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学校に内緒でダンジョンマスターになりました。

学校に内緒でダンジョンマスターになりました。Ⅱ

作者: 琳太

 書籍改稿作業に入ると「他の話が書きたくなる病」が発症。

 前話「学校に内緒でダンジョンマスターになりました」https://ncode.syosetu.com/n1147fs/

を、先にお読みいただいたほうが良いと思われます。

 カクヨムに連載版投稿してます。

「ヤマト様」

「どうした?」

「リソースが不足しております」


 大和にそう告げてきたのはモフィ=リータイのダンジョンコアである。


 地球にダンジョンが出現して二十年以上経つと、ダンジョンはなくてはならない資源の宝庫となっていた。


 俺は日本探索者協会立第三迷宮高等専門学校探索者科、迷宮探索者(ダンジョンダイバー)を育成する学校に通う三年生だ。


 実家は通学するにはやや不便な場所(田舎とも言う)にあるため、多くの学生と同じく寮に入っている。

 春休みに入り、四月二日生まれの俺は探索一級免許を取得してから実家に帰省したのだが、帰省翌日に両親が実家の裏山でダンジョンを発見したのだ。

 ダンジョンを発見した場合、()()()()日本探索者協会ーJapan Dungeon Diver society ーJDDSに知らせなければならないが、厳密に期間が決められていないことをいいことに、家族に頼んで報告を待ってもらった。


 俺は探索一級免許を取得したばかりだったが、学校で思うようにレベル上げができていなかったため、裏山にできたダンジョンでレベルアップしたいと家族を説得、一人潜ることにした。


 レベル上げと言っても、ゲームのようにステータスが見えたりレベル表示があるわけじゃない。

 ダンジョン内にいる時の身体能力とダンジョン外の身体能力とを比べ、その上昇割合をWDDSの設定した基準に沿って判断しているだけのものだ。


 春休み期間中だけということだったが、このダンジョンはできたばかりで10階層までしかなく、俺はなんと10階層の守護者(ガーディアン)を倒し、ダンジョンを踏破してしまった。


 学校では、というか世間一般的にダンジョンを踏破した場合、ダンジョンコアに触れて存続か消失を選べると言われていた。

 〝存続〟それ以上ダンジョンが成長せず、踏破した時点の階層数のまま据え置き、5階ごとの階層主(中ボス)は出るが最終階層ボス(ガーディアン)は出なくなる。モンスタードロップはあるが宝箱(トレジャーボックス)は再現しなくなる。

 JDDSの各種施設が作られたダンジョンはこの〝存続〟されたダンジョンだ。俺の通う学校もある。


 〝消失〟文字通りダンジョンがなくなる。


 俺は裏山ダンジョンを消失させるつもりでダンジョンコアに触れた。

 だがその時、提示された選択肢は3つあったのだ。

 三つ目の選択肢は〝運営〟

 選んだつもりじゃなく、三つ目の選択肢に驚き、つい声に出してしまったらそれが選択となってしまい、俺はダンジョンマスターになってしまったのだった。


 新学期も始まるし、とりあえずダンジョンの入口を封鎖し、モンスターのポップを中止したのだが、そのせいで「リソース」が不足しているらしい。


 ダンジョンのリソース。それはダンジョン内にモンスターやトレジャーボックスを生み出し、ダンジョンを成長させる為に必要なものだ。

 リソースを得るためには生物がダンジョン内で活動する必要があるそうだ。


「リソースを得るためには、ダンジョンに入った生物が死ぬ必要があるのか?」


 ダンジョンのリソースは〝命〟ではないか? という説があるのだ。

 ダンジョンは探索者やモンスターの命で賄われているのでは、という説。

 だが初期の頃ならわかるが、現在では踏破され存続されているダンジョンでは探索者の死亡は激減しているのにも関わらず、モンスターは沸き続けるためこの説は否定されている。


「いいえ、死は必ずしも必要ではありません。確かに生物の死により得られるリソースは多いですが、生物がダンジョン内で活動することで魔素が活性化し、エネルギーを生み出せます」


