クロイツとリセットマラソン オマケ
「失敗したああああああ!」
完全に頭のな中が真っ白になって台詞忘れましたわ。
『諸君、私が神魔王ガリウスである。人類よ滅びよ』じゃないよ!!
あそこは『始めまして、愚かなる人類の代表どもよ、貴様達人類はこの世界の汚物だ、故に貴様達人類に命じる。滅べ!』
だよな……。
「ガリウス様30点ですね」
魔王が先程の俺の演説を評価する。俺の魔王学の先生なので辛口評価である。
「魔王厳しくない? 50点はくれても良くない?」
「甘く見積もって30点ですよ? 私の魔王学の先生なら0点つけますよ?」
「そんなー」
完全なダメ出しである。俺的には50点はいったと思うんですよ。
「婿殿、精霊鬼の口癖がうっておるぞ」
いつの間にか精霊鬼の変な叫び方が移っていたことに苦笑する。
「それに精霊龍の絆と精霊鬼使い忘れましたよね?」
「あ……」
そうだった変身するの忘れてた。あそこで変身して魔王としての威厳を見せつけるんだった。
魔王は話をさらに掘り下げる。立ち振る舞いや所作の悪かったところを指摘する。先生として教え子の失敗は許せないのだろうか。
「ダメダメじゃな」
「ダメダメですね」
精霊龍と魔王が俺を責める、つらい。
「じゃあ、私は慰めますね」
そう言うと精霊鬼が俺に抱きつこうとする。
「ダメに決まっておろう」
だが当然、精霊龍に指一本で止められる。
「そんなー」
ゴウンゴウンと言う音と共に黒い渦が現れると中から静さんが出てくる。
「ただいまっと」
「お帰り静さん」
「それで首尾の方はどうだった?」
静さんが俺達の脅迫の出来を聞いてくる。
「ガリウス様が上がりまくりで言うこと全部言えてませんでした」
いや、だって俺田舎者だよ?あんな王公貴族達がいる前で演説で上がるなっていう方が無理じゃない?
人類よ滅べ。だよ?
「まあ、後で書面で送れば良いじゃろう」
「しずさあああん」
マイマザー優しいのは静さんだけだよ
「おお、よしよし」
抱きつく俺を優しく撫でる。今の俺には静さんだけが癒しだよ。
「ガリウス様、ババコンですか?」
精霊鬼がそう言うと精霊龍のこめかみがピクリと動く。
「なんじゃ精霊鬼ワシに喧嘩売っておるのか?」
「あ!すみません精霊龍様が超老婆なの忘れてました、すみません!」
「お主、一度消滅してみるか?」
「ガリウスさまああ」
ふう、やれやれ。俺は喧嘩している二人をよそに魔王の玉座に座り一息つく。魔王も人間の姿に戻り俺の膝の上に乗り頬をすり寄せてくる。
「とは言え、マリアがいたのは誤算だったね」
「はい、殴るモーションで分身と穏行を使い会議場の端まで送って催眠をかけておきましたので怪我1つしておりませんのでご安心を」
リライマさんが殴ったときはビックリしたけど、ちゃんと考えてくれているんだよな。
「ありがとうリライマさん」
「いいえ、お気になさらず」
俺はリライマさんの腕を取る手と手を重ね強く握る。
「生身の時にして欲しかったですね」
「ごめん」
「いいえ」
「お主らは暗すぎだな、もっと明るくできんのか、闇の精霊龍でも明るいと言うに」
「精霊龍様ここ笑うとこですよね?アハハ」
「シネ」
「ぐえっ!」
二人を見ていると自然と笑いが込み上げてくる。一見いじめに見えるあれは強い精霊が弱い精霊を鍛える効果があるという。
精霊鬼もそれが分かっているので、わざとやられるようなことを言っている。
わざとだよね?
「まあ、精霊龍もその位にしてこっちおいで」
「仕方ないのう」
「では私も……。」
「お主はダメだと言うとるだろうが」
俺は精霊龍をなだめ精霊鬼も側に来させる。
「でも、みんなのお陰でここまで来ることができたよ。ありがとう。後やれることは2つ、それまで俺に協力してくれると嬉しい」
「何を馬鹿なこと言うておるのじゃ婿殿。嫁にはついて来いで良いんじゃぞ?」
「私は嫁じゃないぞ?」
リライマさんが精霊龍に否を言う。
「はん、婿殿に惚れてここにいる分際で何を言うか」
「な! 惚れてなどいない。死ぬのを待っているだけだ!」
「素直にガリウス様、愛しておりますと言えば可愛いものを」
リライマは精霊龍の言葉にそっぽを向く。
「ガリウス様、愛しております」
「お主はダメじゃ」
「ガリウス様、愛しております」
「うん、ありがとう」
そう言ってくれた魔王の頭を俺は優しく撫でる。
「精霊龍様! なんで魔王は良いんですか!」
「うん? それが分からぬからお主はダメなのじゃ」
「そんなー」
「ガリウスはハーレムがお望みか?」
静さんが突然、ドキッとするような質問をする。
「いや、そんなことは……」
「でも、その四人のことはちゃんと責任をとるのじゃろ?」
「はい、取ります」
「だからハーレムじゃろ?」
「いえ、そんなことは……」
責任を取るとハーレムなの? いや、まて責任てなんだ、嫁にすることが責任なのか?
確かに、これだけ俺のために尽力してくれている皆にありがとうだけで良いのか?
いや、逆に何かしてくれたから嫁にするのか? 愛情は無くても良いのか?
精霊龍を俺は愛していると言えるのか。
そもそも愛ってなんだ?
うーん、うーん。
「プハハ、確かにあやつの言うとおりじゃわアディリアス様そっくりだわ」
そう言う静さんはなんだか泣いているようだった。