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幼馴染が女勇者なので、ひのきの棒と石で世界最強を目指すことにした。  作者: のきび
第三章 ミスティアとクロイツ ―ふたりの魔王討伐―
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クロイツとリセットマラソン その一

 私の名前はクロイツ、アキトゥー=クロイツ=シルフィーネ。カイエルやアリエルをブカロディの魔の手から助け、アキトゥー神国へ向かう途中、謎の隠里ハコブネを訪問している。


 そして私にはガリウスという大事(・・)な人の記憶がない。


 私は魔物にやられ仮死状態になっていたらしい。ようやく目を覚ませば、その時のショックで一部記憶を失ったのだと二人は言う。


 更に驚くべきことに、私がそのガリウスとやらに負けて求婚までしたというのだ。

 ありえなくはない、私達神国は強き子孫を残すため強者との婚姻が義務つけられている。だから私を倒した人となら求婚することもあり得るのだが、いくらなんでも初日で求婚することなどありえない。

 そんな破廉恥に育てられた覚えはない、最低でも1年はお付き合いをしてからではないと求婚などしない!

 だが、年齢も年齢だしもしかして焦り? いや、そんなのはないはず。駄目だわからない。


 そして記憶よりも重要なことがある。黒ノ神剣(クロノデバイス)が私の手元にないという事実だ。

 二人が言うには黒ノ神剣(クロノデバイス)はガリウスが持って行ったという。


 でも、この二人の言うことを完全に信用しきれない理由がある。


 神剣(デバイス)は所有者しか持てない、所有者以外のものが持てばその身は崩れ落ち死に至る、だからそのガリウスとやらが持てるはずがないのだ。

 とは言え実際に私のそばに神剣(デバイス)はない、私が死んだことで神剣(デバイス)が新たな所有者を求めた可能性もあるが、あれはアキトゥーの血族以外のものを選ばない、故にアキトゥーの血は厳格に管理されており王より2等身のものまでしか子を産むことが出来ない。

 だから外にアキトゥーの血が流れることは無い。


「それで、そのガリウスと言うのは今どこにいるの?」


「2年前から行方不明です」


 行方不明、私の剣を盗んだガリウスをぶっ飛ばしたいところだけど、いないものは仕方ないわね。正直私がその人に負けたということも信じがたいし、私から求婚したというのはもっと信じがたい。

 できれば二度と会いたくない。


「ガリウスか、まさかミスティアの幼馴染と同じ名前とはね。これも何かの縁かしら」


「クロイツ様、その勇者ミスティアの幼馴染のガリウス様がクロイツ様のお相手のガリウス様です」


「は? そんなことありえるわけ……。いや、ミスティアはランスロットと婚約した。つまりその幼馴染君はフリーなわけだ、ならありえるのかな」


 私が物思いにふけっているとアリエルの胸が目に入る。しかし2年で大きく育ったものね、私はそっとアリエルの胸に手を伸ばした。


「クロイツ様お戯れはおやめください」


 そう言うとカイエルが私の手を払う。結構痛かったので私はカイエルに手刀で攻撃をした。

 しかし、そのすべてをカイエルは難なくかわすと私の手刀を片手で掴む。すると私の身体は身動き一つできなくなってしまった。


「申し訳ありませんが神の祝福(プライム) です、少し落ち着いてください」


 記憶がないせいで少しストレスがたまったようだ。戦いでストレスを発散させようとする私の悪い癖だ。

 しかし、なぜカイエルがこんなに強いの? まるで私が赤子扱いとは寝ている2年でなにがあったのよ。


 ただ、強いと言ってもカイエルは私の求婚相手にはなりえないわね、心が引かれないもの。


 それは置いておいて、カイエルに強さの秘密を聞くと神様が協力してくれたという。瘴気感染(パンデミック)が起きるたびLV1にしてレベル上げを行い、ステータスを驚異的に上げたそうだ。

 通常一度上がったレベルは下げられないつまりレベルが高くなればなるほどステータスは上がらなくなる。

 そして何より、レベルドレインと違い、神のレベルダウンはステータスが変化せずレベルだけが下がるのだという。


 つまりレベルが上がりやすいLV1まで落とすと言うのはステータスを上げるうえでは最高の選択だ。

 カイエルはさらにそれを使いレベル100まで上げてレベルダウンを繰り返し、欲しい神の祝福(プライム)が出るまで何度も繰り返したそうだ。その方法をリセットマラソン(リセマラ)と言うそうだ。


 そして手に入れたのが妹を守るための神の祝福(プライム)だそうだ。2年たっても妹馬鹿のままなのね『主従そろって一途よね』。


「わたしも、それをやりたい」


 私は神にリセマラをしてくれるよう懇願した。


「お主、ガリウスのことは良いのか?」


 良いも何も、私はガリウスのことを知らない。それに黒ノ神剣(クロノデバイス)が無い以上、私には使途を倒すことはできない。使徒を倒すことが出来ない私に存在価値など無い。

