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恐怖のサキュサキュミート

お食事中の方は避けて下さい。ぐろい表現がございます

  サキュバス。ゲームやラノベでお馴染みの男性を誘惑して精を吸収するエロい悪魔。この世界のサキュバスは既婚者や恋人持ちの男性を好む。

 何故かと言うと、エスプリのサキュバスは、かつて俺達が倒した色欲を司りし魔王リュグジュールの眷属なのだ。既婚者や恋人持ちの男を堕とすと社会が混乱する上に、パートナーの女性から嫉妬心や悲しみの心も得れるかららしい。

 ちなみに俺は年中精霊の監視下に置かれていたので、殆んど誘惑される事がなかった。


「フェーフ、あの店ってサキュバスと関わりがあるのかな?」

 エスプリの文化にサキュバスはかなり浸透している。サキュバスと神官の純愛物語が大流行した事もあったそうだ。


「どーだろ?僕達がリュグジュールを倒した事で、魔族の中での淫魔の立場が急降下したっていうし」

 魔族の社会も結構、世知辛いのね。でもあの店をサキュバスが経営しているのなら、結構やばい。昔は水龍リーモイ様の加護があったから、耐えられたけど今の俺は簡単に堕とされるだろう。


「下手に刺激するより、ちょっと観察した方が得策だな。フェーフ、ここからメニュー見えるか?」

 店との距離が結構離れているので、壁に張られたメニューが見えない。スマホを多用する様になってから、視力が大分落ちたのだ……年のせいではないと信じたい。


「あれが、見えないの?へーぽん、老化がスタートしたんじゃない……ハッピー唐揚げ十個二百シブレ、ハッピーカツサンド二百シブレ、日替わりランチ三百シブレ。夜は千シブレで飲み放題だって。それと毎週水曜日はレディースディらしいよ」

 見ていると結構女性も買いに来ていた。でも、良心的な値段だから頷ける。近所にあったら俺も通っっていると思う。


「サキュバスがレディースディ?インキュバスとの共同経営じゃないよな」

 社会人としては、どこでコストを削減しているか気になる。同族経営で人件費ならぬ魔族費を削減してるとか?


「それはないと思うな。インキュバスとサキュバスって、凄い仲が悪いんだぜ。リュグジュールが倒された原因もなすりつけあってるらしいよ」

 確かに前回の時も、サキュバスとインキュバスが手を組む事はなかった。リュグジュールは雌雄同体の魔王なのだ。女性のリュグジュールに仕えていたのがサキュバスで、男性のリュグジュールに仕えていたのがインキュバスらしい。


