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天女  作者: 南清璽
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天女 第11回連載

 令嬢の出奔を手引きするとなると、Kなら、何らかの知恵を授かることもできようものと考えた。そう、先にも述べたKだ。

 もっともこのKに、ある意味、距離を保ってきたのも事実だ。何分、謎が多い。そもそもは、父が開設していた診療所のいろんな事柄から縁ができた。その父の診療所とは、何ともちっぽけなものだったが、結構、丁寧な診療を施すと評判だったから、結構な収入を得ていたものと思われた。そんな父に、山気などなかったが、人がいいからか友人のために融通手形を振出したことがあった。それが流通した折、Kにその手形の取戻しをを頼んだことが、それがそもそもの縁だった。父の話によると、然程までの報酬は求められなかったそうである。その後、診療所を私が継がなかったため閉鎖する次第となった際も、Kは、その診療所を丸ごと譲り受ける医師を見つけてくれた。

 事実、ぶっきらぼうな男だったが、程よく付き合える具合だった。事情で、借りた部屋を退居しなければならなくなったとき、なかなかピアノを持っていける棲家が見つからなかった。そんな訳を話したら、Kは、自分の家に置かせてやってもいいと述べた。もっとも、其処は、彼が住むわけでなく、どうやら、かこっている女性とその間にできた娘に住まわせている。娘に、丁度、ピアノを習わせるつもりだったから、自由に私のピアノを使用させてくれるのなら、という条件だった。当初は、私が、教師として赴く予定だったが、当の彼から、伯爵家の令嬢のピアノ教師を依頼され、かなわなかった。だが、そこだけでなく、数軒の不動産を所持していた。一度、伯爵に、なにゆえ、Kが、相当な資産家となりえた所以を尋ねたことがあった。だが、伯爵も、それについては、何も承知していないとのことだった。ただ、資金をどうやって捻出したか、謎でもあるが、一方で、興味深いことだ、と述べていた。確かに、Kは、どこそこの御曹司だと聴いたこともないし、何かの事業での成金だとの噂もなかった。他方、何か犯罪に手を染めてはないかとか、闇な世界に繋がっているのだとか、ヤクザな連中と付き合いがあるのだとか、云われているのも事実だった。

 ただ、不思議と仁義という面では信頼がおけた。堅気の者をそういった闇の社会には決して引きずらないそんな信頼がおける人間だった。


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