襲われた二人
宿屋に戻るとマリアとジュエリがキャッキャ、ウフフと踊っていた。
「なにしてんの?」
私は冷めた感じで問いかける。
別に仲間はずれで寂しいとかじゃないんだからね。
「見てくださいお姉様」
そう言うとジュエリをズイッと私の前に出す。
もじもじと上目使いで私を見る姿は犬好きでもやられますわ。
緑色のドレスが茶トラ色の髪とあいまって可愛い。
と言うかマリアは同じ服の色違いになってる。
双子コーデですか、そうですか。
三つ子コーデじゃダメだったんですね。そうですね。
まあでも素直に可愛い。
私はマリアにサムズアップし、いいねボタンを押す。
そんなボタン無いけどね。
ジュエリがまだ上目使いで見ているので頭をなでた。
なにこの髪質……。やばい超気持ちいい。
ジュエリの頭をなでてトリップしていると、マリアのチョップが私の手を弾く。
「お姉様、ジュエリの頭は私のものです !」
「あ、はい」
「マイラ様にもなでてもらいたいにゃ」
その言葉を聞きマリアが私に殺意の波動を投げかける。
やめて欲しい私は犬派だ。
モフモフ、モフモフ。
なぜか殺意の波動がうなぎ登りである。
良く見ると私はジュエリの頭を無意識になでていた。
危ない、この毛並みは危険だ、状態異常無効の私の体が魅了されかけていた。
「し、しかし、ミリアス達遅いわね」
外は既に夕闇に包まれていた。
コンコン
入り口のドアがノックされる。
だが既に人はいない。
ノックをした人物は足早に遠ざかっていく。
念の為にステータスチェックすると。禿鷹盗賊団の人間だった。
ドアを開けると手紙が置いてあった。
そこには″二人は預かった、殺されたくなければ西のアサシン酒場に来い″と書かれていた。
油断した、町の中だし襲われることなど無いと思っていた、失策だ。
でも、あのとき全ての盗賊は殺したのに。
なぜばれたのだろうか?
城塞都市をマップで確認すると構成員が100人以上もいる。
まだ盗賊を殺してから1週間しか経っていないのに、しかもこの都市についたのは昨日よ、どうなってるの。
チンピラや準構成員か……。
マップで禿鷹盗賊団の準構成員を検索した。
嘘でしょ、この街だけでも準構成員が500人以上もいる。
私達は敵の胃袋の中にいるようなものだ。
私は三人に守護星霊をかけてマリアに三人を守るように伝え、捕らえられている二人の元に向かった。
先ほどマップで確認したのだが、二人は西にいない、南の倉庫にいる。
西のアサシン酒場は罠ね。
南の倉庫の前にいる二人の見張りを魔法で寝かせ倉庫内に入るとミリアスがリンチを受けていた。
「やめなさい!」
殺しても良いけど、今殺すのはまずい。
どこまで私達の事がばれているのか調べなければ。
「おいおい、西に来いと言ったはずだぜ。何でここだと分かった?」
大柄な男が大斧を持って立ち上がる。
「仲間を離しなさい」
「おいおい、主導権を握ってるのはこっちだぜ」
にやにや笑って、いかにも嫌な奴だ。
「サラスティは……。彼と一緒にいた女性はどこ?」
「奥で手下達が楽しんでるぜ。ぐへへ」
この笑い声は本当に癪にさわる。
「お前ら!!」
「おっと待てよ、動いたら二人を殺すぜ」
悪党はいつも人質をとって言うことを聞かそうとする。
なぜどいつもこいつも同じなのだろう。
まあ、正々堂々と戦えるならこんな家業しないか。
「何が望みよ」
「これを付けな」
盗賊は私の方に手錠を投げて寄越した。
こんな手錠など簡単に破壊できる。
私は手錠を両手に付けた。
その瞬間体から魔力が抜けていく、力も入らない。
「ひひひ、スゲーだろそいつは大和神国製の束縛錠だ、付けたやつのすべてを奪う」
そう言うとイヤらしい顔つきで私の方ににじり寄る。
私は必死に逃げようとするが体が動かない。
盗賊は私を蹴り上げ仰向けにすると首を押さえつけニヤリと笑う。
「まさか、噂の狂犬マイラを抱けるとはな」
「くっ殺せ!」
盗賊は私の服を切り裂くとゆっくりともて遊ぶ。
「ん、くっ」
「へへへ、上手いだろ娼婦泣かせのガブル様とは俺の事だ、今トドメを刺してやるからな」
盗賊はズボンを下ろし汚いものを私にあてがう。
「あーごめんね、そこまでにしてもらえる?」
私は私を犯そうとする盗賊の後ろから声をかけた。
今、盗賊が相手をしているのは真・星王剣・牡牛座で作りだした分身体の一つだ。
強化された分身体は見た目も私と変わらない上に意思の疎通ができる。
捕まってあいつが汚らわしい事をする前に意識を遮断したけどね。
とは言え、分身体でも私が汚されるのは見るに耐えないわ。
「なっ、どういう事だ!」
私は盗賊の顔に蹴りをいれ、束縛の魔法で体を縛る。
「くそが!」
「ミリアス大丈夫?」
「マイラ姐、おれの事よりサラスティを」
ミリアスは自分のことよりもサラスティを気にかける。
「彼女なら大丈夫よ、私の分身が見張ってるわ」
あれを喰い千切って殺されるところだったけど。
「さて、娼婦泣かせのガブルさん、私達の事を知っているのはあなた達だけですか?」
「言う分けねぇだろ、くそ女!」
そうですか、そうですか。良いでしょうとことん相手してあげますよ。
「海賊危機一髪を破棄、ドリルは男のロマン」
ドリルは男のロマンは◯◯にドリルが出たり入ったりする拷問でついでに全ての間接を強力な万力で破壊する。
「ぎゃあああ、やめろぉぉぉ」
「安心して良いわよ潰すものがなくなったら自動で回復してくれるから」
「言う、言うからやめてくれ、ぎゃああああ」
私はそれを聞こえない振りをする。
もう一人の分身体がサラスティをつれてくる。
ミリアスを回復してあげると、すぐにサラスティに駆け寄った。
なんだかんだ言って彼女が大切なのだ。
「俺は、サラスティがあいつらに汚されたとしても愛してるから」
ミリアスがすごい勢いで後方に飛んでいった。
サラスティが顔を真っ赤にして怒っている。
良い角度でパンチが入るとレベルが低くても飛ぶのね。
注意しとこ。
「私は! 私はちゃんと操を守ってます!」
そう言うとスカートを捲し上げ魔導具ショーツを見せる。
あれは貞操帯と同じで履かせた本人しか脱がすことはできない。
なるほど、脱がせられないことにイラだった盗賊があれを口にいれてガチンと千切られたわけだ。
「馬鹿なことを言った、すまない」
操を護れなかった疑いをかけるだけでも貴族にとっては侮辱なのだ。
守れなかった事と暴言で、ミリアスはなんとも情けない表情をする。
「あんな下賎な輩に体を任せるなら死を選びます」
その言葉を発するサラスティはまさに高貴な貴族だった。