 なんと、ダンジョン内で人間が思考するだけでもその思考エネルギーからリソースは得られるのだとか。

 また、対象は人間だけでなく動物でも、モンスターでもよかった。

 なので入口を閉鎖してしまい、生物が入ってこないうえ、モンスターのポップを中止したことでモフィ=リータイダンジョンはリソースが不足しているのだ。


「とりあえず、モンスターポップを1/10で、再開」


 これは1階層あたりの最大ポップ率の10%で、と言う意味だ。


「他にリソースを得る方法ってないのか」

「あります。ダンジョンマスターが他のダンジョンを踏破し、ダンジョンコアを吸収することでそのダンジョンのリソースを得ることができます」


 これはダンジョンマスターだけにある能力だそうだ。


 ダンジョンでは踏破を誰がするかにより選択肢が変わる。


 二人以上の集団で踏破────存続と消失の二択。

 ソロで踏破────運営が増え三択。

 ダンジョンマスターが踏破────吸収が増え四択になる。

 ちなみに吸収するとそのダンジョンは消滅する。

 これは消失とは違う。消失はダンジョンはその場所から消えるが、入り口が消えるだけで時間が経てば別の場所に新たな入り口が生まれるのだ。

 この時間はまちまちで、数時間の時もあれば数年の時もある。

 場所も近くだったり、他国だったりと様々だ。

 今までは新しいダンジョンが現れたと思っていたが、実はどこかの消えたダンジョンの入り口が別の場所で復活していただけだそうな。

 そんなわけで消失させても世界中のどこかで新たなダンジョンが生まれるから、厳密には消失ではないんだな。

 だが、吸収されたダンジョンコアは復活することはないので、新たなダンジョンの入り口が生まれることはないのだそうだ。

 そしてダンジョンコアに蓄えられたリソースは、踏破したダンジョンマスターのコアへとチャージされる。

 現在世界中で千個近いダンジョンがあるそうだが、全てのコアがダンジョンとして出現しているわけではないそうだ。

 俺のダンジョンのコアにはダンジョン総数はわからないとのこと。

 何せ10階層しかないダンジョンだ。日本の5大ダンジョンと呼ばれる大きいダンジョンは50階層以上あり自衛隊の特別探索チームをもってしても未だ踏破に至らず、最終何階層まであるのかわかっていないのだ。


「この辺りでできたてのダンジョンは……」


 学校の図書室にはJDDSの情報を閲覧できる端末がある。昼休みに端末で最新のダンジョン情報を仕入れることにした。

 これでWDDS加盟国のダンジョン情報が調べられる。踏破階層や一般探索者が入れるダンジョンの場所、出現モンスターの種類などが閲覧できるのだ。

 協会への貢献度によってはダンジョンの地図なども閲覧できるのだが、現状ほぼ最低Eランクの俺では1階層の地図しか閲覧できない。

 ほぼ最低というのは、その下に二級免許のFランクがあるのだが、そもそも二級は17歳以下で探索者協会立第三迷宮高等専門学校探索者科の生徒しか取れない免許だ。学生は学校のあるダンジョンしか利用できないので他のダンジョンのマップは閲覧できない。


 国によって二級の条件は異なるが日本では学生専用だ。




「割と近くに新しいダンジョンがあるな。ここからだと電車とバスで二時間かからないかな。次の週末に行ってみるか」


 俺はモフィ=リータイでスキルをいくつか手に入れた。もちろん学校には内緒だ。

 スキルの取得数には限りがあるのだが、最初に《アイテム鑑定Ⅱ》を手に入れたおかげで、取捨選択がやりやすかったのだが……


 ダンジョンマスターになるとスキル取得限界が……ほぼ無いと言っていい。

 ダンジョンマスターの能力に『スキルのONOFF機能』があった。

 スキルをOFFにすれば、その数だけ新たに取得でき必要に応じて切り替えカスタマイズできるのである。

 なんてチート。

 そして普通のスキルとは別にダンジョンマスター専用スキルがあってこれは通常のスキルとは別枠だった。


 スキルには数字がついているものがあるが《M》がついているものをマスターになって初めてみた。ダンジョンマスタースキルなので当然だな。

 俺が今使えるダンジョンマスタースキルはこんな感じだ。


《念話M》*ダンジョンコアやガーディアンと念話ができる。それ以外とは不可。

《倉庫M》容量無限、時間経過なしの異次元収納。収納したものを《リソース》に変換することができる。

魔物(モンスター)辞典Ⅰ》モンスターの特徴を調べられる。これを使ってダンジョン内に配置するモンスターを選ぶのだ。まだランクが低いので弱い魔物しか載っていない。

《レベル鑑定》モンスターのレベルを見る。

《階層転移》自身のダンジョンであればどこでも、それ以外なら踏破階層に転移できる。

 これはダンジョン外からも転移できるのだが、残念なことにダンジョン外へは転移できない。


 ダンジョンが大きくなればスキルも増えるようだ。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 そして四月九日から新学期が始まるため、俺は前日の8日に寮へ戻った。

