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まさかの命令

 まさかこんなに早く日本に戻ってくるとは思わなかった。今日で転移してまだ一週間しか経っていない。俺の目的は人脈を広げる事だ。

 人脈は広げたから解雇はないと思うけども……その人脈が説明し辛い人?ばかかりだ。

 自然に廊下を歩く足取りが重くなる。江里部長は第三会議室で待っているそうだ……正直、行きたくないでござる。でもバックレたら、もっとやばくなるんだよな。


『凄いですー。床がピカピカですのー。天井にも光るマジックアイテムがありますー。本当に異世界に来たんですのー』

 契約相手のテンションの低さとは真逆にラルバさん達のテンションはうなぎ登りだ。日本に剣を持って来られないので精霊の雫だけ外してきてた。ちなみに精霊の雫はラルバさん、コーチモさんからの『異世界を見たいです!』との強いリクエストもあり、ネックレス状にして首から下げている。

 そしてとうとう第三会議室に着きました。第三だけあり、こぢんまりとした会議室である。しかし、それが逆にリアルでネガティブな想像が頭の中を駆けまわっています。

 扉の前に立ち、ゆっくりとノックをする。


「平野です。遅くなり申し訳ございません」

 別に遅れてはいないんだけども、これはマナーと言うか習慣だ。


「ご苦労様です。どうぞ、入って下さい」

 聞こえてきたの感情の一切こもっていない江里部長の声。仕事だからしかたないけど、もう少しフレンドリーの方が嬉しいです。


「はい、失礼致します」

 一呼吸置いてから、ゆっくりとドアを開ける……ここは面接会場でしょうか?目に飛び込んで来たのは折り畳机とパイプ椅子。そして俺を待ち受けている二人の男性。

 一人は江里部長、今日もエリートオーラが全開です。そしてもう一人の男性からもエリートオーラが出まくっている。眩し過ぎて、突然石を持ち上げられた地虫の気持ちです。


『ふおっ!尊さレベルマックスのイケメンでございます!しかも細マッチョ、ナイスでございます』

 コーチモさんの言う通り、二人共モデルが務まりそうなイケメンだ。天は二物を与えず……そんなの嘘だと分かる。


「ヘータさん、座らないのですかー?」

 異世界生まれのラルバさんから見れば“相手から座って下さいと言われてから椅子に腰を掛けましょうルール”は奇異にうつるのかも知れない。それに座れば否が応でも、話し合いが始まる……今からでも逃げたいです。


「平野さん、座って下さい」

 江里部長はそう言って笑みを浮かべるが、目は笑ってないです。正直、デンジャーより怖い。


「し、失礼いたします。あの今回は何があったのでしょうか?」

 ここで墓穴を掘るのは愚作だ。無駄だと分かっていても、しらを切ってやる。


「平野平太さんですね。私はラシーヌで現地政府との交渉を担当している高野厚です……率直にお伺いします。平野さんはラシーヌの皇王との面識がおありなのですか?」

 あると言えばある。魔王を討伐した時のパーティーで挨拶を交わした事がある。まだとぼける事が出来ると思う。


「いえ、ないと思いますが何故でしょうか?」

 ラシーヌの皇王が知っているのは精霊剣士のヘッタであって、異世界に出向している平野平太ではない。


「先日ラシーヌ皇王に呼ばれたんですよ。もっとも、直接お会いるのは初めてでしたが……その際こう言われたのです『私の部下がヘータ・ヒラノに無礼を働いてしまった。なんとか謝罪を述べる場を設け欲しい』と。その代わりに日本側の要求を何でも聞いても良いとおっしゃいました。随分と貴方を恐れている様子でしたね」

 フェーフの所為だ。あいつが皇王に釘を刺したのが原因だと思う。フェーフはただの冒険者ではない。勇者パーティーの一人で冒険者ギルドの重鎮なのだ。だからフェーフは各国に顔が効く。


『カツーサ様のお説教が効いたのですねー』

 ラルバさんが誇らしげにテレパスを送ってくる。フェーフに加え、風の精霊の長であるカツーサ様にまで脅されたら、一国の王といえどもたまったもんじゃないだろいう。


「平野、日本の国益がかかっているんだぞ」

 部長、国益なんて重すぎて関わりたくございません。何か良い手はないか?この場を収める良い手段は……。


「これでも私達は現地で情報取集に努めているんですよ。そうしたら旅の商人から面白い話が聞けましてね……二十年ほど前に日本人の少年二人がエスプリに召喚されたそうですね……精霊剣士のヘッタとは貴方の事ではないですか?」

 これはあれだ。絶対に調べがついているパターンだ。


「……確かに昔エスプリに召喚された事があります。そしてヘッタは間違いなく私です」

  ここは素直に認めた方が好印象だと思う……でも、なんかやらかした時みたいだ。


「平野さん、なんで今まで言わなかったのですか?」

 部長、目どころか顔そのものが笑っていません。誤魔化した方が良かったのか?


