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10話 一件落着ではないのです

そろそろ色々キャラクターを掘り下げていかなきゃいけないなと思っています

固有名詞は管理しきれなくなるので少なくしていきたいという気持ちの表れが透けて見えますがそろそろ魔物用の設定リストを書いていく必要が出てきました

「ぜんっぜん一件落着じゃないよっ!!ごめんよアクアちゃん!怖かったよね!?アタシも考えが甘かったよ……」

「うぐ、ちょっと苦しいのです!」


街の人から噂を聞いて凄い勢いで帰って来たシャープさんは私に飛びつきました

運動が苦手なのにずっと走ってきたのでしょう、心臓はバクバクだし汗でびっしょりなのです


「シャープさんが二人に色々伝えてくれて助かったのです、本当に危ないところでした」

「本当にごめんよ、ダイグとはいえあんな実力行使に出るとは思わなかったよ……二人にはしばらく護衛でも頼もうかと思っててね、それで話をしてたんだ」


ダイグさん達を突き出した後、眼鏡のお姉さんや先日証人としてやって来たギルドの方がやってきて私にいくつかの質問と部屋の壊されたドアを確認して帰っていきました

ついでにお店の前の道路で爆発したように大きく陥没した道もダイグさんのせいって事になりました

街の法では間違いなく死刑になるそうです、財産を全て没収する前に賠償金としていくらかは私達へ渡されるとのこと


ごめんよ……ごめんよと謝り続けるシャープさんを押し退けて先ずは体を拭いて着替えてもらいましょう



二人で腰に手を当ててシュワシュワ栄養ドリンクをグビグビ飲みます、心身ともに疲労していましたが大分マシになりました


「落ち着いたのです?」

「あー……ありがとね、落ち着いたよそれにしても本当に理解できないね、手段が雑な上に性急過ぎるアタシが知ってるダイグならもっとネチネチとした手段を取るはずなんだよ」


流石に毎回ああやって人を拐ったり目撃者を攻撃したりしてたらどれだけの権力があっても隠しきることは出来ません


「相当焦るようなことがあった…?」

「ダイグのことだからやっちゃいけない商売をミスってミスを帳消しするために栄養ドリンク……というよりはアクアちゃんを狙った感じかな……いや無理があるね」


ダイグさんはあんなのでも第7地区の多くの実権を握っていたそうで、今回のようなことがなければまず関わることもないんだそうです

そのダイグさんがここまでのリスクを下準備もろくにせず犯すのはまず無いとのこと


「あんなのでもやっていけるのは下が優秀だからだね、事前準備なんてあったら間違いなくそこら辺が計画を立てるはずだよ」

「謎なのです」

「意外にもアクアちゃんの事が気に入っててモノにしようとしたとか?」

「最悪なのです!?」






ダイグは地下牢へ囚われていた

窓はなく入り口が重厚な金属で出来た数人がかりで開けることができる扉のみの堅牢な地下牢だ

外に影響力を持つ犯罪者を捕らえ、内部の協力者によるの脱走を防ぐため扉の外でのみ看守が待機している


第7地区を実質的に支配していた男は質素な布と剥き出しの厠があるだけの空間で苛立ちを隠さずにいた


特に最後の最後で邪魔をしてきた銅級程度の冒険者二人と鉄級だと言って自分に取り入ってきた愚か者4人には溶け出した鉄を飲ませてグズグズの肉塊にしてやりたい気持ちだった

4人は自分と同じく死刑を宣告されている、ベラベラと余計なことも喋っていたからには当然の結果だ


しかし自分は違う


「選ばれた存在だぞ……このくらいの問題なぞ」

「そうだな、選ばれた存在ということにしていた」

「!!やっと来たか、遅かったではないか」


牢の中に気配が増える、影から音もなく現れた黒衣に身を包んだ男が現れたのを確認しダイグは安堵した

この男は自分が所属する組織の小間使いのようなもので、こうした秘密の連絡を取る際に現れるので驚くようなことはない


「助けに来たのだろう、よしよし……準備を整え次第あいつ等には地獄を見せてやる」

「ふむ、そうするといいさ。まあ貴様は始末させてもらうが」

「…?何をい」


ダイグの意識はそこで途絶え、そして再度目覚めることはなかった


影という影が頭と体の離れたダイグの体に纏わりつき貪り削り取り血の一滴も残さぬように脈動を続けるのを男は特に気にするような素振りも見せないでいた


「……不味いか?肉付きだけは良いと思ったんだがな」


影がほんの少しだけ盛り上がる


「許可は得ている、一族が築き上げてきたものを食い潰しながら利益を出していることにも気付かずそれを己の実力と盲信していただけで商人としては鉄級でもお釣りがくる。前回の件で一時的に座に据えていただけに過ぎないさ、遅かれ早かれ始末する予定だったらしい」


