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11話 後悔と今とこれからと

googleドキュメント上に保管していて普段は大体8~10ページまでは書いちゃうぞ!って感じで無理やり書いていたのですが短くなっちゃうようなお話の時は短くするのも良いんじゃないかとテストで短めです

今後は執筆がノッてるときとそうじゃないときでお話の長さが変わるかもしれません

あれからシャープさんは元気がありません

私の前では元気でいようとしているみたいですけど、少しでも一人になると色々考えてしまうようです





「モリスは……アタシのパートナーだったんだよ公私共にね」


重い空気のまま食事を終えてしまった後エコノさん達は後は任せると帰っていきました、商会に帰って来た私にシャープさんはポツポツと話し始めました


「料理が上手で優しい奴で、アタシが迫っても結婚するまではアタシに手を出さない!って顔を真っ赤にして逃げるような奴でさ」


そんなモリスさんが大事な取り引きを前に商品を持ち逃げしてしまったと聞かされた時、護衛を依頼していた鉄級の冒険者の方達から馬車が出発していたと聞いたときにシャープさんは最初は信じられずモリスさんが戻ってきたときに商会が無くなってたら困るからと持ち得る全てを使って二人でなら再建できる状態にしていたそうです

それが数日、数週間と経つ内に本当に逃げられたんだと実感してしまいお酒に溺れていた……


「知りたくなかったよ……」

「そんな……だってモリスさんはシャープさんを裏切ってなかったんですよ!!きっと事故か事件に!!」

「もし仮にそうだとしても!!もう……数ヵ月たったんだ、死んじゃってるよ……アタシが商会を守ってる間にね」


何も言えないのです


「アタシが商会なんて守ってないで直ぐに捜索隊を出してたら?きっと帰ってくると思い込みながらも護衛も連れずに出発したって事実を怪しんでもっと調べてたら?」


それは後悔なのです、それももう取り返しのつかない

行方不明になった数ヵ月を取り返すことは出来ません、モリスさんはきっと亡くなっているでしょう


それをシャープさんは一人で背負おうとしています


「これなら裏切られてた方がずっとマシだった……」


逃げるようにシャープさんは自分に部屋に入っていってしまいました


翌日は昨日はごめんよ、ちょっとお酒も入ってブルーになっちゃってたよ!とシャープさんが珍しく朝早くに顔を洗いに来ました


「モリスのことは良いんだ、こんな世の中だからね魔物に襲われて死ぬことだってあるし割りきってくよ」


さあ仕事をしないとね!とまるで栄養ドリンクを飲んだみたいに元気なシャープさんは目の周りが真っ赤に腫れています

それに昨日はお酒を頼んでなかったじゃないですか



それから数日経ちましたがシャープさんはずっとそんな調子です

夜に啜り泣く声を聞いたのも一回や二回ではないのです、そんな状態でお仕事なんてしたくありません


「シャープさん、明日はお休みがほしいのです」

「うん?アクアちゃんがお休みが欲しいなんて珍しいね?うん、明日は予定もないから大丈夫だよ、栄養ドリンクだけはこっちで売っておくさ」


こういう時シャープさんだったら自分も休むはずなのです、まだ短い間ではありますがそれでも十分に理解してきたつもりなのです

まずはモリスさんがどうして一人で出発したのかを調べないといけません




「というわけでまずはイネスさんに聞きにきました」

「アクアちゃんは良い子ね、モリスがシャープと結婚するというのは私も知ってたわよ、当人同士でも良くそんな事言ってたし」


宿屋に向かうと冒険者の人達が気さくに挨拶をしてくれます、私がお洗濯をしているのを知っている人達でアクアちゃん無しじゃ生きれない体になったとか言ってお店のご飯を少しずつくれました


「モリスが裏切ってなかったねぇ……そう言われれば納得もできるわ、シャープがそれを負い目に思ってるって事よね、今度飲みに誘わなきゃ」

「そもそもモリスさんは何を運ぼうとしてたんです?」

「ちょっと分からないわね……相当高価で他人には漏らせないような品だとは聞いてたわ、賠償で当時のシャープ商会がスッカラカンになるくらいだもの」



次は眼鏡のお姉さんに聞きに行きます、前にシャープさんと話していたときに街のことに詳しかったそうなのです


「あらアクアさん、どうしました?」

「シャープ商会について聞きたいのです、前は商会が潰れることを把握して無かったと聞いてましたよね」

「そうですね、しかしそれはおかしいとは思っています、あの時は無駄な混乱を避けるために話しを切りましたが……少し良いでしょうか?案内所の中へ」


眼鏡のお姉さんが案内所の中にある一室へ通してくれました

私はシャープさんがモリスさんに裏切られていたと思っていたこと、実は事件や事故に巻き込まれたんじゃないかということをお姉さんに伝えます


「当時モリスさんは予定されてた護衛の冒険者さん達も連れずに馬車で荷物ごと行方不明になっています、馬車も帰ってこなかったそうです」

「実は私もそれについて調べていました、モリスさんが商品を持ち逃げするにしても外を護衛も付けずに馬車で抜けるのはリスクが高すぎます、モリスさんはきっと本当に護衛をつけていたのでしょう、馬車を貸し出している者が4人の人間が同乗したと証言しています」

