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ショートショート3月~

駆逐

作者: たかさば

・・・いわゆる、生命体を構築してみたのです。

ええ、※⊿〇タイプの、分裂型です。


活動するエネルギーを得るために、労働させる…そうですそうです、サイクル形式にしてみたのです。


エネルギーを得て、働く。

エネルギーを得るべく、働く。

延々それを繰り返すというやつですな。


エネルギーとなるものを、自らの労働で得るのです。


わたくしが用意したのは、エネルギーを生み出すスペース、生命体、エネルギーの元であります。


スペースにエネルギーの元を埋め込むと、エネルギーは増量するのです。

ええ、埋め込まねば、増えることは、ない。

埋めたものを、掘り起こさねば、エネルギーとして摂取できない。


エネルギーの元は、自然発生させておりますので、ええ。

エネルギーの元は、スペースに埋め込まねばエネルギーにはならない、つまり、必ず労働する必要がある。


生命体はある程度エネルギーを溜め込んだら、分裂するよう構築しておきました。

生命体はある程度エネルギーを摂取したら、活動を終了するよう構築しておきました。

生命体はある程度エネルギーを摂取できなければ、活動を終了してしまうよう構築しておきました。


順調に、生命体は数を増やしましてね。


…些か、平穏な増殖に、業を煮やしたというべきか。

ああ、失礼、わたくし※⊿〇愛好者でして。

通常の観察者には理解しがたい…わからない単語でしたね。


つまり…問題を発生させてみたくなったのです。

問題を起こし、それを解決する様が、見たくなったのであります。


生命体に、回路を与えてみました。


疑問を持てるようになりましてね。

計画できるようになりましてね。

希望することができるようになりましてね。


つまり、個体による、個体差というものができたのであります。


これから、何が起きていくのか…わたくし、大変に、楽しみにして、おりました。

労働と、エネルギーと、生命体の関係が崩れていく様を、思う存分、観察しようと、意気込んでおったのです。


生命体の個体差は、とても観察しがいのある物でありました。


エネルギー摂取に積極的な個体。

エネルギー摂取に消極的な個体。


労働する個体。

労働する個体をまとめる個体。


生命体の分裂を管理する個体。

生命体の終了を管理する個体。


集団化する、個体。

集団化しない、個体。


集団化した個体は、よりエネルギーの生産に力を入れるようになりましてね。

どんどん数を増やしていったのです。


…数が増えたのは良かったのですが。


なんといいますか、不満が私の中に生まれてしまったのですよ、ふいに、ですね。


エネルギーを埋め込む作業をしない個体が、エネルギーを消費するという状況。

エネルギーを掘り出す作業をしない個体が、エネルギーを消費している状況。

エネルギーを埋め込む作業をする個体が、エネルギー消費を制限されてしまうという状況。

エネルギーを掘り出す作業をする個体が、エネルギー消費できずに搾取されている状況。


数は増えました、しかし…労働する個体の数は、減っていく一方だったのです。


…お静かに願います!!!


確かに、回路を与えなければ済んでいた問題です。

ええ、もっともなご意見だと思います。


ただ…起きてしまったのであれば、観察を続けるほかないのです。


仕方なしに、観察をしておりますとね、おかしな方向に、進んでしまいましてね。


集団化しなかった個体のところに、集団化した個体が乗り込むようになったのです。


同じ生命体として生まれたからには、活動を共にすべきであるというのです。

同じ生命体として生まれたからには、共にエネルギーを共有すべきであるというのです。


集団化しなかった個体が労働して得たエネルギーを、労働していないものが搾取するようになりましてね。

ええ、分裂するために貯め込んでいたものを、奪っていくのです。

ええ、分裂したら分け合うつもりであったエネルギーを、奪っていくのです。


生命体として発生した義務だと言って、一定数のエネルギーを奪っていったのですよ。


わたくしは、観察者ではありましたが…冷静さを、失ってしまっていたのですね。


エネルギーを奪われていく、集団化しなかった個体たちに…情けをかけてしまったのであります。

エネルギーを奪われていく、集団化して労働する個体たちに…憐みの念を抱いてしまったのであります。


わたくし、生命体が活動するために必要なエネルギーが、実に膨大に集められている事に、疑問を持ちましてね。


なぜ、必要な分を必要なだけ労働し得ることをしなくなってしまったのか?

なぜ、労働しないでエネルギーを得ることができる個体が溢れてしまったのか?


労働しない個体がいるから、必要以上に労働しなければいけなくなったのです。

労働しない個体の分まで、エネルギーを得なければいけなくなったのです。

労働しない個体がいるから、エネルギーを溜め込まなければいけなくなったのです。

労働しない個体の分まで、エネルギーを埋め込んで掘り出す個体が溢れるようになってしまったのです。


労働しない個体が、憎くなりましてね、ええ。


排除すれば、気が晴れると思ってしまったのです。

ええ、これが、わたくしの、失策だったのであります。


分かっております、ですからこうして贖罪の念も込めて発表しているのです!

