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9話 悪い人は何処にでもいるのです

モンスターを狩ったりヴォルトを探したり夜勤が続いたりしていました……

少し落ち着いてきたので投稿頻度も頑張って戻します

毎日少しずつ書いてましたがお話自体の進行を遅くして二つに分けた方が良かったかもしれないと思いました

おはようございます、アクアです

その後栄養ドリンクの生産量を増やしたアルケミ屋は飛ぶ鳥を落とす勢いで売り上げを伸ばしています、なんだかんだで鉄級商人くらいにはなっているんだとシャープさんが喜んでいました

洗濯業の方もドリンク目当てで来ていたお客さんが横で洗濯をしている私を見て興味を持ってくれたのか色々持ってきてくれるようになりました


お客さんも色々な人が来てくれるようになりました、若い奥様から歳をとったお婆ちゃん、綺麗な服を着たお姉さんやダンディな紳士服の方、特にギルドに属していない一般の方々にも認知されつつあるようです





突然ですがハイアールには7つの区画があります、階級というものはないのですが区画の数字が小さいほど古く、昔からハイアールで営んでいる人たちが多く住んでいます

そのため第1区画から第3区画までは偉い人達が住んでいる事が多く、言ってしまえば権力を持った人が多いのです、高級料理店や服屋さんなども区画が上になればなるほど多く存在します


「私は第3区画で銀級商人をやっているものだ、このポーションを作成した錬金術師を出せ」


そうそう、こんな風な偉そうなおじさんが……シャープさん助けて下さいなのです!!

しかしシャープさんは現在アルバイトの方を探すために職業案内所へ行ってしまったので今は私一人です……


「あの、まずは並んでください。順番が来たら対応しますので」

「店で売り子をしている小娘が私に意見するな、錬金術師を出せ」

「今はお店に私しかいません、そしてお店の錬金術師は私なのです」

「何と……いや、少女が錬金術師とは聞いていた、まあ話は早い」


ジロジロを感じる視線は明らかに見下したものです


「栄養ドリンクの作り方を教えろ、そうしたら私の店で雇ってやらないこともない、貴様もこんな店で働くよりも私の店で働く方がいいだろう?」

「い、嫌です」

「まず拒否権などない、ここら一帯の取引を仕切ってるのはこの私だ、この街で商売を出来なくすることも出来るんだぞ?」

「そ、そんな……」


周りのお客さんたちが途端にざわつき始めました、本当にこのおじさんにはそれだけの力があると雰囲気から感じることが出来ます

普段は困ったお客さんが出てくるとすぐに摘まみだしてくれる強面の冒険者のおじさんも手が出せないという感じでいます

突然過ぎるのです、栄養ドリンクの作り方なんて私の一存では教えられないしシャープさんのお店を辞めるのも考えられません


「シャープさんがいるときに話を……」


シャープさんの名前を聞いたおじさんは途端に顔を喜色に歪めました、とても気持ち悪い笑顔です


「シャープ……?はははっ!!まだ未練がましく商売をやっていたのかあの小娘!!そういえばシャープ商会だったなこの場所は、トドメを刺すというのも一興か?」

「止めてくださいなのです!!」

「おい……アンタなにをしてるんだい」


冷え切った声音が響きます

いくつかの書類を小脇に抱えたシャープさんが今にも喰ってかかりそうな顔をしていました


「これはこれは、誉ある銀級から堕ちたシャープ殿」

「お世辞は結構だよ、ダイグ……アクアちゃんに目を付けたか」

「栄養ドリンクの革命とも言われているこの商品をこんなちっぽけな店で独占しているなどありえん、それを私が有効活用し更なる富を生み出そうというのだ」


勝手な話なのです、私たちのこと何てちっとも考えていない言葉に寒気すら覚えます


「この少女が鍵なのだろう?少し調べさせたのだ、石級の錬金術師の少女が生み出す栄養ドリンクであるとな、小娘……そうだなぁ200万AGを払おう、そして私の商会で働くと良い、その後の職にも困らないようにしてやる、石には余りにも勿体ないほどの待遇だ」

