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幼馴染が女勇者なので、ひのきの棒と石で世界最強を目指すことにした。  作者: のきび
第三章 ミスティアとクロイツ ―ふたりの魔王討伐―
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クロイツとカルガモ宿の姉妹 その三

「そう言えば、クロリアさん達は冒険者ランクいくつなんですか?」

 ティアが私に興味があるのか先ほどから根掘り葉掘り聞いてくる。

 まあ気になるよね、それ。ふはは聞いて驚け、まだ冒険者じゃありません。

 そう言うと二人はそんなに強いのに!? とビックリしていたがグランヘイムの山奥で修行をしてたからと言ったら納得してくれた。

 グランヘイムは精霊龍が住む国で、世界中から武者修行に来るものが多い土地柄であり、普通に私のように武者修行をする者が多数いるのだ。


 打倒、精霊龍なのだ。


 キングオブドラゴンスレイヤーの称号を手に入れるのだ。


 とか思っていた時期が私にもありました。


 まあその倒すべき相手の精霊龍は今はグランヘイムにおらず、魔王の側近に成り下がっていると言う。

 最強じゃない精霊龍など興味がない。

 でも、一度くらい相手をしてみたかった気持ちはある。けど、魔王城へ向かってアリエルが怪我などしたら嫌だから、絶対に魔王城なんか行かない。

 大事な人がいるなら、安全マージンは取ってとりすぎることなど無いのだ。


 それはさておき、蚤の市に行く前に魔石を換金して軍資金を作らねば。

 私達は人拐いの褒賞金を貰うためにバウンティギルドへ向かった。

 バウンティギルドは国が運営しているせいか気ぐらいが高い。

 何せ王国連合が神国の冒険者ギルドに対抗して作った組織だと言われているし、私が冒険者だったらひと悶着あったでしょうね。良かったわ冒険者登録する前で。


 まあ、冒険者ギルドが神国と繋がりがあるのを知っているのはごく一部のものだけだし 、冒険者だとしてもそんなにひどい対応はしないでしょ。


 と言う私の考えが果てしなくシュガーだったせいで、今現在ハンター達に取り囲まれてます。


 始めは愛想が良かった。何度も誉めてくれて、バウンティギルドに入らないかと誘われたときに『冒険者になるつもりなんですよ』と言ったらこのありさまだ。


「じゃあこの娘達を見捨てろって言うんですか?」

 私は勝手に犯人を捕まえたことを咎める男達に食ってかかる。


「そうは言ってねぇだろ、方向がこっちに向かってたならそのまま追ってきてこの町のバウンティハンター達に知らせれば良かったと言っているんだ」

 そんな悠長なことできるわけないでしょうに。私が空を飛べたから追い付いただけの話よ。

 私はこいつらとの話を切り上げてさっさとお金をもらって撤収したかったのだが受付がなかなかお金を用意しない。完全にこちらの成り行きを見守っている。

 むしろニヤニヤして面白がっている。私達が思っている以上に冒険者ギルドとバウンティギルドの確執は根が深そうだ。


「で、あなた達は私達にどうして欲しいんですか?」

 要領を得ないのが話は時間の無駄だし、精神衛生状良くない。


「な~に、褒賞金を俺達、いや、このギルドに寄付してくれれば良いのよ」

 なんだ、ただの乞食だわ。色々御託を並べてくれたけど、結局金が欲しいのね。


「情けない連中ね、働かないでお金が欲しなら、悪魔にでも頼めば良いじゃない」

 この言葉は、さる王国の女王が何もせずに金の無心ばかりする貴族達に言った言葉で、現在では怠け者に対する最上の侮蔑の言葉として使われている。

 ちなみに、それを言われた貴族達はたいそう怒り、ならば働いてやるよとばかりに革命を起こしたと言う。

 もちろんそんな貴族の革命だから女王達を殺したあとは怠惰な生活を続け国事態が滅んでしまったのは笑い話だ。


「てめぇぶっ殺すぞ!」

 当然言われた連中は怒り心頭だ。今にも飛びかからんとするところを一人の優男が止めている。どうやら彼がここのリーダーのようだ。


「じゃあこうしようか、俺達が情けないと言うならオレたちより強いんだろ? 全員を倒せば報償金は渡そう、ただし負けたら報償金は俺達のものだ」

 その優男は私達に褒賞金を渡す条件として決闘しようと言うのだ。そしてもちろん一対一で良いよと言う。

 決闘なら話が早くて助かる。私はそれを了承すると、バウンティギルドの鍛練場へと案内された。


 しかし、多分やり過ぎちゃうよね、これ。


 私のレベルは200超え、世界にこのレベルの人間は数える程しかいない。対してあの優男はレベル98。

 殺してしまわないか心配だわ。

 人拐いのときのようにレベル差が激しければ手加減し易いけど。このくらいのレベルになるとそれなりの実力者だ手加減はできない。特に私のステータスはリセマラのせいで人間の範疇を超えている。