静粛に願います!!!


そもそもおかしいとは思いませんか!

労働する個体よりも、労働しない個体の方が多いのですよ?!


得たエネルギーを集める個体!

得たエネルギーを数える個体!

得たエネルギーを蓄える個体!

蓄えたエネルギーを数える個体!

蓄えたエネルギーを分ける個体!

蓄えたエネルギーを配る個体!

配られたエネルギーについて説明をする個体!

配られたエネルギーを溜め込む個体!

配られたエネルギーだけでは足りない個体!


エネルギー備蓄システムを、除外したわたくしは・・・後悔など、していない!

エネルギー備蓄システムを除外しようとしたわたくしは・・・間違ってなど、いない!


わたくしは…いずれ、備蓄されたものを、与えるつもりであったのです。

落ち着いた後、与えるつもりで、観察を…続けておったのです。


具体的には、備蓄されたエネルギーを、大気中に昇華させたように装い、搾取、したのであります。


労働しない個体たちが、労働する個体から搾取したのと、何ら変わりはありません。

わたくしには、エネルギーを溜め込む意志も、エネルギーを消費する必要もございませんがね。


わたくしは、この事件ののち…労働しない個体も、労働を始めると踏んでいたのであります。

自分の消費する分を、自分の力で得る、すなわち、種として、原点回帰するであろうと考えておったのです。


しかし、生命体は…そうは、ならなかったのです。


いつまでたっても、労働しない個体が、労働をしないことに…絶望しました。

いつまでたっても、労働しない個体が、労働する個体から搾取する事に…絶望しました。


労働しない個体は、徴収するエネルギー量を増やし、突然のエネルギー不足を乗り越えようと考えたようです。


エネルギー不足を、共に耐えてしのごうと…団結しておったのです。

いきなり消えた備蓄、足りぬエネルギー、全ての個体がすべての個体を思いやり、共に危機を乗り越えようと意気込んでおったのです。


労働しない個体は、少し減ったのであります。

労働する個体が、わずかばかり、増えたのであります。


だが、備蓄システムが破綻しており、どんどんバランスが、崩れていったのであります。


労働しない個体が、労働する個体からエネルギーを奪うのをやめず、加速する。

労働する個体が、エネルギー不足になる。

労働しない個体は、労働しないので、エネルギー不足ではない。

労働する個体が、エネルギー不足で分裂しない。

労働しない個体は、労働しないので、分裂する。

労働する個体が、エネルギー不足で活動終了していく。


あっという間でした。


わたくしはあわてて、件の備蓄エネルギーを差し出したのです!

ですが、時すでに遅く…労働する個体は消え、労働しない個体ばかりが残ったのであります!!


労働しない個体は、労働したことがないので、労働することができなくなっていたのであります。


労働したことの無い個体は、実に仲良く…すべてのエネルギーを分けてしまいましてね。

労働したことの無い個体は、実に計画的に…すべてのエネルギーを消費してしまいましてね。


労働しない個体は、エネルギー不足で労働することができないと申し立て、最後のエネルギーを口にして活動を終了しました。


・・・ご静粛に!!

ですから!!


わたくしのような過ちを繰り返してはならないという事を申し上げておるのです!


悪戯に生命体を構築してはならんのです!


今ある生命体を守らねばならんのです!


誰ですか!!

勝手に生命体をいじって改造しているのは!!


誰ですか!!

勝手に生命体を持ちだして増やしているのは!!


誰ですか!!

勝手に生命体を駆除しようと乗り込んだのは!!


愚かしいことは互いに止め合ってなんぼなのです!!


なんぼ?!※⊿〇タイプが愛した言語だ!!


な、ではあなた方はわたくしの研究結果を反故にするというのか!!

わたくしは決して一方的な傾倒等していない!!


難しい言葉を出して問題のすり替えを行うのはやめて頂きたい!!!


なにおう、そこのお前!!

ケイハヨヲグロウするつもりかああああああああああ!!!

オマエノカアチャンデベソぉおおおおおおおおおおお!!!


ぷちゅ!!

ぴた!!ぴた!!!

ふしゅ!ふしゅ!!


・・・・・・!!!!!




愚かしい議会の様子を垣間見た私は。


「はい、ぽちっとね。」


ボタンを押して、さらっと駆逐を完了した。



…以上!

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― 新着の感想 ―
[一言] 伏字に入るのは、社畜ですか……。 社畜を作ろうとしたらニートが生まれた……。 ぽちっとな、で駆逐できちゃうんですか。これはまた。便利な(笑)。
[良い点] ヒャッハー! 人類☆滅亡。 これアレですよね。以前の異世界の魔力がすっからかんになった展開と似てる [気になる点] これ、ほぼセリフというか、言い訳なのがえげつないw [一言] 実は最近ア…
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