「精霊剣士と言っても、既に精霊との契約を解除してましたので。それにラシーヌには既知の人間は殆んどおりませんので、過度に期待されても困りますし」

 ピッチャーの経験があるから、プロで投げろと言われるようなもんだ。しかも現状は変化球投手なのに投げられる球種が殆んどない感じなのである。


「……それではエスプリの経験者としてお伺いいたします。今、エスプリで何が起きているのですか?各地で魔族の動きが活発になっているそうですが、何か原因に心当たりはありますか?」

 高野さんの話では、ラシーヌ側は日本側の質問に知らぬ存ぜぬの態度を取っているそうだ。そりゃそうだ。為政者としては口が裂けても言えない話だし。


「魔族は人の欲を糧にしています。前回現れた魔王リュグジュールは色欲を糧としていました。その原因はある国で風紀が乱れた為と聞いています。そして魔王が倒された事により治世が安定しました……これはあくまで私見ですよ。治世が安定した事により、王侯貴族の支配欲求が高まり、それを糧とする魔族の動きが活発になった為だと思います」

 早い話が王侯貴族の権力が強くなったのが原因だ。でもそうなるとオークの行動が問題になる。あれは人為的に怠惰の力を溜める為だったんじゃないだろうか?


「前回召喚された勇者はまだエスプリに残っていると聞きましたが、彼の力は当てに出来ないのですか?」


「猛はトロンに婿入りして権力を振るう側になりました。つまりあいつが活躍する分、支配欲求を糧とする魔族の力も強まるんですよ」

 猛、魔王出現の引き金になるなよ。下手したら俺に白羽の矢が立つんだぞ。


「勇者って平野さんと同じ時に召喚されたんですよね。まだ戦っているんですか?」

 江里部長の言う事はもっともで、猛の功績を考えたら前線から外されない方がおかしい。


「スポーツ選手が、一族経営の大企業に婿入りしたと思って下さい。現役で使えるうちは広告塔として使いまくりますよね。しかも猛は正義の象徴なので、民衆受けが良いんですよ。多少、いかがわしい戦いでもあいつが参戦すれば正義の戦いになる。国としては、便利な駒でしょうね」

 勇者として残った猛としがないサラリーマンになった俺……どっちが幸なんだろう。あいつは既婚者で子供もいるみたいだけど、せめて暖かい家庭であって欲しい。


「噂には聞いていましたが、やはりそうですか。平野さんにお願いがあります。向こうで邦人の護衛をしてもらえませんか?ラシーヌには他国の窓口になってもらえる様お願いしていますので」

 うまいな。ラシーヌが間に入れれば無茶振りもされない。しかも、他国はラシーヌにお願いしなきゃ異世界の技術を提供してもらえないのだ。他国との交渉の時に強くでれるだろう。


「それならお願いがあります。移動手段を確保したいので、提供してもらえませんか?動力源はあてがありますので、屋根付きで積載量の多い物なら助かります」

 あてと書いて自分と読む。これ自分の懐を痛めずに移動手段を手に入れられる。何より段ボールシップは耐久性が低いし、荷物を運べない。

 高野さんは了承してくれたし、江里部長からも任務の続行を命じられた。

 そして、それから秋葉原のお店とケーキショップを梯子しました……BLって凄い。

 次の日、高野さんに呼び出された。なんでもあの後、直ぐにラシーヌ側と話し合いをしたそうだ。


「平野さん、ラシーヌから依頼が来ました。魔法王国ラモーにある魔法大学セゾンで教鞭をとるイリスという女性に荷物を届けて欲しいそうです。勇者パーティーのお一人だそうなで、知り合いですよね?」

 まじで?全力で拒否します。


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