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パラレヌ・ワールド  作者: 全州明
一章 「世界征服はホドホドに」
9/58

その八

「それよか、ねぇねぇ見てよコレ!」

「うわっ、なんですか、それ」

 ぐいと突き出された縦長の紙を避けながら聞く。

「ラブレターかな? ね、ラブレターかなコレ。モテモテだねワタシ」

 見返せばそれは封筒だった。中央にはデカデカと、『果たし状』と書かれている。

 達筆の殴り書きだった。

「違うと思いますよ」

 しかも、筆の手書きである。よほど古風で上品な人がお怒りなんだろうか。

「……うぅん、なにごとですか?」

 隣で寝ていた古都さんが、眉をひそめて身を起こす。

「あぁ、すいません。起こしちゃいましたか」

「いえ、そろそろ眠り疲れましたし、いいんですけど。それで、――――ほぉ!」

 (かか)げられた『果たし状』の文字に、なぜか手を合わせてうっとりとする古都さん。

「ラブレター、ですね?」

 今時のラブレターは、照れ隠しに『果たし状』と殴り書きするのが流行りなんだろうか。

 ……なわけあるか。

「いえ、多分、普通に『果たし状』なんだと思いますよ」

「素敵! 青春、ですね」

「〝事件〟の間違いじゃないですかね」

「え、マジ? ホントに果たし状なのコレ」

「まぁ!」

 本気で驚いているようだ。大丈夫かなこの人たち。とくに、未だに恍惚(こうこつ)な目で見つめている古都さん。『果たし状』の意味、わかってるんだろうか。

「ということは、まだ中身読んでないんですか?」

「ううん。さっき読んだよ」

「あぁ、じゃあ、その内容がラブレターっぽかったんですね?」

「なんか昼放課にプールへ来いって。で、……果たし合い? が、なんとかって」

「……完全に『果たし状』じゃないですか」

 プールはこの時間帯なら誰も使っていないはずだ。外から丸見えの体育館裏よりも、360度目隠しボードで覆われたプールを選んだのは賢い選択だろう。

「どんな人だろう? いい人だとイイネ」

「それはないと思いますよ」

 十中八九不良だろう。賢そうなので、仲間を引き連れているかもしれない。

「でしたら、……ふぁ。私が(うらな)って差し上げます」

「え?」

 言うが早いか、古都さんは止まらないあくびをおさえつつ、机に小さな赤いクッションを敷き、金色のティアラをおでこに装着すると、おもむろに水晶玉を取り出した。

「どっから出したんですかそれ」

 水晶玉は、古都さんの手のひらくらいあった。

「へ? うふふ、内緒です」

 唇に人差し指を当て、不敵に笑う古都さん。大人っぽい色気にハッとさせられる。

「ウラナイって? どうやるの?」

 トモカさんが机に身を乗り出して尋ねる。興味津々らしい。

「――――〝冥王(めいおう)審判(しんぱん)〟をします」

 突然飛び出した禍々(まがまが)しいワード。〝冥王の審判〟? ひょっとして〝星の力〟だろうか。

「おぉ! ソレって、アナタの〝星の力〟?」

「へ? いっ、いえ、ほ、〝星の力〟じゃありません。私の、超能力です!」

「……お、おう」

 微妙な表情になるトモカさん。さすがに察したようだ。

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