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幼馴染が女勇者なので、ひのきの棒と石で世界最強を目指すことにした。  作者: のきび
第三章 ミスティアとクロイツ ―ふたりの魔王討伐―
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クロイツとカルガモ宿の姉妹 その一

 私達はハコブネから出て、そのまま北上した。アリエルが言うには南は魔王軍が控えており危険だからと言う理由だ。それに先立つものがないので、瘴気炉で倒した魔物の魔石を換金しなければならない。


 まあ、魔王を倒すのも面白いかなと思ったんだけど、アリエルは私の身が心配だからダメですと言う。


 私、愛されてます!


 ハコブネから出る前にアリエルは神様から神器をいただいたのだが。元から持っていたと言う服が壊滅的にダサい。私が着ている服は獣人達の民族服らしいのだが、これもかなりダサい。色が一色で染めていない、植物を乾燥させた作った服で涼しくていいのだが植物そのままの色でおしゃれじゃない。 戦うことに力をいれていた獣人達らしいけど、服は大事よ?

 まずは次の町で買い物一択よね。


 マップで確認すると一番近くの町はサラディアンの町か、町としてはさほど大きくない、ここじゃいい服無さそうね。

 それでも、今着ている服よりはましかな。


 街道を歩いていると後方から馬車が私達の方に向かってきた。

 馬車には御者と合わせて男女7人が旅物語を紡んでいた。


 いや、紡んでいたかは知らないけど。


 町と町を繋ぐ定期馬車を止めるには全ての武器を足元に置き敵意がないことを示し、手に運賃である硬貨を見せる。このとき止まるか止まらないかは御者の気分しだいなんだけどね。


 金持ちの連中の中には金貨を火魔法で溶解させてこの位の物はいくらでも用意できるぞとアピールしたりもするそうだ。

まあ、そう言うのは街中の辻馬車で街道の辻馬車を利用するの定期馬車がない村の人達か野盗に襲われた人くらいなものだからそんなことしてたら怪しまれるけどね。


 取り敢えず2Gを手に持ち高く掲げるが。馬車は無情にも私達の横を通りすぎる。


 あの馬車の色は定期馬車か定期馬車は決められて所以外ではまず止まらない。途中で客を拾うと横領で首になったりする。


 しかし。御者の奴め通りすぎるときにほくそ笑んでたわ。

 次に会ったらぶっ飛ばす!


「まあ、急ぐ旅でもないし歩いていきましょうか」


「はい、久々の外出ですので歩いていても楽しいです」


 先ほどの御者の名前を覚えておこうとステータスをチェックするとそこに人拐(ひとさらい)いという文字を見つける。

他の4人の男達も同じだ。

 二人の娘が誘拐されたということか。


「アリエル、あの定期馬車は人拐いに襲われたようね。助けにいくわ」


「はい、ご一緒します」

 本当は私一人だけでやりたいのだけど、アリエルが怪我でもしたら嫌だもの。

 でも、アリエルもかなり強いし信頼しなきゃね。


「あ、でもアリエル飛べないでしょう?」


「ええと、そうですね」


 そう言うとアリエルはアゴに指を当てて考える。ぐっかわいい。


「ではクロリア様、神の祝福(プライム) 大空への飛翔(スカイワード)を発動させて私に譲渡したいと思っていただけますか?」

 神の祝福(プライム)は譲渡できるようなものではないけど、アリエルにはなにか考えがあるようだし取り敢えずやってみよう。


 私は大空への飛翔(スカイワード)を発動させアリエルに譲渡したいと念じた。


 その瞬間、私は地面に尻餅を着いた。


「へ?」


「すみません、飛べなくなるの言い忘れてました」

 アリエルがテヘペロと舌をだす。かわいいから許そう。


「と言うのか、どう言うこと? 神の祝福(プライム)の譲渡なんて聞いたことないけど。それに私飛べなくなったの?」

 さすがにお嫁さんでも譲れないものはあるんですよ? 結婚前の財産とか、大事にしているコレクションとか。


「いいえクロリア様は普通に飛ぶことができます。私の神の祝福(プライム) 現象の保管庫(フェノムストレージ)大空への飛翔(スカイワード)を保存しました」


 アリエルの現象の保管庫(フェノムストレージ)はあらゆる現象をストレージにレベル×Ⅰ/10個保存できるらしい。つまり現在29個保存できるそうなのだ。


「あらゆるものってどこまで入るの?」


「魔法と神の祝福(プライム)それと川の流れとか風も入りました」

 なにそれすごい、うちの嫁有能すぎませんか?

