表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天女  作者: 南清璽
13/112

天女 第13回連載

 だったら…。想定される結末がそうであれば…。やはり、令嬢の出奔を手引きするのを見合わせるべきなはず。しかし、そうはできなかった。だが、それは俗にいう、何かに取り憑かれた様な次第ではなかった。むしろ、ある意味、啓示を得ていた。つまりは、これは当為に違いないという具合に。ふと、令嬢の均整のとれたて麗しさに、いわば、美意識として、それが妙に安定性に欠ける面が必要であると思えてならなかった。付言すれば、身をやつし、破滅に向かうことが、求められているかの如くだった。

 もしかしたら、たとえそうなったとしても一つのメタファーの域に収まるのではないか。すなわち、令嬢が何某かの翳りを帯びるのは。むしろ、その翳りによって本来の、美しさを覚醒できるためのものではと想う次第ともなった。だが、一方で、顧みて、自身の歪んだ面も、そういった思考からより感じる次第となっていた。

 述べようものなら、明確な美意識だったと臆面もなくそうできたであろう。でも、否定できない一面もあった。そう、羨みからという。その身分の隔たりが、思慕と意識されない深層にある自我を造っていた。私は、意識して自己の殻に閉じこもり、令嬢への思慕を心底に押し留めようとした。それが最善だった。

 ふと、令嬢の心持ちが気になった。令嬢は、行方をくらました結果、伯爵家の者が驚き慌てふためくのを愉快に感じるのであろうか。ただ、その様な愉快さを感じると思量するのは、自身が俗なる人間に過ぎないからだとも思えた。むしろ、激しく後悔し、罪悪感に苛まれる次第になる方が成り行きとしては、正しい様にも思えた。

 Kは、承諾してくれた。例の八ヶ岳の別荘を使用させてくれる件だ。もっとも、そうなるものと考えつつ、いささか確信を持てなかったのも事実だった。むしろ、断ってくれないかという想いも存していたぐらいだ。やはり、心底においては、不安が残置されていたのは否めない。

 ただ、そうでありながら、反面、実行するにあたり、主知的というべきあり様で、どういった次第で、執り行うべきかを思案していた。そうして、自分が、相当、あこぎな人間だと思へるぐらいになった。確かにこの出奔において試みようとしていることは、大胆そのものだ。それにも増して、私の企てに人々が、翻弄され、あたふたすれば、これほどない愉快さを覚えるだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