「嫌で……」

「当然断ればこの店を潰すように動く、さっきも言っただろう物覚えの悪いガキだ」


ハイアールは良い人ばかりでしたが中にはこんな人もいますのね……

どうしたらこんなに人に威圧的な態度になれるのでしょうか、同じ銀級の商人ではシャープさんとは天と地ほども人間性に差があります


シャープさんは一瞬怒りが爆発しそうな雰囲気が溢れましたがすぐに冷静になります

一転して呆れてしまいました


「アンタね……アタシの後ろにいる人が見えないの?よくそんなんで銀級だなんて言ってられるよ」

「他の商店への恫喝行為をこのように見せられてしまうとは……これは上への報告が必要なようですね」

「眼鏡のお姉さん!!」

「こんにちは、勤務状況を確認させていただいて適正な給与を与えているか確認しに決ました、中々苦労しているようですね」


職業案内所の眼鏡のお姉さんはおじさんとシャープさんの両方を見て大きくため息を吐きます、トレードマークの眼鏡をクイっと持ち上げます


「ダイグ様、等級を権力として扱うこともあなたの持っている立場を利用して圧力をかけることも公には認められません、力を持つものならそれなりのこの場は今すぐに収めていただきます」

「……貴女にそう言われたのであれば仕方ない、この場は今すぐに引かせていただきますよ」


それは暗に公でなければそういった事を認めるということなのでしょう、それこそ眼鏡のお姉さんがいなければこのおじさん、ダイグさんの暴挙を止めることは出来ません

ダイグさんは止められた事をまったく気にしていません、それこそまた明日にでも同じことを言いに来るはずです


「分かっているだろうが、明日までに答えを用意しておくんだな、一時たりとも待たぬ」

「っ…!」


ダイグさんは上機嫌に去っていきます、大きく肥えたその体がユッサユッサと揺れて見えなくなると私の膝から力が抜けます


「アクアちゃん大丈夫!?まさかこんなに動きが早いとは思わなかったよ、アタシも油断してたんだごめんね」

「大丈夫なのです、なんなんですかあの人!!」

「簡単に言えば悪いやつだよ、元々ここら一体の土地を仕切ってる家の奴でね、性格も特権意識に凝り固まってるしで救えないやつさ」

「街からの評価でいえばそれなりに稼げる銀級ではありますが、個人的な意見を言うのであれば一利あって百害という方ですね、こうして利益になりそうなものを無理やり吸収しては9割はその芽を枯らしてしまう天才ではあります」


さ……最悪なのです、私たちの栄養ドリンクもそうなってしまうんでしょうか

数日とは言え私が毎日夜なべして味の調整をした我が子のような存在なのです、14歳の母なのです


「これからどうするのです?」

「ん?そんな大層な問題じゃないよ、あの手の輩は今までにもいっぱい居たさ、アタシが銀級になったときなんかもね、アイツもその中の一人ではあったけどパパっと追っ払ってやったよ」

「流石シャープさんなのです、私はあんなに話を聞いてくれない人は初めて会いました」


魔物に出会ってしまったみたいでしたと言ったらシャープさんはケラケラ笑っています

しかし過去に対応したことでダイグさんも個人的にシャープ商会に思うところがあるのかもしれません、シャープさんの名前を聞いた時のあの顔はどうにも心に焼き付いています


「明日はアタシが対応するよ、仮にアイツが強硬手段に出てここらで商売できなくても困りはしないし」

「私共は困るのですが……お二人は第7区で言えば突出した商人となりつつあります、街としては今後も付き合っていければと」

「そうはいってもねえ、ダイグ程度の男とは言え権力持ちと正面切ってやりあうのも面倒だけど……そう期待されてるなら少しは頑張ってみようかな」


ダメならダメで他の町にでも行ってサクッと商売を再開するよとシャープさんは軽く返事をしました


「ダイグに関してはこんな作戦で良いんじゃないかな……ゴニョゴニョ」


おお……そんな方法で?