ダイグだったものが徐々に小さくなりその全てが影の中に沈んでいくように消えていく


「処刑される前に余計な事を喋られても困るからな、帰るぞ」








「ダイグが消えたぁ!?」

「そうです、特殊な魔法で外部へ逃げ出したのではないかと考えられます」


先日対応してくれた商人ギルドのお兄さんがお昼休憩中にやってくると処刑のため投獄されていたダイグさんが脱走したと伝えてくれました


「脱走たってそんなことできるもんかい?」

「私も詳細までは……しかし看守の報告によるとかなり濃い血の臭いが……それとダイグの屋敷の一室が焼失しています、消されたのではないかという話も出ていますね」


色々と首を突っ込んではいけない話題が出ています

処刑される予定ではあったとは言え捕らえられた街の有力者が人知れず消えているというのは中々に危険な匂いがします


「同時に捕らえていた4人については死刑を一度取り止めてダイグが関わっていた違法行為について取り調べを行う事になりました、情報提供次第では死刑ではなくなるそうです」


必要事項を伝えてお兄さんは帰っていきました、念のため毎日数人の衛兵さんがお店の周囲を見回りをしてくれるそうです


それは兎も角として営業開始しているわけですが、昨日は色々あってお休みしちゃったこともあり心配で見にきた冒険者の方たちやイネスさんなど、今まで利用してくれていた人達がいっぱい来てくれています


ダイグさんの件はかなり最悪でしたが特に第7地区の人達はお互いに外から来たもの同士ということもあって人同士の壁があまりありません


「アクアちゃんの人柄もあるんじゃないかな、可愛いし、洗濯が得意だし」


アタシしか知らないだろうけど料理も家事も得意なんだよねこの娘は!とシャープさんがバタバタしています


「栄養ドリンクの材料も売れるようになって市場の連中も喜んでるよ、他の錬金術師達もアクアちゃんの真似をしようとしてるみたいでさ」

「おー!」

「本当は街に申請して販売を独占するのも良いんだけどね、まずはアクアちゃん以外にも作れる錬金術師が出てこないかなって様子見中」

「雇いたいんですね?」

「雇いたーい!今回みたいな事になったのも結局はウチがダイグみたいなのに舐められてたからなんだよね、力を付けるために生産量と販売範囲を増やすにはやっぱりアクアちゃんみたいな錬金術師が必要だね」


錬金術師が作業空間を作ったり作業したりするのには力を使うため日毎に作れる作業空間の数は決まっています、毎日の作成量を大幅に増やすと洗濯出来る回数が減ってしまうのです

最近の売上は栄養ドリンクに傾いているようですが私としてはお洗濯で直接お客さんに喜んでもらうのもいっぱいやりたいので私以外の人でも作れそうな人が居たらいいのです


「今は錬金術ギルドに掛け合って同じような石級の人たちの情報を集めてるんだけど、やっぱり石級ともなると辞めちゃってる人か本当に才能がない人が大多数でね、難航中だよ」

「お洗濯の方も出来る人が居ればいいんですけど」


お洗濯の場合は人が一人一人来てくれた場合はその度に作業空間を展開しないといけないため効率的とは言えません


「イネスのところみたいにまとめ洗いを店頭でやるのも良いかもね、複数の客の服を集めておいて次の日取りに来るとかね」

「おーそれは良い案だと思うのです、冒険者の方とかは出掛ける前に預けてくれるかもしれません」


イネスさんの宿でやってる、いや本当はそういうサービスではないんですけど服をまとめて洗うのがこっちでも出来たら便利なのです


「その場合は数には関わらず400とかにするかね、預り期間は数日とかな……まあずっと預かる事も出来なくもないけどね」

「お店……結構余ってるスペースありますもんね……」

「元々は住み込みで何人も働くようなタイプの建物だからねぇ」


何ならお客さんが持ってきた洗濯物を数とシャープさんが売りに出してた古服は良い勝負なのです




それから数日してお店も普段の忙しさを取り戻しました、たまに物凄く高価そうな服だったりハンカチをお店の中で綺麗にしたりしますがやっぱりお値段は教えて貰えませんでした

