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パラレヌ・ワールド  作者: 全州明
一章 「世界征服はホドホドに」
3/58

その二

 ――――ふもとに着いた後も、ゲンタとの会話がまだ頭の中に残っていた。


『そいつ、髪も瞳も真っ黒なんだよ』

『は?』

 ふと顔を上げると、カーブミラーに自分の顔が映り込んでいた。髪も瞳も真っ黒な僕が。ゲンタの場合はそれが白い。そういう星の下に生まれたからだ。そして、僕の場合は――――

『おかしいだろそんなの。だって黒は――――』

 髪や瞳の〝黒〟は、〝星の力〟を持っていない、未成年の(あかし)だ。

『そ、だから面白いんだよ。噂じゃそいつ、母なる星から見放されたんだそうだ。で、帰ることもできず、宇宙空間をさまよってた』

『でも、〝星の力〟なしじゃ、宇宙空間には出られないんだろ? それは、お前の方が詳しいんじゃないか?』

『……まぁな。だからこそ俺は言い切れる。そいつはまともじゃねぇ。黒い髪のまま外に出るなんて、ましてや、母星から見放されるなんてな……』


 思うところがあったのか、ゲンタはそのまま口ごもってしまった。


「……うわっ、間に合うかな?」

 スマホを開けば開始まで残り十五分もない。僕は自転車に(またが)り、坂道を駆け上がった。

 三つ子山は、この街の数少ない名所だ。その名の通り、高さの違う三つの山が寄り添うように連なっている。ゲンタの言っていた頂上は、一番高い山のことだろう。どうあれ、今さら引き返す気にはなれなかった。

 立ちこぎで森の中の道に突っ込んでいく。

 カゴの中で望遠鏡の入った箱が揺れた。この日のために大金はたいて買った新品だ。どうせなら、一番高いところで見たい。

 現れた三つの別れ道を僕は迷わず直進する。波打った木の根に乗り上げ車体が少し浮いた。このまま行けば、ゲンタの言う頂上に着く。人口流星群は本物と違って低所からでもよく見えるので、わざわざ見に行く人は少ない。もともとこの街では流行っていないし、今回も多分僕一人だろう。そう思うと怖くなってきた。ごくりと固いつばを()んだ、その時だった。


 ――――目の前を青い人影が横切ったのは。


「うわっ!!」

 慌ててブレーキを握りハンドルを切る。しかし向こうも同じ考えだったのか、進行方向で尻もちをついていた。棒付きキャンディをくわえた知らない女の子だった。

 間に合わないと思ったその時、女の子はキャンディを吐き出し、手に持って構えた。女の子がそれに息を吹き込む。次の瞬間、突如現れた巨大なシャボン玉に、僕は飲み込まれた。

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