「客層は男女比が半々だし、これといって怪しい所はないんだよな」

 掲げられた看板からも健全な印象しか受けない。ちなみに書かれたキャラはビールを飲んでいる豚である。


「へーぽんの考え過ぎじゃない?こんな昼間っから、いかがわしいお店に行く奴なんていないよ」

 ……この件について、へーぽんはノーコメントとさせてもらいます。


「食いに行ってみるか?それとも買った人に、どんな肉なのか見せてもらった方が安全かもな……って、こっち見てないか?」

 さっきから店の従業員が俺達を警戒している。


「サキュバスからしたら、僕やへーぽんは許し難い仇だもんね……まずい、騎士に通報したよ」

 騎士は日本でいう警察のような役割も担っている。勝手に出張して、警察のご厄介になりましたはまずい。


「フェーフ、この近くの街はないか?どうせシブレには泊まれないから、一旦避難しようぜ」

 サキュバスは夢魔や夜魔とも呼ばれる。その名の通り、サキュバスの魔力は日が落ちると強まるのだ。


「だったら、どこかの町でご飯を食べた後、ウルスの大洞窟に行ってみない?あそこが一番安全だし」

 確かにセルマンの中で、ウルスの大洞窟が一番安全だ。しかし、アポをとらずに飛び込みで訪問するのは心証を害してしまう危険性がある。


「ウルスの大洞窟の近くにフレーヌって町があったよな。そこに行けば、土のフェアリーに会えるかもな……ちょっと、待ってろ」


「ヘータさん、ゴミ箱漁ってどうするんですのー?まさか、お腹すき過ぎておかしくなったのですかー!」

 ラルバさん、俺はそこまで食いしん坊キャラじゃありません。


「ビール持った豚が書かれた紙袋。多分、ハッピーミートサキュサキュのテイクアウト品だ」

 この店名、口に出すと結構恥ずかしかったりする。紙は舐めたかの様に綺麗になっていた。でも、紙袋の底の方に僅かに肉片が残っていた……まじかよ。

 肉片は以上に柔らかく骨どころか繊維すらないようだ。

 この世界でこれを作るとしたら……そしてサキュバスと多幸感に包まれた住民。頭の中でパズルのピースが組み合わさっていく。

 同時にある風景を想像して、気持が悪くなる。


「へーぽん、顔が青いけど大丈夫?」

 フェーフが心配そうに俺の顔を覗き込む。あれは特徴的な見た目だ。上空から探せば直ぐに分かるはず。


「フレーヌに行く前に調べたい事が出来た。フェーフ、ワームツリーを探すぞ」

 ワームツリーは触手を使って、獲物を捕らえる魔物だ。ツリーと呼ばれているが、陸上に住むイソギンチャクに近い生物らしい。


「ワームツリーって、まさか!?へーぽん、僕が探すから、あの船をお願い」

 段ボールシップを浮上させて、わずか一分でそれは見つかった。


「ワームツリーの畑か。この短期間で果実が採れる訳ないと思ったけど、これなら可能だよな」

 それは異様な光景だった。ワームツリーが何十本も植えられていたのだ。


「……やっぱり、触手を動かしてないね。ワームツリー君は満腹って事か」

 ワームツリーは獲物を捕らえる時に触手を使う、逆に言うとお腹が一杯な時は触手を動かさないのだ。


「あの、嫌な予感しかないのですけどー。まさかサキュサキュさんで出されていたお肉って?」

 ラルバさんの顔が青い。まあ、普通はそうなるよな。


「ワームツリーの胃は外にあるんだ。擬態も兼ねて、それは実の様も見える……何十個も身がなってら。そしてワームツリーの下には、粗末な衣服と武器。多分、ゴブリンだな」

 サキュバスがゴブリンに魅了チャームを掛けて、ワームツリーの所に連れて行く。哀れ、ゴブリンはワームツリーの餌になってしまう。武器や衣類は消化出来ないから、捨てられたんだろう。


「ワームツリーの胃液で溶かされたゴブリンを調理してたんだな。そして、サキュバスの体液をゴブ肉に注入。結果、セルマンの住民はハッピーミートサキュサキュの虜になったと。サキュバスの狙いは分からないけど、ウードウ様に報告へ行くぞ」

 仕入れコストが掛かってないから、安く出来るんだよな……でも、サキュバスがセルマンの男に手を付けた形跡が見当たらないのだけが、どうにも府に落ちない。


「やっぱり、へーぽんは、そうでなきゃ。ウルスの大洞窟はあっちだから、宜しくねっ」

 ウードウ様に報告したら、この件から手を引く。このままじゃ、なし崩し的にトラブルに巻き込まれていく。


 ◇


 ここは熊牧場でしょうか?ウルスの大洞窟に近付いたら、巨大な熊が手を振って出迎えてくれた。クマと言っても五メートル近い大きさがあり、腰蓑をつけている。


「ヘータ、久し振りだーね。元気そうで安心したよ。フェーフも、いらっしゃーい」

 フレンドリーに話し掛けてこられたのはグランドベア―のウードウ様。土の精霊を統べる存在だ。無論、ウードウ様も人間形態になれるが、クマの姿の方が気楽らしい。

 絶対にこんな風にお手軽に会えるお方じゃないんだけども。


「土のフェアリー達が、悔しがっていたって聞きましたのー。“へータに先に会えないなんて、私達の努力不足だ”って」

 そうね、風のフェアリー達が拡散してくれたから、ウードウ様の耳にも入ったのね。


「ウードウ様に、報告とお願いがございます」

 ウードウ様の目線よりやや下の位置に段ボールシップをつけて、話し掛ける。上から話すのは失礼に当たると思うし。


「こんな所で話すのもなんだから、洞窟へどーぞ。美味しい蜂蜜入りクッキーがあるよ」

 ウードウ様は料理やお菓子作りが得意だ。調理をする時だけは、人間形態になるらしい。


「ありがとうございます。ドーマカ師匠はお元気ですか?」

 ノームのドーマカ師匠は俺に格闘技を教えてくれた人だ。ノームなのに、二メートル近い身長があり、筋肉隆々という規格外ノームである。


「今ドーマカはお出掛け中……それで話ってなに?」

 俺はサーツカ様からの伝言と、セルマンの現状を伝えた。


「ただセルマン住民は色欲に溺れている感じがしませんでした。むしろそれさえも、気怠がっている感じです」

 怠惰の二文字がピッタリくる。


「分かったよー。こっちでも調査しとくねー。それとコーチモ、ちょっと来てー」

 ウードウ様の呼び掛けで現れたのは、一人の土のフェアリー。羽根と髪が黄色いのが、土のフェアリーの特徴だ。


「へーさん、初めまして。コーチモでございます…フェーフさん、初めまして。細マッチョの良い筋肉でございますね。特に上腕二頭筋がグーでございます」

 土のフェアリーは努力を好む。そして、ドーマカ師匠の影響で筋肉を賛美しているのだ。

 筋肉痛にならない程度の、筋トレを頑張ろう。


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