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パラレヌ・ワールド  作者: 全州明
一章 「世界征服はホドホドに」
5/58

その四

「……キレイだね」

「はい」

 光り輝く星の流れにしばし見入っていた僕だったが、自然と訪れた沈黙が、何となく気まずくなった。

「あの、トモカさん――――」

「――――トモカでいいよ、カズマ。敬語もさん付けも、何もいらない」

「じゃ、じゃあ、……トモカ」

「うん」

 トモカさんは、またしてもうなずくことなく声だけで返事をした。不思議な感覚だった。

「頂上まで行ってみない?」

「いいよ。キレイだもんね、あのお花畑」

「お花畑?」

 回れ右して登っていくトモカさんを追いかけ、その背中に問いかける。

「アレ、知らない? ナンカ、花屋で育ち過ぎちゃったやつを、捨てずに植えてるんだって」

「花屋って、あの『木犀(もくせい)()』ってお店ですか?」

「そうそう、おいしそうだよね」

 何言ってんだこの人。

「アァ、おなかすいた。ナンカ持ってない?」

「さっきクッキー食べたじゃないですか」

「えぇー、足りないよぉ。ねぇ、花でも草でもいいからさ」

 よっぽど空腹なのか、僕の服のすそを引っ張って駄々をこねだす。

「何にもないですよ」

「その箱は?」

 トモカさんが自転車のカゴを指さす。

「……望遠鏡ですけど」

「ボウエンキョウ!?」

 藍色の瞳が爛々(らんらん)と輝いた。

「いや食べるなよ。何勝手に開けようとしてんすか」

 アニメやマンガで珍味好きはよくいるけど、もはやその次元じゃなかった。シャボン玉のストローを口に含んでいただけのことはある。

「え、ダメ?」

「そりゃダメだろ」

 なんだかもう、この人相手に敬語を使うのも馬鹿らしくなってきた。

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