クロイツとリセットマラソン その三
目が覚めると私はベッドに寝ていて、アリエルが私を介護していた。
「私は……」
「急にお倒れになられたので、お部屋にお運びしました」
何で急に意識を失ったのだろう。立ち眩み?
そうだ、アリエルに謝らなければ、さっきのは言いすぎだ。
私が謝るとアリエルは首をふり、私に非はないと言う。
あれ、なんの話をしていたんだっけ?
倒れたせいで記憶が曖昧だ。その事をアリエルに聞くと『もう兄のカイエルと同じ強さですねと言う話で、同じと言うところでクロイツ様がお怒りになりました』と言った。
そうだった。カイエルと同じとか屈辱って話だったわね。
我ながら下らないことで怒ったものね。
「申し訳ありません」
「アリエルが謝ることじゃないわ。私が悪いんだから。ちょなに泣いてるのよ、誰かさんの泣き虫移っちゃった?」
それでも泣き止まないアリエルを、私は自分のベッドに招き入れて抱き締めて眠った。
今日はすごく疲れた。
良く寝た。今日は気持ちの良い朝だ。
周りを見渡すと私の横に寝ている人がいた。昨日は記憶なくすほど飲んだのかな。まさかやってないよね。
恐る恐る見ると裸の少女が寝ていた。なんで女の子が寝ているの?
私、やらかしちゃった?
女の子と関係持つとか私はそっち系でも大丈夫な口だったのだろうか……。
どうしよう、操は散らしてないわよね? 私は焦って自分の物を確認した。
問題ない大丈夫なようね。
それにしてもこの子、気持ち良さそうに寝ている。どこの娘だろう?
と言うか、でかい! なにこれ胸にメロンでも入っているのだうか。
私はその胸に手を伸ばしもむ。
こんなに大きいのに張りもあって垂れそうにないわね。うらやましい。
一心不乱にもんでいると、その娘が起きて私に挨拶をする。
「あのう、昨日の記憶がないのだけど私あなたに変なことした?」
「はい、操をクロリア様に捧げました」
掛け布団を剥がすとシーツに血がついていた。
やらかしてました。終わった、私はやってしまった。
これは責任取らないとだめよね。
「ええと、私の名前はクロリア。あ、知ってるわよね? で申し訳ないのだけどあなたの名前が思い出せないの教えていただける?」
「昨日も自己紹介しましたが改めていたします。私はアリエルと申しますクロリア様、どうか今後とも可愛がってくださいまし」
昨日、初めて会った娘と一夜を共にするとは何てふしだらな女に育ったんだ私は。
まあ、王公貴族って訳でもないんだから、上品に育て上げられたわけでもないけどね。
とは言え、私はノーマルなはずなんだけど……。多分あの胸だあの胸にやられたのだわ。
「朝食をお持ちしますのでこちらでお待ちください」
「あ、なら食堂にいきましょう」
「クロリア様、一夜を共にした相手とはしばし二人きりの空間を楽しみたいものなんですよ」
そうですか、そんなほほを染められて言われても。まあ、こんな可愛い娘にそんなこと言われて悪い気はしないけどね。
ベッドの上でまどろんでいるとアリエルが食事をトレーに乗せ持ってきた。
「美味しそうね」
「はい、ここの食事は下界では食べられないものばかりですから」
凄く柔らかいパンにクリーム状のスープ、どれも見たことがないものばかりだった。
私はトレーの上に並べられた朝食を平らげると、服を着替え神の間へと向かった。
神の間に向かう理由はアリエルのことだ。 アリエルはこのハコブネにいることを強要されており私と旅立つことができないそうなのだ。
責任をとると言った以上ここに置いていくわけにはいかない。
「と言うわけで。神様、私はアリエルをもらいに伺いました」
「唐突じゃのう。まあ、我は構わぬがカイエルがどういうかのう」
カイエルとアリエルは仲の良い兄妹だそうだ。そんな二人を引き裂くのは忍びないがちゃんと責任はとりたい。
「それがしもアリエルがクロ……リア様についていくのに賛成です」
お兄さんの許可もいただけた。これで私達は公認になったわけだ。
「ふむ、ではレベルアップは終了か?」
「そうですねレベル200を超えるまでやってから旅立とうと思います」
そう、神の祝福を手にいれないとここに来た意味がない。
「そうか、そうなると10回はパンドラの魔獣を倒さないと無理じゃな」
10回? そんなに必要無い、私はすでにこの瘴気炉にでる魔物達は攻略できる案を持っている。
「一人でやるのか?」
「はい」
「よかろうやってみるがよい」
私はそのまま瘴気炉に送られた。来るときに槍も10本程もらい、抱えて来た。
その槍を地面に中心から50mほど離れたところに円を描くように刺す。
準備が終わると中心から瘴気がたちのぼる。
石に受肉が始まると瘴気感染が始まる。