「答えを聞きに来たぞ」


朝一番にダイグさんはやってきました、今回は横に従者の方や多分錬金術師の方々まで連れてきています

私たちも商人ギルドの方を一人この場に用意していました


「アクアちゃんの引き渡しには応じられないよ、その代わりに栄養ドリンクの製造方法とその販売権を売るだけで勘弁してもらおうかね」

「製造方法さえ分かるならそこの石級に高い金を払うまでもない、雇って聞き出した後には適当な理由をつけてクビにするつもりだったしな」


清々しいまでの屑発言に私も苦笑するしかありません、どうしてそんなことを人の目の前で言えるのでしょうか

商人ギルドの方も頭を抱えてしまっています

眼鏡のお姉さんが先日も言っていた公に権力を行使するようなことをギルド職員を前に言ってしまう辺り先日の評価も間違いじゃないんだなと認識できるのです


「じゃあ銀級の商人らしく商売といこうじゃないか、証人としてギルドの職員に来てもらってるよ、後で覆されても困るからね」

「構わん」


こうした商人同士のやり取りが行われる場合は商人ギルドの職員さんを呼んで証人になってもらったり記録を取るんだそうです

今回のように力関係ある場所と交渉を行った際にそれらを反故にされないようにする目的で使われるんだとか


「書面はこちらに、アルケミ屋の提示する条件は薬の製造方の売却とダイグ商会が栄養ドリンクの製造・販売後は直ちに同商品をアルケミ屋から販売停止するということ、アルケミ屋に対し一切の干渉をしないことに対して500万AG」

「500万だと!?」

「高いかい?そんなわけ無いだろう競合のアタシ達だって潰せるんだ、値段だって自由に上げれば良いさ」

「販売後に停止と言うのはなんだ?」

「ウチだって在庫があるからね、それが掃けるくらいには売りたいのさ、一日や二日で作れるもんでも無いだろ」


利にかなっているとダイグさんはウンウンと頷きます、頭の中は栄養ドリンクでどうやって儲けようとか考えていそうです


「確かに500万は私の商会ならすぐに取り返せる値段だ……なんなら上手く販路を広げられれば金級へ至ることもできるはず」


自分が言うのも何ですが私が作った栄養ドリンクにそんなに価値があるのでしょうか?

頑張って毎日作っても鉄級程の売り上げとシャープさんは言っていたのです

実際には販売規模の問題なんだそうですがシャープさんとしては今のところは人手の問題や輸送の問題があるので今よりも規模を大きくする気もないそうです


ダイグさんは数分悩んだ後にニンマリと笑顔を浮かべます


「これほどの商品を500万とは随分と分をわきまえているな!条件を呑もうじゃないか、では早速作り方を教えろ」

「同意と見なしても宜しいでしょうか、これらを反古にした場合は商人ギルドとして等級の剥奪、更には全ての財産の没収となります」


職員さんが書類に二人の等級票を載せると書類に二人の名前が刻まれました

こうして等級票を用いたやり取りは冒険者に対して行ったり商人同士のやり取りでは一般的なのですが立ち会いが必要なのでよほど重要な案件の時に使われます


「外に私が雇っている鉄級の錬金術師を何人か待たせている、そいつらに製造方法を教えるんだな。私は帰るとしよう、お前たちと違って忙しいのでな!」


豪快な笑い声を上げながらダイグさんは馬車に乗って帰っていきました、職員さんは私達がきちんと教えられているか確認するために残ります

気まずそうに錬金術師の男性が前に出てきます、知っている人は誰も居ないので区画の違う錬金術師の方達かもしれません


「すまん、俺達も仕事でな……折角の研究成果、それも石級の君が作り出したものをこんな形で奪う事になるなんて……」



シャープさんと私は逆に申し訳なさそうにするしかありません


「あー……こりゃ悪い事をしたね」

「ですね……」


取り敢えずお約束なので製造方法を伝えないといけないのです




職員の方立ち会いのもと私は実際に作業空間で栄養ドリンクを作成してみせました

錬金術師の方達は作業行程途中の材料などを一つ一つ確認していくという流れです


「……こりゃ俺達はクビだな、こんなの普通の錬金術師では作れねえ」


製造方法を聞いた錬金術師のお兄さんとその他の人達はうんうんと頷いています

何人かは分解途中の葉っぱをいくつか持って何度か作業空間に入れてはああでもないこうでもないと言っています


「まず分解の仕方が分からねえ、有効成分を取り除くっていうのなら出来るだろうが……こんな細かい部位を指定して分解なんて出来ねえだろ普通、いや部位だけじゃないんだよなこれ」