 まあ、もっと色々聞きたいけど今はあの囚われの女の子を助けてウハウハするのだ。

 いや、しないけどね?


「「大空への飛翔(スカイワード)」」


 ちなみに現象の保管庫(フェノムストレージ)の能力発動にはカバンが必要でフタを開け締めすることにより能力を出したりしまったり出来るのだという。


 私達は神の祝福(プライム)で空を飛び先を行く馬車を追った。

 大空への飛翔(スカイワード)のスピードは飛竜(ワイバーン)よりも速く飛べる。馬車などあっという間に追い付く。

 見えた。追い付いたのはいいけどどうしようか。

 御者を殺す? それとも救出が先か。


「クロリア様、私が馬車の足を止めます」


「できるの?」


「はい、任せてください!」


「分かったわ、お願い」

 私がそう言うとアリエルは左手を前に掲げる。


「来なさい神獣プロトケッアル!」

 アリエルが叫ぶと左腕の手袋が幾何学模様を赤く浮き上がらせると十字の部分から赤いヘビのようなものが飛び出した。


「ケッくん、あの馬車を止めなさい」


「ぎゃ!」

 その神獣はアリエルの言うことがわかるようで、大きな声で返事をすると何かの魔法を馬車に放った。


 それは馬車全体を浮き上がらせ、前に進むことができなくなった。


 良しこれなら御者は後ね。私は馬車に向かい急降下すると天井を蹴破り中にいた男達を一撃の元葬り去る、何てことはせずに生け捕りましたよ。

 人拐いは重罪で褒賞金も悪くない。

 十分な魔石や素材があるとは言え、お金はあるに越したことがないからね。


 外を見ると御者は何が起こっているの分からないようであたふたしている。私は土蜘蛛(アラクノイド)の糸で御者を縛り上げる。


「大丈夫ですか、お嬢様方」

 私は白い歯をキラリと見せニヒルを気取る。

 さあ、私の胸に飛び込んでおいでハニー達。


「ありがとうございます」

 そう言うと姉妹は助けられたことに安堵する。まあ、飛びんで来ないよね。

 どうやら二人は姉妹のようで姉はディオナ妹はミィアと言うようだ。

 私が人拐いを外に出すとアリエルが空からおりてきた。


「お疲れさまでしたクロリア様」


「アリエル、こんな連中じゃ準備運動にもならないわ」


「アリエルさん?」


「?」

 ディオナがアリエルをまじまじと見て小走りで彼女に近づきアリエルに抱きついた。


 

 は?



 何してくれちゃってるのこの女!


「え、ディオナさん!?」

 私が糞女を引き剥がそうとしようとすると、アリエルが懐かしい人を見たとばかりに歓喜の声を上げる。


「それじゃあ、こちらの方はもしかしてクロ……」

 ディオナが何かを言いかけた瞬間、アリエルが彼女の口を右手で塞ぎ何やら耳元でごそごそと言うとディオナはコクンと頷きアリエルから離れた。


「……何をしたのアリエル」

 アリエルが何かを囁いたとき、一瞬ディオナの目の光が失われた。そのときアリエルは何かしたのだ。


「いいえ、クロリア様の紹介をしただけですが」

 アリエルはこともなげにそう言うとディオナも私に挨拶をしてきた。


「ねえ、アリエル。私達はバディ(*1)よね?」


「はい、そうです」


「その私に隠し事をするの?」

 私のその問いに少し考え、申し訳ありませんと言うと何をしたのかと理由を話した。


 まず私は昔アリエルの主人だった男の恋人のクロイツと言う人間にそっくりだというのだ。

 そして二人はアリエル達をハコブネに残しどこかへ消え去ったという。

 だから二人の名前は聞きたくないのだという。


 そして今アリエルが使ったのは神の祝福(プライム) 知識の苗(ダウンロード)で私がクロリアだと言うのを植え付けたそうだ。この能力は永続効果で自分の持つ知識を相手に覚えさせることができるそうだ。


 納得できないけど理解はした。


 ……でもひとつ疑問がある。


「ねえ、アリエル。あなた自分の性格見えるわよね? 『一人を愛す』って、その前の主人のことでしょ」

 私がアリエルを問い詰めると、彼女は涙を流しハイと頷いた。

 まあ、こんな若くて可愛い娘が私に惚れる訳はないわよね。


 はあ、つまり私はこの子の貞操を奪ったあげく無理矢理嫁にしたわけか。


「アリエルは私のことは嫌い?」

 ズルイ聞き方だ。少しでも好意があれば嫌いとは言えない。

 でも私はアリエルを手放す気はない。


「いいえ、嫌いじゃないです」

 ここで畳み込めわたし(・・・)


