クロイツとカルガモ宿の姉妹 終演
現在、俺と魔王は迷宮に潜っている。昆虫型ゴーレムも放ったしアリエル達がこの町に来る前に準備はできた。後は迷宮で魔王のレベルアップして帰るだけだ。
「ガリウス様、お綺麗です」
魔王は俺の現在の姿を見てうっとりとする。
「確かに、これスゴイよね」
俺は静さんに作ってもらったスライムスーツの着心地を確かめるように言った。 このスライムスーツ、見た目が完全に女性なのを除けばね。
スライムスーツの利点はレベルと名前があることだ。仮に名前が無いままアリエルに会ってしまったら、多分この体でも俺と見破るだろう。 それに、この体の良いところは変装のために顔を焼かなくて良いと言うことだろう。あれ結構痛いんだよね。と言うか気絶するレベル。
しかし……。
俺の身長が高いせいか、この体はナイスバディだ。俺は胸を揉んで感触を確かめた。
「お姉ちゃん手つきがやらしいです」
魔王が俺をお姉ちゃんと呼び、汚いものでの見るように蔑む。
違うんだ、これは誰かに胸のサイズを聞かれるかも知れないから確認してるだけなんだ。
そんな俺の言い訳に、聞く耳を持たない魔王はハイどうぞと胸をつきだすと俺の手を引き胸を揉ませようとする。
いやそれパットなの知ってるからね? いや、そうじゃなくて妹の胸をもめるわけ無いでしょうが!
そう言うと妹じゃありませんけど? と淫靡な表情を浮かべる。
ちょっと怖いので拳骨をお見舞いした。
「お姉ちゃん酷いです」
それ精霊鬼の専売特許だからね? 使っちゃダメだからね?
俺達は冒険者ギルド登録して二日目で、すでに迷宮探険に挑んでいる。
まあ、チュートラーは一度経験してるから鼻唄まじりだったけどな。
「でも、迷宮ってジメジメしてて気持ち悪いです」
魔王はパットが暑いのか胸の辺りをパタパタと扇ぐ。しかしこの湿った空気ではあまり効果がないようだ。
そして俺の方についでとばかりに胸ちらをしてくる。しかしパットが見えていてはあまり効果がないようだ。
そんなワガママバディを見せつけようとしている魔王をいとおしく思いながら頭を撫でた。
「でも、魔物弱すぎですね」
「そりゃあ、元魔王様なんだからたいていの魔物に負けることはないよね?」
この迷宮は中心に近づく程魔物が強くなる。つまりまだ深度が浅いのだ。
全一階の迷宮で深度と言うのはおかしいけどね。
そうこうしていると、魔王のレベルが1上がった。魔王は嬉しさのあまり俺に抱きついた。その力は今までの魔王を遥かに凌駕しており、そのまま壁に叩きつけられた。
その瞬間壁が崩れ落ち、俺達は漆黒の闇が渦巻く地下へと落下していくのだった。
ってそのまま落ちたら確実に死ぬ。と言うか魔王の締め付けで今にも死にそうです。これ魔王力加減ができてない。俺が始めて全力の身体強化を使ったときと同じ状態なんだな。
取り合えず死ぬわけにはいかないので、おれは全開の身体強化を使い魔王の呪縛を解くと彼女を抱き締め直し更に落下していった。
数分後落ち着いた魔王が下に向かい光の弾を投げた。その光の弾は闇に吸い込まれ1分後破裂音と共に炸裂した。
良し地面が近い、俺は残りの魔力で粘着糸を作り出し壁に張り付け速度を殺して地面へとたどり着いた。
「魔王さっきの光弾はナイス判断」
辺りを見回すと魔王の光弾が虫型の魔物を倒して、その魔法の火がいまだ燻っていた。
「ガリウス様、今のでまたレベルが上がりました、それも3も」
そう言うと魔王はプルプルと体を震わせる。
俺には分かる、今魔王は全身が正座で痺れた足のような感覚なのだ。少しでも油断すれば筋肉離れしそうなあの感じだ。
俺は魔王に今自身の体に何が起こっているのかを説明した。
魔王はレベル100が通常の人間のレベル1でレベル101がレベル2なのだとつまり今レベル104だから通常の身体能力の五倍のステータスになっている、その為体をうまく動かすことができないのだ。
「ぐふっ」その声と共に俺は吐血をした。折れた骨が肺に刺さっているようだ。
すぐさま全ての力で復元するを取り出し回復させる。
魔王は申し訳ないと言う顔をしているが、動かないように指示をした。多分動いたらどこに飛んで行くか分からないからな。
プルプルと震える魔王を優しくその場に寝かせ楽な姿勢にさせた。これで少しは楽だろう。
しかし、これは一時撤退かな。不測の事態が起きた場合は撤退一択だ。
とは言え、今ので完全に魔力を使いきった。魔王はまだ当分動けそうにない、どうしたものか。
俺は魔王の頭を撫でながら、あのときの自分を思い出さずにはいられなかった。
申し訳ありませんが作品に集中したいのでしばらく感想欄は停止いたします。
ご迷惑をおかけして申し訳ありません。