 なら今やれることは力をためることだ、男を追いかけてる場合じゃない。


「今は男よりも力を高めたいです」


「クロイツ様!」


 アリエルが私を責めるような目で見るが、カイエルに遅れを取った私には他に選択肢はない。


「よかろう、お主もここで強くなるがいい」


 神は私の懇願を快く承諾してくれた。


「ありがとうございます」


 その日は目覚めたばかりということもあり、体調を整えるためにレベルダウンは翌日からということになった。

 ちなみに軽くアリエルと手合わせをしたがアリエルにも負けてしまった、あのアリエルがこれほど強くなるとは驚きだ。

 リセットマラソンが今から楽しみで仕方がない。


 翌日、神の間にてレベルダウンの儀式を行いLV1になった。これにより神の祝福(プライム)を一つ失った。


 失った神の祝福(プライム)思考の歩み(トレイン)、これはマーキングした場所や人のそばに瞬間移動できる。正直これがなくなるのはかなりの痛手だ。

 だけど今よりも強くなれるなら私は何でも捨てられる。 何かを得るためには何かを捨てなければいけないのだ 。


 ガリウスと言う男のことも……。


 レベルダウン後の私が倒すのはウルティアの封印から漏れ出る瘴気で瘴気感染(パンデミック)したときに現れるパンドラの魔獣と言う魔物らしい。聞いたことがない魔物だが相当強いそうだ。


 このハコブネ内で魔物がでるのが瘴気炉と言う場所だけで、ここは世界中に点在するウルティアの封印から漏れ出る瘴気を一か所に集める場所なのだそうだ。


 最近、瘴気が溜まるのが早くでいつでも瘴気感染(パンデミック)を起こせる状態だという。


 瘴気炉で注意事項として、瘴気感染(パンデミック)で発生した魔物には手を出すなと言われた。なぜなら手を出すとそいつらが一斉に襲ってくるからだとか。

 冒険者としては悪さをする魔物を外の世界に逃がすのは納得できないが、神様の指示なら不満などは言えない。


 獣人たちが広場に集まり、いつでも瘴気感染(パンデミック)を起こせる状態になった。


「今日はよろしくお願いします」


 獣人たちのリーダー的存在で長の息子が私にあいさつをしてくる。

 長の息子が言うにはガリウス殿には恩義もある、あなたのことは俺が守ろうということだ。

 獣人たちの認識も、私はガリウスの縁者ということらしい。


 またガリウスだ……。


 ガリウス、ガリウス。私とガリウスは無関係だというのに、無理やりくっつけられているようでイライラする。


「始まったぞ!」


 瘴気が湧き出てきて石が黒く染まる。そこから魔物が生まれると、魔物たちは一目散と出口へと向かう。

 数が多い、確かにこれが襲ってきたらひとたまりもない。しばらく魔物たちが生まれるのをただ眺めているとひときわ大きい鉄の塊が黒く変わり受肉していく。


 「でたぞ、パンドラの魔獣だ!」


 パンドラの魔獣、見た目は飛竜だが大きさが通常の3倍ほどで30mもある。そして特徴的なのは外骨格なのだ。


「まるで鎧を着こんだドラゴンね」


 一番槍は通常は長の息子なのだがリセマラ中は私に譲ってくれることになった。一番槍は倒した時の獲得経験値が通常よりも多くレベルアップしやすいからだとか。

 接待されてるようで気に入らないけど、今はその提案を受け入れるしか無い。


 私は渡された投擲槍をパンドラの魔獣に投げる、その槍はやつの右目を貫通して潰した。

幼いころより気分転換で習得した技がこんなところで役に立つとはね。

 

 魔獣が叫び声を上げる、それを合図に獣人たちも襲いかかった。





◆人物紹介◆

アキトゥー=クロイツ=シルフィーネ 26歳(死んでいた為実際は24歳)


挿絵(By みてみん)


現在の装備:アイアンウルティニウムの剣


アイアンウルティニウムの作り方:パンドラの魔獣を作成するときに鉄を置いておくとそれに受肉しだす、鉄に受肉した場合通常よりも強くなるがそこからとれる魔石はアイアンウルティニウムとなり鉄よりも上質な素材になる。

他の金属でも可能だが使う金属によってパンドラの魔獣の強さが変わるため伝説の金属等の使用は控えた方が良いだろう。

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インフィニティ・プリズン~双星の牢獄~ シリーズ
『おさじょ』に出てくるアディリアスとウルティアの二人の神たちの物語 『聖剣のネクロマンサー』
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