 寮のタイプは様々だ。それは家賃を出すか出さないかで変わる。

 支払いは金でもできるがポイントでも払えるのだ。

 高学年になれば実習で手に入るポイントも増えるため、稼げるやつは部屋を移っていく。

 俺は三畳一間のトイレ付き風呂とキッチンは共同の一人部屋。食事は食堂なのでキッチンはなくても問題ない。

 下から数えた方が早いランクの部屋だ。

 以前はバストイレキッチン付きの四人部屋だったが、進級時に変更した。


 クラスメイトと同室なんて真っ平ごめんだ。

 ルームメイトにシカトされるくらいならまだいいが、物を壊されたり隠されたりが酷かったのだ。

 犯人はルームメイトではないところが、始末が悪い。

 ルームメイトが犯人を部屋に入れるので防ぎ用がなかった。


 前年度の二学期、実習中に誤ってスキルスクロールを開いてしまったことから、俺の学校生活は灰色に染め変えられた。

 二学年ではスキル習得を禁止されていたこともあり、クラスからいじめを受けることになった。

 俺が手に入れたスキルはランクノーマルの〈灯り〉。

 ランタンや懐中電灯よりも光量があり、ちらつきも少ない。

 本来取得できないはずのスキルを取得してしまった俺に、スキルを使わせないようにするのが筋ではないだろうか。

「灯りで照らせ」と言い出した班のリーダーである前橋に、教師は注意することなく黙認した。

 以降俺は班の〝灯り係〟となり、ほぼ戦闘に参加できなくなった。





 16歳で取得できるライトパスと呼ばれる所謂准免許では、協会の指定する踏破済みダンジョンにしか入れない。

 未踏破ダンジョンに入るためには18歳で取れる正免許が必要だ。


 クラスで唯一四月生まれの俺は、春休み中に正免許を取得し実家近くのダンジョンでレベルを上げるつもりでいた。それがうまくいかないようなら学校を中退することも視野に入れて。

 うちの学校は三年まではクラス替えがないが、出席番号は毎月の能力測定で変更される。当然俺はクラスで最低、一番どんケツだ。

 一般校とは違うので、三年で卒業することもできる。ただし、五年卒とは明らかに差別される。

 五年卒は未来の一流探索者、三年卒は平凡以下、中退者は落ちこぼれのゴミ扱いである。

 中退するくらいなら、三年制のサポート科に転科する方がましだ。サポート科の学費が探索科の10倍だとしても。


 そんな俺に神様がチャンスをくれたのかもしれない。

 実家の所有地にダンジョンが現れたのは。

 ……レベルアップがしたかっただけで、ダンジョンマスターになるつもりは無かったんだけどな。




 始業式は学校ではなく、最寄りの市営体育館で行われる。

 探索科は学期初めに実力測定があるからだ。基礎能力と呼ばれるそれは、ダンジョン効果の及ばない外での体力を測り、月初に行われるD能力と呼ばれるダンジョン内での実力測定結果との差からレベルを算出する。