もう手触りから高貴さを感じるようなやつでした


「アクアー!見ろよ!!」


そんなある日セイワさんとエコノさんがやって来て嬉しそうに首に掛けた鉄の等級票を見せてくれました


「おめでとうなのです!あれ?でもダンジョンに潜ったりしないと上がらないんじゃ……?」

「それがね、前に倒した4人が本当に元鉄級だって事でそれを倒せるなら鉄級だって話しになったのよ、あと結構色々ヤバイことをやってたみたいでね、報奨金もいっぱい貰えたわ」


ガシャガシャ音を立てた大きく膨らんだ袋をエコノさんが出します

一方でセイワさんが腰から下げてる同じ袋は枯れ果てたお野菜みたいにしなしなと萎んでいます

視線に気付いたのかセイワさんが嬉しそうにしています


「ついに買っちまったんだセイバータイガーの素材!前に買おうとしたら予想以上に高くて手が出せなかったけどな」

「今回の件でやっと武器作りが出来るくらいになってよ、今は鍛冶屋に出してんだ」


セイワさんがいつも腰に下げてる剣は鍛冶屋から借りているのか別のものになっています

新しい武器を心待ちにしているセイワさんは私より年上ですが子供みたいにウキウキを周囲に振り撒いていました


洗濯にやってきた冒険者の方たちもそんなセイワさんに一声掛けていきます

同じくセイバータイガーの装備を狙っていた人や興味を持ってる人は結構いたみたいで完成したら見せてほしいとか一緒に冒険に行こうとかそんな感じのやり取りを何度かしていました


「新しい相棒が出来たら次は銀級を目指したいよな」

「それは調子に乗りすぎ、前に銀級の戦闘を見たばっかでしょ、あのレベルはそうそうなれないわよ」


セイバータイガーとの戦闘はとても凄かったのです、エコノさんが言うにはあのレベルになるにはもう数年は地道に修行をするなり、強力な魔道具なりが必要だそうです


「パーティも増やしたいよな!俺たちも5人くらい揃えばパーティ等級で言えば銀はいけそうな気がする」

「……私は2人でも良いと思うけどね」


エコノさんの声が小さいのです

私も声を小さくして女子会話の時間なのです


「でも冒険者は男の人が多いし良いんじゃないのです?」

「……前にパーティ募集したのよ」


街に着いてちょっとしてからパーティ募集をしていたんだそうです、慣れない狩場や街の事もあり2人だけで活動していくのは不安があったんだとか

当時は石級ではあったものの募集は銅級以上で掛けていたんだそうです


「その時の募集で3人来たのよ……女子が」

「え?まさかセイワさん狙いで?」

「一人を除いてはそのまさか、アイツ顔はソコソコ良いし動きも悪くないから目を付けられてたみたいで脈のなさそうな私くらいなら蹴落とせそうと思ったらしく加入初日から積極的に動いてたわ」


まさかのハーレム状態なのです、セイワさんは確かにお店に来る冒険者さん達と比べると整った顔をしていますがそんなに食いつきが良かったと聞くとちょっと不思議ではあります

でも今は二人で活動してるってことは


「セイワはね、無自覚に私の話ばっかりするらしいわよ……」

「へへ、嬉しそうですね!」


乙女の顔なのです!!この人乙女の顔をしてるのですよ!!

こんな顔を他の人に見せちゃいけないのです


「そ、そんなことないわよ!それでこりゃアカンわってなったのか潮が引くように解散ってなったわけ」

「あれ?もう一人はどうしたのです?」

「もう一人はね、私狙いだったのよ……夜這い掛けに来たから杖でボコボコにしてやったわ」

「……」


世界は広いのです…

というかその頃から等級が上の冒険者さんを倒せるくらいには強かったんですね


そんな事があり疲れちゃったので今は2人で活動中とのことですがお二人はハイアールでもかなりのハイペースで鉄級に上がっているので勧誘も多いんだとか

鉄級でも名のあるパーティに誘われたこともあるそうですがそれは断ったそうです


「俺はリーダーがしたい!!」

「私も私の言う事を聞く人がリーダーじゃないとね」


エコノさんの場合はセイワさんがリーダーじゃないと嫌だという意味なのです

というわけで3人までのフリーの冒険者を募集中とのことなのです





今日は狩りにも出かけないとのことでエコノさんとセイワさんと他愛もない話をしていました、お客さんもこの二人を良く見掛けているのでそろそろ従業員だと思われているかもしれません


しばらくするとシャープさんが帰ってきました


「ただいまー、お!お二人さん丁度いいところに居たね!この前のお礼もあるしこれからご飯でも行こうと誘うつもりだったんだよ、ご馳走するよー」

「アクアちゃんのご飯でも良いんですよ、美味しいって良く聞きますし」


おー、そういうことならちょっと良い食材を使っちゃいますよ!