「この粉々にしてるのはなんだ?分解を使って?いやいやそんな技能じゃないぞ分解は」


私もシャープさんがやってみてって言うからやってみただけなのです

合成も最近まで出来ませんでしたし


「合成も混ざり方が分からん、発生したはずの固形物はどこ行ったんだ?まるで溶けたみたいに……」

「俺達鉄級の錬金術師なのにな!さっぱり分からん!!」


解散解散と錬金術師さんたちが研究用に持ってきた機材を片付けていきます


「お嬢ちゃんの等級が石なのが全くもって理解できないってことが分かった、少なくともこの街の錬金術師じゃこのレシピは再現できね…なるほどそういう契約か」

「気付いたかい?」

「500万ぽっちで売るにしては勿体無いとは思ってたよ、てっきり圧力に負けたもんかと思ってたんだが上手いこと考えやがる、最初の謝罪は取り消していいか?」

「むしろこっちが悪いことしたね、あんな奴の下にいるからてっきり大派閥の馬鹿が来るもんだと思ってたよ」

「馬鹿言え、アイツにそんな知恵があるかよ俺達だって数日前突然雇われただけだ」


先日シャープさんに言われた内容というのは凄くシンプルでした


色々条件は付けるけど全面降伏に見せかけてお金だけ取っちゃおう作戦です

前提として私がアルケミ屋に残ること、栄養ドリンクは売り続けること、更なる妨害行為を防ぐことになります


先ずは小さい額での製造法と販売権の売却をすることで圧力に屈したように見せつつ、私の引き抜きを拒否すること

妨害行為をある程度防ぐためにもギルドを介した契約を結ぶことでした


製造についてはシャープさんは絶対にアクアちゃんにしか作れないから引き抜きさえ防げばOKとのこと


ダイグさんはまず目先の利益に釣られるので肝心な製造部分についてろくに確認しないだろうというシャープさんの考えは当たっていました


「アクアちゃんの方法を真似するには銀のスペシャリストを数人、製造量を確保するだけでも更に10倍は必要だからね、洗濯物と栄養ドリンクだけなら世界一だよ」

「エヘヘ、褒めすぎなのです」


というわけでダイグさんは栄養ドリンクを作ることが出来ないので私達は今後もずっと栄養ドリンクを作り続けることができます

言葉の上では在庫を売り切るくらいにはとは言いましたが契約は販売を開始するまでなのです、因みにギルド職員の方は気づいていたそうです


「まあ裏から圧力をかけてくるかもしれないからしばらくは警戒はしないとだね、ただ相手もリスクを負うことになるからいくらダイグが馬鹿でもそんなことはしないだろうさ」


一件落着なのです









「一体どういうことだ!?栄養ドリンクが作れないのでは契約を結んだ意味が無いではないか!!」


シャープさーーーん!?

怒り心頭という感じでダイグさんが翌日やって来ました、今日もシャープさんは外へ出ています

営業時間前から馬車に乗ってやって来たダイグさんは何と屈強な男の人を数人連れて来ていて何時でも実力行使出来る状態なのです


「私はキチンと教えたのです、商人ギルドの人も証人になってくれています」


ギャグではないのです


「そんなことは知ったことか!!出来ない契約を結ぶなど有り得んではないか!!他の錬金術師が作れないのであればやはり貴様がこちらに来るのが筋だろうが!」


ダイグさんは収まりません、太った体がボヨンボヨン激しく揺れます

きっとこの人の中では昨日結んだ契約もあくまで自分が仕方なく結んでやったもの位にしか思ってないのかもしれません


「500万など払うものか!契約も当然無効だ!!おい!この小娘に現実を思い知らせてやれ!!」


ずいっと何人かの男の人が前に出てきます、全員良い人とは言いにくい表情をしていて昨日の人たちみたいに嫌々従っている感じではありません、なんなら舌なめずりしてるのです


その中の一人で特に悪そうな顔をしたおじさんが下卑た笑みを浮かべながら最悪な言葉を口にします


「旦那ぁ?最近いい薬が手に入ってよぉ、ちょっと中毒性が強いがブッ飛んじまうようなやつでよ、そいつを飲ませりゃこんなガキいくらでも言うこと聞かせられるぜ」

「体つきは貧相だけど楽しむ分には構いはしねえ、たっぷり可愛がってやるぜぇ?」

「はっはっは!!飼い殺しというわけか好き者だな貴様らも!!シャープとか言うここの店主も同じようにしてやれ、そうだな、そいつは最初に私が踏みにじってやるとするか」


……え?