「あれ、あいつ中退か転科してるかと思ったのに」


 そんな言葉を聞こえよがしに言ってるのは昨年班のリーダーだった前橋だ。

 俺は無視して五十メートル走の列に並ぶ。

 二年生男子の平均は6秒台で、一般の高校生より1秒は早い。去年の俺は8秒台だった。


「オンユアマーク」

 最終グループの五人が並ぶ。元班メンバーが蔑みの混じった目で見てるが、無視だ。

 スターターの合図で一斉に走り出す中、頭ひとつ抜け6秒88でゴールした。ようやくクラス平均値だが、1秒縮まった。春休みがんばった甲斐があったよ。




 四月のクラスの席順は二年の成績順だから、俺は三十番のビリッケツだ。

 ただ、昨日の実力測定ではほぼ真ん中あたりの数字を出した。

 そのせいで前橋たちが遠巻きにネチネチ言ってくる。


「ほら、席につけ。授業始めるぞ」


 チャイムと共に入ってきたのは副担任の三田だった。


「三年最初の授業はお待ちかねのスキルスクロールの配布だ」


 その言葉にクラスに歓声が上がる。


「何が当たるかは運だ。運も実力のうちというから何が当たっても文句はなしだぞ」


 そう、スクロールのドロップは運だ。ドロップするかどうか、何がドロップするか。ダンジョンによって傾向はあるが、過去統計を取ったがそこに明確な定義は存在しない。

 結果、探索者本人の運によると言われている。

 三田は二つの箱を教壇の下に置いて、中を混ぜるようにかき回してから、一つ目の箱を教壇の上に置く。


「まずは1番杉野からだ」

「はい」


 スクロールを引くのは成績順。何が〝運〟だ。よく言うぜ。

 俺は《アイテム鑑定Ⅱ》でスクロールを鑑定した。有益なスクロールは一つ目の箱に多く、二つ目にはロクなものが入っていない。

 あたりの数が操作されたくじ引きじゃねーか。

 クラスの半分の十五人が引いたところで三田が残りの箱の中身を投入し混ぜる。

 そして最後の俺の番、選ぼうにもスクロールは一つしかない。


「あ、すまんすまん、下に落としてたな」


 そう言いながらスクロールを二つ取り出し、箱の中身は三個になった。

 落としてて気付かないはずがない。最初から仕込んでいたようだ。

 なんせ今入れたスクロールはどちらも《灯り》で、すでに俺が持っているスキルだ。

 呆れてものが言えない。俺は最初から残っていた一つ《暗視》のスクロールをとった。


「鹿納、それでいいのか?」

「残り物には福があるって言うからな」


 俺はお前の茶番に乗ってやらん。


「お前たちにとって初めてのスキルだ、まあ一人違うのもいるが。開けてみろ」


 三田の言葉に一斉にスクロールをほどき、教室の中に光の粒子が舞い踊る。

 あちこちから悲喜様々な怒声が踊る。


「やった! ファイヤーアローだ」


 そう叫んだのはクラストップの杉野。


「俺ストーンブリッド!」

「畜生! 聴力強化かよ」

「俺、罠察知、やり〜」


 そんな中、前橋が俺の方を向く。


「お前何だった? 俺は〜、サンダーボールだぜ」


 初級攻撃魔法スキルと言われている中でも、サンダーボールの有用性は一つ抜きん出ている。それは副次効果で若干のスタンが発生するからだ。

 優越感の滲んだ笑みを俺に向ける。


「……暗視だ」

「はっ、暗視か、よかったじゃねえか。結構有用スキルだぜ。《灯り》とは相性最悪だけどな!」


 その言葉に元班メンバーが笑う。三田も笑っていた。

 しかし間違いではない。《暗視》があれば《灯り》は必要ない。《灯り》を使えば《暗視》は役に立たない。

 どちらかは死にスキルだ。

 持てるスキルには限度がある。

 この最初のスキルは求めるものではなくランダムで与えることで、今後どのようなスキル構成を立てるかという、試験でもある。そしてこの二つをとることは最悪の構成なのだ。


 嵌められたのだろう。まさか教師にここまでされるとは。

 結局どれをとっても俺にはマイナス。


 まあ、俺には『スキルのONOFF機能』があるので、全く問題ないがな。




 新学期最初の一週間は座学と普通学科の授業が続く。

 この間に担任と副担任による個人面談がある。当然俺は最後である。

 俺は向かいに座る教師二人に申請書の項目を指差す。


「そこにある通り、俺はパーティーは組みません、ソロでやります」

「鹿納、お前…」


 担任教師の只野が言いかけた言葉を遮り


「三田先生は理由はわかりますよね、俺がソロを選択する理由」


 三田は昨年度、俺たちの班の指導教官だったのだ。今年は副担任だから指導教官にはつかない。


「三田先生は、俺が2年の3学期中に倒したモンスター数ご存知ですよね」

「そ、それは」

「班の指導教官だったんですから知らないはずないですよね。俺が3学期中に倒したモンスター数は【6体】です」


 只野が三田を見る。


「俺が班のメンバーから嫌がらせ、いやいじめにあっていたこともご存知でしたよね。俺は何度も班替えをお願いした。でもあなたは不仲なメンバーとの関係を構築することも大事だ、と取り合ってくれなかった。これが普通の学校だったら俺も納得したかもしれません。だから我慢しました。けど三年になった途端、気の合った者とパーティーを組むことを推奨、そして途中移籍も可能。なぜならメンバー内の不和はダンジョン内では怪我や、最悪死に繋がるから……あの時の貴方のセリフとは真逆の理由だと思うんですが。あ、不仲だったのは認めてたのか」


「三田先生、あなた」


 只野は眉間にシワを寄せつつ、三田の方を向いた。

「結果、俺は学年最弱でFクラス。座学の成績が良かったからギリ退学にならずにすんだってとこですか。高い授業料でしたが勉強させて貰いましたよ、三田先生。探索者は他人を簡単に信用してはいけないってね。ですから俺はこの学校内では誰とも組む気はありません」

