表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラレヌ・ワールド  作者: 全州明
一章 「世界征服はホドホドに」
7/58

その六

 ――――結局、誤解を解くのに三十分はかかった。犯人が僕じゃないと知った後も、ジュリさんの怒りはおさまらなかった。

「私は、この花畑を荒らしたやつを、絶対に許さないっ! コイツラに何の罪がある? ただ、咲いてるだけんじゃんか。生きようとしてるだけじゃんか! 何が悪いって言うんだよ。文句があるなら、――――アタシに言えよ!!」

 ジュリさんは、泣いていた。

 みんなで育てた花だからじゃない、一生懸命植えたからでもない。そんな的外れな想いじゃない。茶髪は、どう見ても地毛だ。瞳も同じ色をしている。そしてなにより、鼻をつく、この燃えたガソリンのような独特の匂い。

 間違いない、ジュリさんは、〝茶色の木星人〟だ。〝褐色(かっしょく)の木星人〟とも称される彼女たちは、澄んだ水を嫌い、植物を愛する。植物に宿る命を、人と同等に扱うのだ。それを笑う権利は、誰にもない。何より愛する大切なものが、誰にだってあるのだ。

「……さっきは悪かったな」

「い、いえ……」

「やったのは多分、地球人なんだ」

「それで僕を疑ってたんですね?」

「あぁ。けど、マミは隕石かなんかだって言うし、誰かさんは〝黒い異星人〟だって言うし」

「えへへ」

 横目で睨まれたトモカさんは、恥ずかしそうに笑う。

「〝黒い異星人〟? それって、ちょうどこの辺りに現れたっていう――――」

「――――知ってるのか!?」

「うわっ! は、はい。人づて、ですけど……」

 飛びついてくるジュリさんから控え目に一歩身を引く。そうでもしないとまともに目を合わせられないような距離だった。

「なんでも、母星から力を剥奪されて、宇宙空間をさまよってたんだとかなんとかって。まぁ、ゲンタの言うことなんで、どこまで信じていいのやら」

「ゲンタ? ひょっとしてソイツ、月星人か?」

「え、ゲンタを知ってるんですか?」

「あぁ。確かそんなやつが、同学年にいたな」

「あれ、学生なんですか?」

「カズマ、いくつだと思ってたの?」

 トモカさんが顔を覗き込んでくる。高卒の二十歳(はたち)に見えたとは、口が裂けても言えなかった。

「それよか、どうせお前も学校あるんだろ? 早いとこ帰れよ」

 ジュリさんは腰を浮かせると、別れを告げて、一人で帰って行った。

 人口流星群は、知らぬ間に終わっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