「じゃあ、その男をわたしが忘れさせてあげるわ」

 私はそう宣言するとアリエルの唇を奪った。

 少し抵抗したが、割りとすんなり受け入れてくれたってことはアリエルもその男の事を忘れるように努力するってことよね。


 ざまぁ! 糞男! アリエルはわたしの嫁だ、絶対に誰にも渡さない。

 しばらく濃厚なキスをしたあと私は下の方に手を伸ばそうとするがアリエルは二人が見ているからと言って、おあずけを食わされた。


 二人を見るとあっけにとられていて、口をあんぐりと開けて固まっていた。

 二人を忘れて、イチャついてしまった。

 すべてはアリエルの若さと胸のせい、私は悪くない!


「ところで、あなたたちはどこへ向かうところだったの?」

 呆ける二人をよそに、私は彼女達の目的地を聞く。助けてハイさよならじゃ可哀想だしね。


「グリムデル村からサラディアン町に戻るところだったんですよ」そう言ったのは妹のティアだ。

聞くと姉妹はグランヘイムで宿をやっていたそうなのだが、S級指名手配のガリウスを(かくま)っていた容疑で連行され、一週間勾留されたのち釈放されたのだが人の噂に戸は立てられず客足が完全に無くなり店を閉めたというのだ。


 それを聞いたアリエルは自分のせいでごめんなさいと言う。

「何でアリエルが謝るのよ悪いのはそのガリウスと言う奴でしょ」

 その言葉を聞いたアリエルはつらそうな表情を私に見せると、そんなことは言わないでくださいと言う。

 私は別に間違ったこと言ったとは思わない。でも、なぜだか、私も嫌な気持ちになった。アリエルの主人であるガリウスのことはもう二度と言わないようにしよう。



「じゃあ、二人とも用意ができているみたいだから行きましょうか?」

 乱れたアリエルの服を直し私は人拐い達を馬車の後ろにくくり着けた。


「あのう、もしかして俺ら……」

 人拐い達は自分達の運命を悟ったのか顔面蒼白で私を見る。

 私はそれを無視して皆に質問をする。そう、だれが操車するんでしょうか、これ重要。

 私は貴族じゃないけど何か嫌なのよね操車するのは。


 そこでアリエルが皆に操車技術を知識の苗(ダウンロード)しましょうか? と聞いてきたがお断りだ。何がなんでも操車は拒否させていただく。


 あ! そうよこいつらがいるじゃない。


 私は人拐いの御者を他の連中から連れ出し馬車を動かすように命じた。当然断れば体をバラバラにすると大木を土蜘蛛(アラクノイド)の糸で切り裂いて納得させた出発させた。


 仲間を庇ってか、かなりゆっくりと馬車は進む。私は御者の席を蹴り飛ばすと顎をクイッとやり速くいくように促す。

 御者は仲間の方を一瞬見たがすぐさまスピードを上げた。まあ、誰しも自分の命が一番可愛いのでしょうしね。


 車中ではアリエルが彼女達の今の生活状況を聞いていた。

やっぱり責任を感じているのだろう。貧しい暮らしをしていれば援助することもやぶさかではないのだろう。

 だが、その心配はいらないようだ、彼女達は現在叔母のいえに住み込みで裁縫師として働いていると言うことなのだ。

 そして姉のディオナはすでに叔母を越えたと言われるほどで、彼女を名指しで指名する客もいるそうだ。


 そして襲われたときの話しになったのだが、彼女達二人だけが連れ去られたのだと言うことが判明した。

 他の乗客は皆下ろされ、二人だけが連れ去られたそうなのだ。

 そういうことは先に言って欲しい、完全にこの二人が狙いじゃないか。


「それで、人買い業者のバラモラさんは誰に頼まれてこの娘達を襲ったの?」

 私の言葉に御者の男が一瞬体をビクッとさせるが、自分の名前がバレていると言うこともあり素直に黒幕の名前を教えてくれた。

 その名前を聞いたディオナはその言葉が信じられないとばかりに否定をする。


 そう、彼女達を保護してくれた叔母(おば)が後ろで糸を引いていたと言うことなのだ。




(*1)バディ

 この世界のバディとは同性のカップルを指して言う。

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