幼馴染みですよ?
マリアが来ていない。
忘れてた、昨日ゼロスの様子を見に行ったときに、『夜這いですか?行かせませんよ!』といわれたので、そのまま縛り上げていたのだった。
マリアの縄を解除すると、上の方でドスンという音が聞こえたのでちゃんと解除できたようだ。
マリアが素早く降りてくると私を睨む。
「何でしょうか?」
私は努めて冷静に尋ねた。
「お姉様、処女ですよね?」
取り敢えず頭を拳骨でなぐった。
「当たり前でしょ」
「だって昨日の夜はずっとゼロスの部屋にいたじゃないですか」
いや、様子見に言ったら部屋の隅で震えてたから一緒に寝たんだけど。
まあ、それ言ったらまた騒ぎになるし言わないほうが良いか。
「違うんだマーちゃんは震える僕を抱き締めてくれてただけなんだ」
「「は?」」
ゼロスあんたなに言ってんの、わざわざ波風たてないで。
案の定二人は私をキャンキャン責める、何もしてない事を告げても信じてもらえないし、面倒ね。
「お兄ちゃんお姉ちゃんどうしたにゃん?」
ジュエリも降りてきて私たちが騒いでいるのを不思議がる。
「あ、おはようございますにゃ」
挨拶を忘れていたことに気がついて慌てて挨拶をするジュエリに二人はホンワカとして私を責める事を忘れる。
皆が集まったので朝食になったのだが、平民と同じ席で食事が嫌なサラスティが別な席に付く、ミリアスも付き添いでそちらのテーブルに座った。
まあ、これは仕方ないことなので気にしない事にしよう。
朝食後はチバケイン神国の情勢を聞く為にギルドに向った。
「うぅぅ~ガガァ」
そこには昨日の3人がまだ海賊危機一髪にかかったままだった。
「……」
私は無言で中央の剣を押した。
三人は上空へ飛びそのまま受け身をとれず潰れたヒキガエルのように床に這いつくばる。
リーダー格の髭面が起き上がり私を睨む。
素直にすごい,これだけ長時間拷問されたのにまだ反骨精神を持てるなんて。
「おいゼロス、こっちへ来い」
髭面がゼロスを呼び寄せる。
ゼロスは怯えた表情で髭面の方へと行く。
私はそれを止めるが手を振り払ってでも行こうとする。
「無駄だぜ、そいつは散々調教したからな。俺の命令には絶対服従なんだよ。今日はその女の分も罰として体で払ってもらうぜ。ぐへへ」
こいつ殺すか。
私が暗殺魔法を唱える瞬間、ゼロスの前にマリアとミリアスが立ちふさがる。
「なんだお前ら」
髭面が二人に凄む。
「それはこっちの台詞よゴミクズ野郎、私たちの仲間に手を出すなんて良い度胸ね」
「この男はおれの仲間だ、手を出したら殺すぞ貴様」
マリアとミリアスはあれだけ無視をしていたゼロスを仲間と言って庇う。
「おいおい、B級になりたての若造がベテランB級冒険者に楯突くんじゃねぇよ」
マリアは鼻をフンと鳴らすと髭面の顔に蹴りを入れる。
「なら私は神国王女として対応しますわ」
そう言うとギルドの受付へ行くと口上をのべる。
「私はアキトゥー神国王女アキトゥー=クロウォリ=マリア。我が名に於いて、その髭面の冒険者としての資格を剥奪します」
神国王族はそんな事できるのか、ミリアスもビックリしている、ミリアスには出来ないことなんだろうな。
「了解いたしました。B級冒険者ザグルの冒険者資格を剥奪いたします」
受付の女性は事務的に受諾する。
「は? どういうことだよ!」
髭面の男は受け付けに文句を言うが受付は知らん顔。
それにイラついたのか、事の発端であるマリアに殴りかかる。
それに呼応してミリアスが動く。
ミリアスは髭面のパンチを片手で受け止める。
後ろからマリアの槍の石突きが髭面の顎を襲う。
鈍い音がして後ろに倒れる、あれは顎が割れた音だ。
髭面はミリアスに引きずられて外に放り投げられ、頭から地面に落ちて気を失う。
これは治療する必要ないね、自業自得よ。
「ありがとう」
ゼロスが腰砕けになって涙を流しながら一言お礼を言った。
「仲間に手を出すやつは許さないだけだ」
「そうよ、それだけよ」
昨日は態度悪かったけど一応仲間として認めてるわけか。
「私からもお礼を言うわ、ありがとう」
その言葉に二人ともばつの悪そうな顔をする。
その後二人はゼロスに冷たく当たったのを謝った。
私はメルウスのものでゼロスに取られると思ったそうだ。
それで冷たくしたと言う。
ものじゃないけど、私はガリウス様の側にいたい。
「まあ、これで雨降ってぢ固まるだな」
私はミリアスの頭を殴る。
空気読めないミリアスさんにはお仕置きですね。