我が名は勇者マイラ
翌朝、私達はもう一度冒険者ギルドに向かった。
ミリアスとサラスティは夜のうちに仲直りしたようで、仲睦まじくイチャコラしていた。
受付で戦争の情報を聞いたところ、現在小康状態にあるらしい。
理由は精霊鬼だ、大天使フィリィアちゃんが降臨なされたそうだ……。
あいつが進行を独りで食い止めているという。
精霊鬼なら押し返すことも出来そうなのに。
なにか思惑があるのだろうか。
精霊龍は王城から座して動かず、黒の戦士が所在不明。
マップで確認したが精霊はマップに映らないようで確認ができない。
街道は安全が確認されているので、問題なくチバケインまで行けるそうだ。
宿屋に戻ると盗賊から奪った馬車に乗り城塞都市を出た。
念の為、馬車の盗賊マークは土魔法で削っておいた。
サンドペーパーでごしごしだ。
はぁ、それにしても懲りない連中ね。
前方にゼロスの元仲間の冒険者と、そいつらに雇われたと思われる冒険者が数人いる。
まあ、こう言うことしてくるとは思っていたけどね。
私も腹を決めるときが来たようだ。
馬車を待ち伏せの少し手前で止め独りで向かった。
その私を20人の男が取り囲む。
「B級冒険者の先輩としてあのまま行かせるわけにはいかねぇんだよ」
髭面の男が数の有利からか鼻息荒く息巻く。
アゴに包帯を巻いて勢い込まれても怖くもなんともない。
「我が名は勇者マイラ。勇者の名が怖くないなら、かかってきなさい」
「勇者だと? 気でも狂いやがったか」
私を取り囲む男達が腹を抱えて笑いだす。
髭面の両脇の男の首を斬撃で切り飛ばす、その瞬間男達の笑い声は消え去り皆武器を構える。
「遺言はありますか? まあ、聴きませんけど。 真・星王剣」
17人の一瞬で心臓を撃ち抜いた、心臓を撃ち抜かれた冒険者は光の粒子となり消え去る。
生き残った3人は何が起きたかわからないようだが私が何かしたであろう事はわかるのか、私を化け物を見るような目でみる。
「そこの男とそこの女、お前ら二人だけ生かしておいてあげる。勇者が現れたことを世界に広めなさい」
指名された二人は互いに顔を見合わせ、私を見ると首を激しく上下に降り了解のジェスチャーをする。
口があるんだから喋りなさいよ。
この二人だけ殺しをしていない、チャンスを与えよう。
今後、悪事をすることがあれば死ぬ呪い魔法をかけておいた。
その事は告げない、自分の普段の行いで自分の運命を決めるが良い。
「なんなんだお前は! なんなんだ!」
髭面は私の方に剣を向けブンブン空を切る。
「ゼロス来なさい」
「ぜ、ゼロス。お、お前から助けるように言ってくれ!」
ガブルは馬車から出てきたゼロスに自分の命乞いをさせようと必死に乞う。
「……マーちゃん」
私はその言葉を聞く前に髭面の首と胴体をお別れさせて上げた。
他の連中と同じく光の粒子にしなかったのはガブルの死を心に焼き付けるためだ。
これでゼロスは怯えることもなくなるだろう。
待ち伏せをした連中は盗賊と認識され殺されても文句は言えない。
彼らはすべてB級冒険者だった、私はA級なので私の発言の方が重要視される。
更にこちらにはアキトゥー神国王女マリアもいる。
そして何より私は言った。
私が勇者マイラだと。
あの二人が本当の事を言うか分からないけど。まあ、その時は勇者の剣を見せれば良いだけだ。
御者の席に戻り馬車を出発させるとゼロスが隣りに座って私の肩に頭を乗せてきた。
「おい! 貴様何してる」
その行動を恋愛行動と見なし注意をする。
「別に大丈夫よ」
マリアがそう言うとマイラ姐は兄貴のものだとか言い合いが始まった。
マリアをこちらに引き入れておいて正解ね。
それから、二日ほど街道を進んだところでチバケイン神国の関所に着いた。
私は関所の門番にA級のタグを見せ名前を名のった。
門番が驚きの顔を見せると、私に少し待つように言い奥に引っ込んだ。
残っている門番の私を見る男の目がキラキラと輝いているように見えるのは気のせいだろうか?
門番が奥に入ると関所が騒がしくなった。
きらびやかな鎧を着た男がこちらに来る。
近衛隊長? 王直属の兵が何の用なのだろうか。
「お初にお目にかかる勇者マイラ様。私はチバケイン神国近衛隊長ゲルイツ=ビルド=マクレインと申します」
そう挨拶すると自分よりも位が上の者にするように礼をする。
「これは丁寧な挨拶をありがとうございます、私は勇者マイラと申します」
私も貴族にするような挨拶を返す。
どうやら、生かして帰した二人がちゃんと報告したのか王国連合にも伝わっており勇者の剣の確認を求められた。
剣を確認したあと、本物の勇者と言うことを分かってくれたようで国賓扱いをしてくれるそうだ。
私達は近衛兵に護衛され王都まで行くことになった。