市場のお肉売ってるおじさんが最近美味しいお肉の仕入れルートを手に入れたそうなのです

ちょっと高いのですがこういう日くらい良いと思うのです


「いや!まだ二人にはアクアちゃんの手料理は早い!!」

「横暴だ!!」

「独占禁止ですよ!!」

「というのも既に予約してるからね……」

『あっはい』


予約してるのならしょうがないのです





お店は第5地区にありました、シャープさんが銀級だった時によく立ち寄っていたお店だそうで、連日通っていたんだそうです

最近は私が料理を作っていたのと忙しさもあって数か月ぶりの来客となります


お店は外は第5地区らしく石造りの建物ですが内装は木材を使った暖かい空間になってました、人が多く出入りしているのか床は黒くなっています

席は私たちが座る分以外は埋まっていてかなりの賑わっています


給仕をしていた女性がこちらに気付いてくれました


「やっほ、お店を予約させてもらって悪かったね」

「シャープさんの復活祝いですよー!マスターも喜んでます」


給仕服を身にまとった小柄な女性が案内してくれた席に4人で座るとメニューを渡されます

お値段は確かに結構しますが高すぎるという事もないです、たまに贅沢する分には丁度いいかなってくらいです


「おー!レイジタートルのスープ!!」

「サーベルタイガーのステーキも……中級の魔物の肉をハイアールで揃えるのは大変でしょうね」

「ウチは色んな所の貿易商とやり取りさせてもらってます、レイジタートルは最近王都で狩られたものでほどよく柔らかくってオススメです」

「メニューも仕入れ状況によって変わるから飽きが来なくていいんだよ、マスターの料理の腕も確かだから新メニューでもガンガン頼めるし」


メニューにはハイアールでは出現しない魔物や食材を使った料理が多く並んでいます

ギガントボアの背肉の丸々煮込みなんて聞いたこともないものもあります


「ひゃー!美味そうなのしかねえよ!!エコノ、二人で色々頼んで分け合おうぜ」

「あら良い考えね、私はまず魚料理を頼もうかしら」

「レイジタートルのスープ!」


私は暴れ牛のビーフシチューを食べるのです


「マスターも最近シャープさんを見かけないって落ち込んでましたよ、美味しい美味しいって良く来てくれてたのに、モリスは忙しくて今日は来れないんですか?」

「いやー、商売失敗しちゃって色々忙しかったんだよ」

「あらあら、それは大変でしたね」


シャープさんは商会が潰れちゃったこととか、モリスさんが逃げてしまった事などを簡単に話しました

給仕のお姉さんは首を傾げます、顔も大分険しいのです


「え?モリスが逃げるっていうのはちょっと考えにくいんですけど…」

「現に逃げてるからねぇ……荷物と一緒に借りた馬車まで持って」


給仕のお姉さんはいやいやと手を振ります

本当にモリスさんの事を信じているようです


「だってモリスはウチの店に来てはマスターに料理を教えて貰ってましたよ、シャープさんがここのお店の味を気に入ってから、暇さえあれば毎日毎日……なんでだと思います?」

「アイツは料理が好きだったからね……研究の為とか」

「違いますよ、モリスは貴女と結婚したら毎日料理を作らなきゃだから気に入った味付けを教えてほしいってずっと言ってました」

「え……いや、確かに結婚の話はあったよ、でもタイミング的にアタシを油断させる為の嘘としか」


動揺、シャープさんに間違いの無い動揺が走ります

私たちの知らない、裏切られてずっと封印していた商会時代のシャープさんとモリスさんの記憶がシャープさんの中でよみがえっているのが表情から見て分かります


「結婚指輪も用意していました、その取引が成功して商会が盤石になったら結婚するんだって彼は言ってたんですよ、あれは絶対に嘘なんかじゃありません」


こんな時、私たちはどうしたらいいのでしょう?


夜勤と深夜まで働く勤務が続くと中々時間が取れないタイプです…

感想とレビューありがとうございました、正直ゲームしてた期間に届いていたので怒られるか…?って恐る恐る開きました

書いてる途中で詰まって勤務が重なると投稿間隔が開いてしまうので少し短くして短いペースで上げられるようにするのもちょっと考えています

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