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パラレヌ・ワールド  作者: 羽川明
五章 「失われた色彩」
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その十

「……皆さん、お話なら後でいくらでもできますわ。今は急ぎましょう!」

 先行して走り出す魚々乃女さん。気づいた二人は立ち止まったままその場で身構える。

 その理由はすぐに分かった。

「来ますっ!!」

 かけ声とともに再度半透明の球を展開させる古都さん。それはバリアのように半円状に広がり、僕ら三人の前で盾のごとく立ちふさがる。実際、そういう役割なんだろう。

 金属のコップに入れたビー玉を掻き回すかのような、くぐもった金属音が空気を震わせる。豪雨でかすんだ山道の向こうから、ぼんやりと光を放つツリガネ型のUFOが現れた。

 さきほどよりも速度が遅いものの、どっしりとした青銅色の装甲は見るからに丈夫そうだ。上部の小窓から飛び出した砲塔(キャノン)が火を吹く前に、魚々乃女さんが動いた。

 走りながら魚人化してウロコに覆われた右腕をぐんと下げ、脇に転がる大ぶりの石を水かきで(すく)い上げると、直後にバッと飛躍してUFOの砲塔(キャノン)に拾い上げた石を正面からぶつける。

 電撃をまとった爆炎が広がり、見る影もなく砕け散るUFO。飛び散る破片を紫の盾が受け止めた。

「すごい……!」

 声を上げたのは僕だけだった。

「また来るよっ」

 トモカさんが言い終えるよりも先に、スズメバチに似た不穏な羽音が走る。

 暗い黄金(こがね)色に身を包んだくの字のブーメラン型UFOが、一瞬のうちに魚々乃女さんの頭上を抜け僕らへと迫る。機体下部が発光したかと思うと、黄色のエネルギー弾が撃ち込まれた。

「下がってくださいっ!」

 古都さんの、悲鳴に近い金切り声。押し寄せる轟音と衝撃波に鼓膜がビリビリと震える。

 (ほとばし)る閃光が、咄嗟に閉じたまぶたの隙間から押し寄せてきた。

 うろたえるしかない僕の横で、トモカさんは吐き出したキャンディストローを口元で構える。息が吹き込まれると同時に、生まれた無数のシャボン玉が弾丸のごとく放たれる。

 それらはブーメラン型UFOの側面に当たっていくつもの風穴を開けた。

 制御を失ったUFOは大きく左にそれて墜落すると、爆発をともなって粉々に砕け散った。

 嵐の吹き荒れる薄闇の中で、トモカさんの横顔が燃え盛るUFOに照らし出される。誇らしげでもなんでもなく、そこには、いつも通りの眠たげな顔があった。

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