頭が真っ白になります

浴びせられる圧倒的な悪意はまだ幼い私には到底理解できるものではありませんでした、お店の妨害をするとかそういう次元の話ではなく人として踏み入ってはいけない領域まで踏み込んだその言葉は明確に私個人の死を意味します、それにシャープさんも……


「というわけでお嬢ちゃん?大人しくしてれば怪我はさせねえよ、その後は気持ち良くしてやるからよぉ?」

「い、嫌っ!!」

「目撃者がいつ来るか分からん、さっさと攫ってしまえ」

「っ!!」

「お?店の中に逃げるのかい?」


既にお店の外を固められてしまって私が逃げる場所はお店の2階部分の自分の部屋しかありません、鍵を掛ける事も出来ない普通の扉なのです

嗜虐的な笑い声が扉の前に集まっています


「馬鹿だねえ、外で騒いでればまだ他の奴らが気づく可能性もあったのによ」


がちゃがちゃとドアノブを回して押す音が部屋に響きますがドアは開きません

私が内開きのドアの前に作業空間を展開しているからなのです、作業空間は一点の衝撃には弱いですが面での衝撃には多少強くて空間に固定するので動くことはありません


「クソッ!何かで押さえてやがるか……おい、扉を壊すぞ」

「手間取らせてくれた分は後でじっくりお返ししてやるからなぁ?」


次の瞬間ハンマーのようなものが扉を貫通して作業空間に直接ぶつかり私の作業空間が揺らぎます


「うっ…!」

「おうおう、でかい作業空間だな、まあ無駄なこった錬金術師の作業空間は脆いもんな」


かなりの力を入れて作成した作業空間も何度か叩かれると壊れてしまいました、作業空間が壊されると同時に全身の力が抜け落ちてしまいヘナヘナと床へ倒れ込んだ私を笑いながらゾロゾロと部屋に入ってきます


「諦めな、力がないのに旦那みたいなのに逆らっちゃダメだぜ?アイツは相当馬鹿だからな、何でもやるんだよ」

「そうそう、第一この店の店主だってそもそもは旦那の指示で商売人としてやっていけなくなったんだ」

「それ以上言うな、さっさと攫っちまおうぜお楽しみが待ってんだ」


こういうことに慣れているのでしょう、言うや否や私の体を縛って口に猿轡を噛ませると布団を巻いてしまいます

既に作業空間を壊されて抵抗する力すら残っていない私は荷物のように抱えられてしまいます、これでは何も知らない人が見たら何か大きなものを運んでいるようにも見えてしまうでしょう


「今は出掛けてるみてえだがすぐ戻ってくんだろ、2人くらい残って店主が帰ってきたらそいつも攫っとけ、楽しむなよ?旦那が最初に手を出すらしいからな」

「あいよ」


布に包まれた私を抱えた男の人が階段を降りていくのを感じます

すぐにこのまま馬車に乗せられてしまい後は想像も出来ないようなことが待っているのです

しかしお店は開店前、市場からも近くはないので人通りは殆どありません


「お?オッサン達……待てその肩に担いでるのなんだおい」

「あー……アクアちゃんねあれは、あの大きさは間違いないわ」


その声はエコノさんとセイワさん!?どうしてこんなに早く?