 そのとき私は気がついた、アリエルの知識の苗(ダウンロード)があることに。


「ねえ、アリエル。あなたの知識の中に暴漢鎮圧術みたいなの無い?」


「あります、異世界人がもたらしたアイキドーと言うのがあります」

 異世界の技か面白そうね。


「良いわそれをちょうだい」

 アリエルはハイと言うと私の耳元に口を近づけ何やらこそこそと話し出す。その言葉は私には理解できなかったが技の方は私の中に染み渡った。


 これならいけるわね。


 まず最初の相手はオークのような男が相手だ。獲物は刃引きしたブロードソード、とは言えあんなのが当たったら打ち所が悪ければ死ぬわよ。

 相手がその気なら殺してあげても良いけど、面倒事はできるだけ避けたいし、遺恨が残らないようにしたい。


「よう姉ちゃん、獲物は持たなくて良いのかい?」

 そう言うと男は武器を取れと言わんばかりに刃引きしてある武器達を指す。


「いらないはあなた達程度に武器をもったら情けないもの」


「言うじゃねーか!」

 男はその言葉が終わる前に頭上から剣を振り下ろしてくる。私は懐に入ると男の腕を掴み投げた。 投げた? いやこれ完全に力で投げたよね私。


 おかしい理論も形も同じなのに相手の力を利用して投げていない。頭に入れた知識は完璧なのに技術が追い付いていない。この武術と言うのは知識だけじゃダメなのかもしれない。


 なら、今その技術を手にいれてやるわ。


「……糞が、こうなったもう手加減はしてやれねぇぜ」

 投げられた男はむくりと起き上がると屈辱に顔を歪ませる。

 ステータスは私の方が遥かに上だ、だからここは利用させてもらおう。

 男は今度は剣を抜刀する形に持ち刀身を隠す。


「アキトゥー流?」


「ほう、よく知ってるじゃねぇか。これは北羊アキトゥー流の一派である熊形剣術だ」

 確かにあの形はアキトゥーの剣術のようだけど……。


「アキトゥー流は一子相伝でしょ、つまりあんたのは形だけ真似た紛い物ね」

 そう言われた熊、いや男はまるで怒り狂った熊のように襲いかかって来る。

 私は体捌きで男の所作をよく見る、なるほど、ただ振っているだけだと思っていたらちゃんと遠心力や反発力を使っているわけか。とは言え出来損ないだ。

「あなたの動きは把握した」

 私は男にそう言い捨てると、もう一度懐に飛び込み体と腕の付け根から筋肉をなぞるように触った瞬間、筋肉の動きを把握し男の体を導くように投げ飛ばし関節をきめる。

 今のは良い感じだ肌と肌が触れると相手の動きが手に取るように分かる。


「くそ! はなせ!」

 熊男は叫ぶだけで体を動かすことができない。この関節技と言うのはすごいわね。

 人間相手の一対一の戦いなら最強かもしれない。


「分かった、俺達の敗けだ」

 そう言ったのは優男だった。


 まだ一回しか戦っていないのに潔い引きだ。 完全にこちらの力量を把握して敗けを認めた。 自分の引き際を知っていると言う相手は怖い。私もそれに乗っておくことにしましょう。


 私達は受け付けに戻ると褒賞金を受け取った。金額は30Gだ、どうやらそこそこ有名な犯罪集団だったらしい。


「私の名前はガンゼフ。できれば今後は仲良くしたいものだなクロリアさん」

 そう言うと第一王子の息子ストロガノフが握手を求めてきた。私達には相手の素性が分かる目があるから素性はわかっているけど、自分から名乗らないときはその名前で呼ばないようにするのをルールにしている。


 なぜなら名前を偽る人間の本名を口にすると、命を付け狙われる危険があるからだ。

 当然この王子も知られたくはないだろうから言わない方が良いだろう。


「そうですね、できれば仲良くしていきたいものです」

 私は握手をすると皆をつれてギルドから出た。

 はあ、ひどい目にあった。

 あの王子は王位継承権第三位だけどあれは野心家の目だわ。関わらない方が吉ね。


 しかし30Gか、これじゃアリエルWith宿屋の姉妹を養うには心許ない。というか足りない。

 魔石の換金は色々な所がやっている。先程のバウンティギルドでもやっているが揉め事を増やさないためにもやめておいた。

 この町で冒険者登録はしないので、出来れば冒険者ギルドもやめておきたい。

 私が出す魔石を見たら確実に勧誘される。


 冒険者は登録を済ませた町の後ろ楯を得ることになる、当然何かあれば助けてくれるが逆に呼びだされることもある。

 その場合この町のクロリアと言うことになる。迷宮(ラビリンス)を拠点にしたい私達にはこの町の後ろ楯は邪魔なだけなのだ。

 それに小さい町のギルドよりも大きな町のギルドの方が後ろ楯としては優秀なのだ。


 それはさておき、マップを使い魔石換金所を探してみる。3件ほどヒットしたが二軒はパス、冒険者ギルドとバウンティギルドだ。残りの一軒は魔道具屋か、私達は蚤の市に行く前にその最後の一軒の魔道具屋へと向かった。