「……鹿納の言いたいことはわかった。しかし学校側としてはソロに指導教官をつけられない。一対一では個別指導扱いと取られるし人員にも余裕はないんだ」


 俺はポケットから端末を取り出し、免許証を表示する。


「あ、付き添い無くていいですよ、俺正免許とりましたから。誕生日4月2日なんで。だから【亀】でいいです」


【亀】とはライトと小型カメラと通信用インカムのついたヘルメットの事で正式名称ではなく学内では【亀】という俗称でと呼ばれている。

 四年生からは指導教官が付かず、この【亀】を使用するのだ。


「あの一件で三田先生にも処罰があったんでしょ? 申し訳ないとは思いますがそれで生徒のイジメを止めるどころか増長させるのは教師としてはどうかと思いますね」


 それだけ言うと俺は面談室を出た。

 その後教職員でどんな話し合いがあったかは知らないが俺の【ソロ】は認められた。まあ去年の卒業生にも三年次に正免許をとってソロでやっていた先輩がいたことを知ってたのでその辺りは大丈夫だと思ってた。

 あとは【亀】のカメラを誤魔化す方法だが、これは偶然だが手に入れたスキルが役立つことになった。


 新学期最初の授業で配られたスクロール。あれはランダムと言いながらAクラスでは攻撃系のみで、うちのFクラスは補助系が多かった。

 俺の引いたスクロールは〈暗視〉スキル。三田の悪意の結果だが、おかげでカメラを誤魔化せる手段を思いついたのだ。


 指導教官というのはどちらかといえば『護衛』である。生徒が無茶をしないように、そして有事の際は生徒を守る。だから普段の行動に特に問題がなければ口出しをせず、終了後のミーティングで注意点、反省点などを喚起するくらいだ。

 だが三田は俺が戦闘から弾かれたことについては殆ど注意をしなかった。

 だから班のメンバーもどんどん増長していった。

 しかしこれは準免許の十七歳以下だから指導教官を必要とする。車で言えば仮免だな。

 俺は十八歳になり正免許をとったことで、指導教官なしでも探索できる。その代わりたとえ学生であっても自己責任が発生するのだ。


 三年次に正免許を取るかどうかは様々だ。

 ほぼ全員が、指導してもらえ護衛がついているうちに多少無理をしてもレベルを上げると言う考えだ。

 それがあるからこんな高倍率で狭き門の学校に来てるんだけどな。

 俺だってそのつもりだったさ、二年生までは。

 そう言うのがどうでもいいと思うものは18歳になった時点で免許を取り、一般探索者になる。





 学院のあるダンジョンはすでに踏破された階層フロア型ダンジョンだ。

 階層フロア型というのは、各階層が広範囲の一つのフロアしかないタイプのことだ。

 一階層には校庭と呼ばれる練習場と三階建ての校舎がある。校舎の中はクラスの教室。

 二階層に職員室と教科別教員室。ここを通らなければ三階層に行けない仕組みになっている。

 三階層以降は普通のダンジョンのままだ。


 世界中には踏破されたダンジョンを利用した施設がいくつもある。


 施設を作れる条件は建物を建てられる広いスペースがあること。学校のあるここは広いエリアと五階層からは迷路の組み合わさった複合ダンジョンで学校に最適だ。


 なぜダンジョンの中に施設があるのか。

 それは取得したスキルや能力はダンジョンの中でしか発動しないからだ。

 上昇した身体能力はダンジョンの外に出ると十分の一以下となり、スキルは全く発動しない。

 スキルを活用するためにはダンジョン内でなければならない。だからDDSはダンジョンの中に施設を作った。


 何より有益とされるのは病院だ。治療スキルを持った治療師がいればどんな病気も怪我も治療できる。

 この治療スキルはスキルのランクにもよるが、医学の知識も多少必要で、看護師程度の知識が必要と言われている。

 サポート科にはこの治療師を目指すものも多い。だがスキルスクロールは高価なため、毎年全国で数人にしか与えられない。他は自身で手に入れるしかないため、手に入れられなければ看護師の道に進むしかない。

 治療系のスキルスクロールはオークションで億の値段がつく。

 一般探索者の誰垂の逸品だ。自分で手に入れるならドロップさせるしかない。

 ちなみにこの治療師による治療は保険が効かない。

 スキルを得られれば一生食いパグれないどころか、ウハウハである。



 《治療》スキル、持ってるけどね。俺医学の知識ないんだよな〜


 やっぱり最後が思い浮かばず、続きをまた短編に仕上げてみました。

 前回から10ヶ月経ってますね。

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[良い点] たんたんと進むも読み飽きない。 [気になる点] 不仲なクラスの人等のエクストリームDo下座を見たかった。 [一言] 「他国の介入と売国勢力が面倒だった。だがお陰で誰をパージすればいいか分か…
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