一気に魔物達が出口に向かい走り出し、槍の間を抜けると次々とバラバラになる。
こんな大量の魔物、外にだすわけがないでしょうに。
槍と糸で作った結界は魔物をいとも簡単にほふる。糸なだけにね。
そしてレベル100になった。
″神の祝福 大空への飛翔 効果 飛べる″
よし啓示が来た。視線の歩みと会わせれば空からの奇襲もしやすくなる。
試してみるか。
私は大空への飛翔で空に飛ぶとパンドラの魔獣が出現するのを待った。
時を待たずに瘴気が沸きだし中央の鉄に受肉していく。
何も受肉が終わるまで待つ必要はない、私は受肉中の魔獣に攻撃をしかけた。
外骨格が形成される前の魔獣など赤子の柔肌のようなもの。
魔力が通った蜘蛛の糸でサクサクと削れていく。
受肉が終わる頃には外骨格も無くフラフラの魔獣が誕生した。10本の槍を魔獣に向けて放つ。それらはトドメを刺すには十分すぎるほどの威力で、魔獣の体に風穴を開け、絶命させた。
パンドラの魔獣弱すぎ。外骨格を形成させなきゃ体がでかくて良い的だわ。
「クロ……リア様、正直ドン引きです」
長が私の攻略法法に意義を申し立てる。何でも、相手が完全な状態になるのを待たないのは戦士としての誇りを捨てる行為だと言う。
戦士の誇りで敵が倒せるなら苦労しないわ。殺れる時に殺れ、これが基本よ。
そして現在レベル182、パンドラの魔獣を一人で倒せば経験値が美味しいわね。
長の息子はこんな方法があったのかと目から鱗をしてるのに、長は『それをやったら負けだぞ』とか意味不明なことを言って言い争いになっている。
『連続でできるがどうする?』
頭の中に声が響く。
『神様ですか? できればお願い致します』
神様にすぐにでもやりたいむねを告げると、獣人達にも連絡が入ったようですぐさま石が積まれる。
「また同じ方法でやられるのですか?」
「そうよ、あのやり方が確実だもの」
長はあの方の連れでなければ叩き出してるとかとかなんとか言っていたけど何のことやら。
私は長の言葉に耳を傾けずまた同じように槍を地面に突き刺した。
2回目はレベルアップもあってか先程よりも楽に倒せた。
そして楽に200を越えてレベル231になった。
″神の祝福 念話 効果 遠くの人と話せる″
くそ、ハズレだ。まあ、あっても困らないものじゃないけどもっと直接戦闘に使える神の祝福が欲しかった。
あれ、これ結構使えるんじゃない?
殺したい相手にずっと死ね死ね死ねと言い続けたり、攻撃が来る方の逆から攻撃が来ると声をかけてあげるだけでも敵は迷う。
使いようではかなり使える能力よねこれ。
『アリエル聞こえる?』
『クロリア様ですか? 聞こえます。ええと、どういう事でしょうか?』
『神の祝福よこれで連絡に困らなくなるわね。それとレベル200を越えたからここを出るわよ、出立の準備しておいて』
『かしこまりました』
私は親子喧嘩をしている長達を尻目に神の間へと向かった。
「神様、レベル200越えましたのでここを出ていこうと思います」
「うむ、分かった。それとお主に協力すると言ったがこれを渡そう」
そう言うと一本の剣を私に投げてよこす。
刀身を見るために抜こうとしたが抜けない。
「神様、鞘から取り出せないのですが」
「それは勇者の剣の模造品じゃ、模造品と言っても劣るところはない程の物だ」
「いえ、ですから抜けないと意味がないと思うのですが」
「まあ、肌身放さず持っておけ。さすれば抜けるときも来よう」
「はぁ」
正直抜けない剣とか邪魔でしかないのだけど。
「ならばアイテムボックスをお主に授けよう」
そう言うと神様は指先で弾くように私の方になにかを投げた。
目には見えないがその後私にアイテムボックスが発現したのであれはアイテムボックスを投げてきたのだろう。
これで邪魔な剣は入れておける。
「言っておくが、その剣はアイテムボックスには入らんからな」
そう言えば心読めるんでしたね。
私はお礼を言いアリエルと一緒にハコブネの外に向かった。
カイエルも着いてきているが神様の命令でここからは出れないらしい。
「それじゃあお兄様、行ってまいります」
「気をつけてな、無理するんじゃないぞ。クロ……リア様どうか妹をお願いします」
「任せて、私の嫁に傷一つ付けさせやしないから。あでも私が傷つけちゃったか」
「は? それはどういう意味ですか」
「クロリア様、行きましょう。ではお兄様失礼いたします」
「ちょ、待たぬか。クソここから入れん。クロリア様帰ってきたら詳しく聞かせてもらいますぞ!」
私はその声を背中で聞き笑いがこぼれた。
カイエルはシスターコンプレックスなのね。
私にも妹がいたら男関係を心配するんだろうか。まあ、いない者を考えても仕方ないか。
私はアリエルの手を引くと門から外の世界へと出た。