「実はモリスさんが別に雇っていた冒険者とか?」


その線で行けばモリスさんは現在も生きていて無事に荷物を盗み出せたということになります、それはそれで許せませんが……


「いえ、この街で同時期に行方不明になった4人の冒険者はいません」

「冒険者じゃない人達なのです?」

「等級票を持っていた元冒険者という可能性があります、アクアさんは思い出したくないかもしれませんが先日ダイグに雇われていた男たちがそういった人間です」

「だから自分の事を鉄級だって言ってたんですね」


なにか引っかかるのです……なんでしょうか…?

少し考えても答えは出ませんでした、眼鏡のお姉さんは続けます


「私はこの件についてはモリスさんも被害者だと思っています、それも組織的な犯行に巻き込まれたかと」

「!?」

「モリスさんは冒険者を騙る4人を乗せて早めに出発してしまったのではないでしょうか?彼とは何度か取引をしたことがあります、決められた時間よりも早く到着して余裕を持つタイプでした」


だとしたらどうしてモリスさんやシャープさんが標的にならないといけなかったんでしょうか?街の中から盗賊まがいなことをするのはリスクが高すぎます


「合わせて上への報告の中でシャープ商会についてを揉み消したものがいる可能性があります、シャープ様クラスの商人のミスを街側で把握できてないのには大きな違和感を覚えます、力及ばず申し訳ないのですがその者が誰かまでは掴めていませんが」

「いえ、調べていただいてありがとうございます!」


心強い方が味方になってくれているのです

しかしそうなると街のどこかに今回の事件の黒幕がいるということになってしまいます

そしてモリスさんの馬車を狙うという事は


「シャープ商会を潰すのが目的だったのか、荷物の方が狙いだった?」





アルケミ屋に帰るとシャープさんが受付でぼーっとしていました

眼鏡のお姉さんと私がシャープさんに今回の件について伝えると、目にほんの少しだけいつものシャープさんが戻ってきたように見えます


「なるほどね……ハメられたって可能性もあったわけかい」

「恐らくは……シャープ様、貴女に商人としての矜持があるのを承知で伺わせていただきたいのですのが、取引されていた品は一体なんなのでしょうか?」

「取引先が秘密にしてくれと言ってきたからには商会としては答えられないんだがね……ま、商会もないわけだし無効ってことでいいか取引してたのは龍眼、とは言っても封印されいるものだけどね」


龍眼?


「龍眼!?まさか!」

「上級中位の龍から取れたといわれるマジモンの国宝クラスの素材だよ、今でいえば金級の冒険者の竜王が持っている装備を超える龍の力を持ってるとされているね、封印が強力すぎて解けないからってんで使い物にはならないみたいだからこそ手に入れられたんだけどね」


鍵穴のない絶対に壊れない金庫に入った大量のお金を金庫代で買ったようなものだそうですが、持ち主の貴族の方は家宝だというので手放さずかなりの時間と労力を割いてやっとのことで買うことが出来たんだとか


上級中位と言えば山より大きくその進路上にある物は全てを諦めなければならないと言われているベヒモスなんかがおとぎ話では有名なのです、ここ数十年では上級中位以上の魔物は確認すらされていません


「なるほど……狙われる理由というのも現実味を帯びてきましたね、それほどの品ですと取引が済めばシャープ様は近い内に金級の商人になっていたのでは?」

「成功してればそうだろうね、いや……成功させる気がないからこそアタシに取引が回ってきたのかもしれないね」


自嘲気味に笑うシャープさんはきっとそんな取引に気づけずモリスさんを送り出してしまったことを後悔しているのでしょう


「取引相手はどちらですか?」

「王都の金級商人さ、竜王を自分の私兵に取り込む為に龍眼を贈るつもりだって聞いたよ」


竜王といえば前にセイワさん達が教えてくれた金級の冒険者さんなのです

全身を竜属の素材で作られた装備で身を固めているそうなのでそれよりも強力な龍の素材は確かに贈り物としては最上の品という事になるかもしれません


「あの竜王が応じるとは思えませんが………王都の金級と言うとヴアルガンド様ですか」

「武と知を重んじる人格者ではあるね、アタシに大しても損害分しか要求してこなかったし」

「ヴアルガンド様なら支払いを渋りシャープ様を罠に嵌めたということはないでしょう、となると外部犯ですか」


シャープさんが気まずそうに頬をかきます


「アタシみたいな成り上がりの商人を疎ましく思う奴なんか上の方にかなりいるからねぇ、大なり小なり嫌がらせは受けてたんだよ、特にダイグなんて」

「っ!?気づいたのです!!」


気づきました!!思い出しました!!そうですよダイグさんです、正確にはダイグさんの所にいた4人なのです


「私が攫われそうになったときに一人が何か言いかけてたのです、途中で止められてましたけどダイグさんとシャープ商会関係なのです」

「うーん、そりゃ結構色々やられてたからね」


シャープさんの中でダイグさんの評価はかなり低く、前回も私が襲われるところまでは考えていなかったそうです

それはダイグさんの中にある悪意を正確に掴めていないのが原因かもしれません


「違うのです、ダイグさんの所にいた人達は元鉄級の冒険者で4人組でした多分等級票も持ってるはずなのです、それにダイグさんは嫌がらせ程度で済ますような人ではないのです」