 魔道具屋がある場所は薄暗い路地の奥にあり、今にも暴漢が……、と言ってるそばから三人組の女達が道をとうせんぼしている。

 さしずめデブのアブラと怒り肩のカタとお色気ムンムンのブラと言うところか?


「何かよう?」

 私は勤めて冷静に彼女達に要件を聞く。


「それはこっちの台詞だよ、ここから先に行きたければ有り金全部だしな」

 何で悪党と言うのは皆同じ台詞を吐くのだろう。まるで気軽に読める小説のテンプレじゃないか。


「あなた達に渡すお金はないわね、お金が欲しいなら働いて稼ぎなさい」

 どいつもこいつも人のお金ばかりあてにして。この町は屑しかいないのか。


「ふへへ、働きたくないでござる」

 デブのアブラが小馬鹿にしたいような笑いを浮かべて私を挑発する。私は面倒くさいとばかりに3人を掻き分け前に行こうとするとアブラとカタが腰から短剣を抜く。


「あの短剣、魔道具です!」

 アリエルがそう言うと二人は良くご存知でとニヤケると魔道具の短剣を起動させる。アブラの持つ短剣は炎を纏いカタの持つ短剣は(いかずち)を纏っていた。


「あなた達のようなチンピラには過ぎたオモチャね」

 私は覚えたてのアイキドーの足捌きでアブラの懐に入ると一瞬で短剣を取り上げた。アブラは何が起こったか把握できずにオロオロとする。アブラから見たら私が瞬間移動でもしたようにでも見えたのだろう。

 すかさずアブラの鳩尾(みぞおち)に肘打ちを入れると『ヴッ』と唸るり崩れ落ちる。

 そのまま私はカタの方へと足捌きを使い移動する、当然カタは反応できずに私に魔道具を奪われることになる。


「魔道具げっと~♪」

 私は指で取った短剣をヒラヒラと揺らして見せる。


「なっ! かえせぇ!」カタは短剣を取り戻そうと手を伸ばすが、私はその手を取りそのまま壁に投げた。

 カタはその衝撃で意識を失う。


「さてさて、あなたはどんな魔道具を持ってるのかな?」

 私が前に出るとブラは後ろに下がり間合い詰めさせないようにしていた。

 だけど、ズンズン(せま)る私にブラはバランスを崩しは後ろの魔道具屋の看板に後頭部をぶつけて前のめりに受け身もとれずに倒れ気を失った。

 一発も殴られずにやられたとあっては、後で仲間に何を言われるか分からないだろう。

 私はブラの顔面を蹴り飛ばした。もちろん優しさからだ他意はない。

 倒れた女の懐をまさぐると短剣が一本ありました。アリエルに見せると魔道具だと言う。魔道具短剣三本ゲット!


 火と(いかずち)でこれは何かしらね。私が短剣を見ているとアリエルが多分この三日月状の突起物を押すと発動するのだと思いますと言う。

 その突起物を押すと短剣に火の塊が現れた。あ、これエクスプローションだわ。


 私は短剣を上空に投げるとアリエルと二人を庇った。瞬間火球は弾け飛び私を焼こうと襲い来る。とは言えそのまま焼かれる私じゃない。

 火炎剣・爍焱(アグニ)超高温の火球プラズマが剣より放たれ敵を消滅させる。これで相殺(そうさい)させる!


 私の爍焱(アグニ)がエクスプロージョンを穿(うが)つ。プラズマの火球は全てを飲み込みそのまま打ち上がると花火のようにドカンと弾け飛んだ。


 そうこう言うときはこう言うらしい「たまぁ~ぁ」ってね。

 とは言え魔道具一本失ってしまった。まあ、あれは危険だし仕方ないか。



「なんだい、やかましいね!」

 そう言ってドアを開けて出てきたのは魔石を換金してくれる魔道具屋のオババだった。





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インフィニティ・プリズン~双星の牢獄~ シリーズ
『おさじょ』に出てくるアディリアスとウルティアの二人の神たちの物語 『聖剣のネクロマンサー』
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