表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ヒヨコ電車

作者: ジパング大柴

 ドアが閉まる直前でギリギリ、電車に飛び乗った。心臓が脈打ち、息が上がっている。視点も定まらない。とりあえず、横に並ぶ席の前のスペースに立つ。

 だんだん調子が元に戻っていくと同時に、信じられない光景が目の前にあることを理解した。

 なんと自分の前の席に座っている乗客が、ヒヨコなのだ。数センチのヒヨコが人間みたいにちょこんと座って、他のヒヨコとぴよぴよしゃべっているのだ。口が開いたまま閉じれない。僕は狼狽した。

 周りを見回すと、車両の乗客全員がヒヨコだった。人混みならぬ、ヒヨ混み。隣の車両も確認したかったけど、さすがに怖くてできなかった。

 それも人間がこの車両に、僕だけしかいないのがわかると背筋にヒヤッとしたものが通った。

 (もしかして、悪い夢でも見ているんじゃないか)

 僕は、夢であってほしいと念じながら頬をつねったが、普通に痛かった。

 頭の中が、目の前のヒヨコ達に対するいろんな推察で溢れる。

 (妖怪?幽霊?化け物?UMA?宇宙人の侵略?ヒヨコの進化?)

 しかし、必死に考えるのも束の間だった。よく見ると、周りのヒヨコ達が現代人にそっくりなのに気づいた。

 サイズが合わないウォークマンで音楽を聴くヒヨコ、地面に新聞を敷いて読む親父みたいなヒヨコ、小声で電話してペコペコ謝っているヒヨコ、マスクしてるヒヨコ、ゲームに夢中なヒヨっ子と母親らしきヒヨコ。なんだか面白い。

 それも広告までヒヨコでカバーされていた。とにかく、ヒヨコ尽くし。

 目の前にいるヒヨコも、よく見たら可愛い。メスのヒヨコなのか、少し甲高い鳴き声で友達と会話して、ピヨピヨ笑いあっているのがわかる。目もクリクリしてて可愛いし、ふわふわ…。

 僕はどうしてもヒヨコの毛を撫でたくてたまらなくなり、手を伸ばすと、ヒヨコが僕を急にジロリと見て人間の言葉で大声で叫んだ。

 「この人、痴漢よ!」

 電車のドアが開く。駅に着いたのだ。おなじみの発車メロディーが鳴り始める。僕はハッとして、伸ばした手を引き戻す。

 すると、隣の車両から、人間そっくりな姿をした“鷹人間”が勇ましくやってきて、僕の制服の背中の襟をつまんで、電車から僕を放り投げた。顔に羽がソフトに当たる。駅のホームに尻餅をついた。

 ハッとすると、その時にはもうヒヨコ電車はいなかった。

 隣にいた電車を待っているサラリーマンが、狐につままれたような顔でこっちを見ていた。


ヒヨコ、可愛いですよね。愛くるしいです。なんとなく思いついたので書いてみました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ヒヨコかわいいですよね!動物の赤ちゃんはかわいいですけど、ヒヨコは大人になると全く別物になりますね。笑 面白かったです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