しかし今はチャンスなのです、脱力している身体に鞭を打ってほんの少しだけ体を動かして声を出すことが出来ました


「んむー!!」

「シャープさんから話を聞いてね、念のため確認しに……ちょうど良かったわね、今助けてあげる」

「というわけで今すぐ放すなら許してやるよ、そこのダイグって親父は覚悟しろよ」


か……かっこいい

お二人は銅級の冒険者なのでちょっと顔が怖いくらいの男の人ではまず勝ち目がありません、私が助かる確率がぐっと上がりました


「ちっ小娘の知り合いか……はっ!銅級の若造二人で何ができるんだ私を舐めるなよ、崩れとは言えこいつらだって鉄級程の実力があるぞ!!」

「げぇ!?マジか」

「あちゃー、カッコよく出てきてみたけどこれは不味いわ……」


あわわわわわ!!突然弱気にならないで欲しいのです!?


「ま、鉄級の実力を受けてみるチャンスでもあるか!俺たちも近いうちに鉄級になる予定だしな」

「そうね、鉄級だって言うならここで倒して実力をアピールするチャンスでもあるわ、アンタはあっちの、私はこっちの、中にも二人いるっぽいから終わったらそっちのもね」

「生死は?」

「お互い様だし問わなくていいでしょ、人攫いはどのみち死刑だし」


冒険者世界は物騒で人との命のやり取りも当然あります、盗賊や狩場での強奪行為などから自分の身を守るためには命を取る必要も出てくるのです

お二人も何度かそういうことは経験していると少し前に教えてくれました


「言うじゃねえか……鉄級を相手にするってことがどういうことか教えてやるよ!!」


ぽいと私が地面に転がされますが布団でくるまれているので何も見えません

布の向こうで金属がぶつかり合う音が聞こえてきます


「…?本当に鉄級か?こんなん銅になりかけが精々じゃね?ほら脇が空いてんぞ!」

「ぐぎぃ!?ほ……骨が…」

「自分の実力を大きく見せようとしただけね、こんなの命を取るまでもないわ」


あ、なんか勝てそうなのです、頑張って!


「いや、本当に俺たちは元鉄級だ!!お前たちがおかしいんだ!!」

「そんな事ねえよ、師匠だって鉄級だったもんな」

「師匠以外の鉄級の動きを見たことないんだけどね、まあアンタ達はダメよ」

「ぐべぇや!?」

「ひぃい!?どうしたお前たち!!銅級如きに情けない!おい中にいるやつもこっちへ来い!!」

「あー…中の二人は片づけておくからそこのオッサンを始末しておいてくれ」


地面に置かれた私をセイワさんがポンと一回叩くとお店の中に入っていったようです、中はなるべく壊さないでください


「さて、ダイグだっけ?」

「貴様等……覚えておけよ、私に恥をかかせたな?」

「あっはっは!アンタに次何てないんだけどっ!!」

「ひぃ!?」


ボゴン!!と激しい爆発音が近くの地面からします……なんでしょう?魔法でしょうか


「そもそも私達への口封じが失敗した時点でアンタに未来何てないわよ、このままギルドか憲兵に突き出して後は死罪でしょ」

「そんな事があるか!私は銀級の商人でこの区画を支配しているのだ!!」

「はいはい、シャープさんから契約内容も聞いてるわよ、私たちが目撃した以上アンタはもう銀級の商人でもなければ権力を持ってるわけじゃないの、稼いだお金もぜーんぶ没収されてこの街の為に使われるわ、ありがとうね」


ほいっと軽いエコノさんの声が聞こえたかと思うとダイグさんが小さく悲鳴をあげてそのあとは何も言わなくなってしまいました


「ああ大丈夫、生かしてるわよ。アクアちゃんは大丈夫?怖かったわよね?」


布が解かれると優しく笑みを浮かべるエコノさんの姿が……顔に返り血が付いてるのです

しかし恐怖から解放された私はほんの少しだけ泣いてしまいエコノさんにちょっとだけ抱きつきます


「あ……確かにちょっと可愛いかも……」

「なんなのです?」

「いやなんでもないわ」


少し待ってるとセイワさんもお店から伸びている男の人二人を引きずってやってきました

ダイグさんと合わせて5人の男の人を縄で縛って置きます

商人ギルドの方もセイワさんが呼びに行って一件落着なのです

悪人を中々書くことが出来ないので色々悩んで結果今の形になってしまいました

悪人というよりは愚か者という感じなのでもっと悪悪したキャラクターを出せればなと思っています

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