってしまった。一方でそこに作為がある事に気づいていた。一つの蔑みとして。だが、そうであるにもかかわらず、お館様は単調にそれを悦ぶのだった。そうして、例のごとく私が感心を持てそうもない、昨夜のあの女性、すなわち、「天女」と呼ばれている女性との営みについて語り出すのだったが、そういうときに限って、気のない返事をすると、解らせようとして話が長くなるので、大袈裟な身振りで首肯を示した。それは、事の次第を思わぬ方向へと導き、私の眼前で情を交わしてみせると言いだしたのだった。


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