「アクアちゃんにはそう見えるかもしれないんだけどアタシにはどうにも分からなくてね、ダイグは弱い立場には高圧的だし嫌がらせはするけど人の命まで手を出すような奴じゃなかったんだよ」


そうは言っても現実にはダイグさんは私やシャープさんを攫って酷いことをする気でしたし現にお店のドアを壊してでも私を捕まえてきました

眼鏡のお姉さんが考え込みます、小さく何度かブツブツと呟いて状況を整理しているようです


「変わってしまったのではないでしょうか?状況から察するに街への報告を揉み消すことができ、地下牢から跡形もなくダイグ様……いえダイグを救出、もしくは始末可能な程の実力者を抱えるほどの者の庇護下にあった……若しくは龍眼を盗み出すことがその庇護の条件だったとか、今回ダイグの屋敷の一室が焼失したことについても恐らくはその者とのやり取りの記録を消すために……」


突拍子もない話かもしれませんが、まずはそういった線から調べてみるべきではないでしょうかと眼鏡のお姉さんは一度戻って再調査を部下に指示してきますとお店を出て行ってしまいました


「……あれ?眼鏡のお姉さんって職業案内所の方なのに部下がいるんですか?」

「あ~……うん、それはまだ知らなくていいと思うよ因みに名前はフィリアだからね、アクアちゃんずっと眼鏡のお姉さんって呼んでたんだね」

「お名前を聞くタイミングが中々なくて……」


ケラケラとシャープさんは笑います、普段通りの笑い声で私はこんなことでも嬉しくて…ちょっと泣きました

シャープさんが私の頭を何度か撫でます


「やっぱり心配かけちゃってたか、ごめんねこんなに動いてもらっちゃって」

「シャープさんにはずっと元気でいてほしいのです」

「お?じゃあ復讐心で元気になっちゃおうか?相手はモリスの仇だからね」

「!?」


今更自分のやってしまった事の大きさに気付いてしまいました

モリスさんが意図的に殺害されてしまったのであれば当然シャープさんはその相手に対して復讐心を抱いてしまいます

そんなことも気付かず私は……


考えこんでしまった沈黙にまたケラケラとシャープさんが笑い転げました


「うそうそ!!全くもお、アクアちゃんは可愛いね……大丈夫だよ、ちょっと時間は掛かったけど整理ついてたんだ」


髪の毛をぐしゃぐしゃにされます


「やれることをやりきれなかったんじゃないかってずっと悩んでたんだよ、捜索隊をすぐに出さなかったこと、モリスを信じなかったこと、護衛の確認をしっかりしなかったこと、出発を見送らなかったこと、依頼を受けてしまったこと……まあいっぱいあるけどさ」


自分を責める為でしかありません

そんなことはシャープさんが一番知っていることなのです


「取りあえず、全部黒幕とやらのせいにしよう!当然復讐心はあるさ、愛するモリスを殺したんであればね、仮にモリスが本当に盗みを働いて今も生きてるならモリスの顔面でスープが飲めるくらいベコベコにしてやるさ!!当然黒幕も同じようにしてやるよ!!」

「それはモリスさんが死んじゃうのです……」

「アタシの中ではもう死んでるからセーフ!!」


それは全然セーフではないのです


「それにアクアちゃんもいるし今のアタシにはアルケミ屋だってある、復讐とか後悔でこの二つを疎かにしちゃうなんてモリスが好きだった商人としてのシャープが死んじまうよ……」

「もういっそシャープ商会よりも大きくしちゃいましょう!!仮にモリスさんが生きてたらシャープさんの名前を広めて後悔させちゃえばいいのです」

『おー!!』


二人で冷庫からシュワシュワ栄養ドリンクを取り出して乾杯して一気に飲み干しました、頑張る為にはこれが一番なのです


本当はこの流れの話で数話~終盤(何も決められてない)まで書く可能性があったのですが

それは洗濯とは関係ないな…ってなったので一旦シャープ編は畳みます、時期が来たらお話を進めるのです

9話で描写し忘れたシーンがあるのですが、作業空間を割られた場合は抵抗が一切できないほどの脱力感に襲われます、今後もちょこちょこ出す設定なので忘れないようにします……

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