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天女  作者: 南清璽
103/112

天女 第103回連載

 入浴も共にする。実事を持ったその日の朝、令室と入浴するのが常だった。互いにバスタオルで拭きあい、裸体のまま抱き合う。だが、これは一つの惰性に過ぎず、新鮮味が失われようとも繰り返していくことだろう。そうして、私は「綺麗だ」と、その一言を令室に述べるのだった。そうするのも、「もっと綺麗だったころの私を見て欲しかった」と、よく言っていたからだ。そんな翳りを見るにつけ、このままにして置けないという感情を呼び起こさせられた。それは、愛おしさとも捉えられたが、一方で、令室との隔たりを残しておくべきか、という複雑な心境ももたらすのだった。

「今や私は殺人を犯した身です。」

 と、令室の肌に触れながら、想いを口にした。

「だめよ。誰かに聞かれるかもしれない。」

たしなめるその折には、深刻な装いを示すものの、すぐにあどけない笑みを見せる。こんな具合に、二人には、危うさと未成熟な面が隣り合わせにあるものだと悟らせられる。でありながら、ややもすれば、こんな深刻さに乏しい一面は、頓狂であるが、一応の居心地の良さも覚えるものだから、どことなく聖域にいるかの様な錯覚ももたらすのだった。

 背を向けた令室を、その背から抱きしめていた。

「あなたから、抱きしめてくれることもあるのね。」

 そうして、令室のその言葉に自身を顧みせられる。その所以は、いささか小心であったからだ、と思いつつ、令室の言葉にある、ご婦人としての深淵さも感じ入る次第になっていた。令室は、その背に私を感じさせて、何も語らずにいた。だが、そうもしていられないという程で、私の腕を解き、下着を身に付けだした。

「今日ぐらいは、ピアノのお稽古をしませんか。」

「お稽古?一体何になるのかしら。婦人の嗜みとして。」

「私が、この館に留まるためにも。」

「単に、情夫というだけでは体裁が悪くて。」

「そうですよ。」

「書生でもいいじゃない。」

 そう令室に言われた。だが、この後、暫くして、Kから、体裁としては、都合のいい話が舞い込んできた。


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