狂犬は変わりませんでした。
「ゼロス!? 何でここに」
彼はグランヘイム王国のツルヌ村出身だ。
今その場所は大和神国内にある。
つまり、あの村の皆は……。
「俺、マーちゃんが冒険者になってから後追いで冒険者になったんだ」
ゼロスは私が冒険者になったのを聞くと自分も冒険者になったと言う。
その後、雑用係としてB級冒険者のパーティーに入り依頼で他国に来てるところでグランヘイムの滅亡に合い助かることができたそうだ。
「でも良かったよ心配してたんだ」
ゼロスが私のそばに来て手を取る。
「おいゼロス! こっちこい!」
髭面の大男がゼロスを怒鳴りつけて呼ぶ、嫌な感じの男だ。
「ごめん、ちょっと待っててね」
小走りに酒の席に戻ると、ゼロスは頭を殴られた。
頭を殴られてもヘラヘラとニヤケ顔を見せ媚を売る。
髭面が私のほうを見てゼロスになにか指示だし、その直後にまた頭をはたかれた。
ゼロスが足取りの重い足で私の方に戻ってくる、その顔は先程とはうって変わって暗い。
「ごめん、マーちゃん。テーブルに来てお酌してくれないかな」
卑屈な笑みを見せ私にも媚びを売るような素振りを見せる。
昔はこんな笑みを見せる人じゃなかった。
私はその申し出を受けると男三人が待つテーブルへと向かった。
「おほぉ、マジでスゲーベッピンじゃねぇか」
そう言うとコップを突き出し、お酌するように言ってきた。
ゼロスの立場を考え私は素直にそれに従い粗野な男のコップに酒を注いだ。
「しかし、ゼロスが狂犬マイラと本当に知り合いとはな。良い拾いもんだったぜ」
「ゼロスがお世話になったようで」
「おうおう、お世話してやったんだぜ男娼としてな」
そう言うと三人の男は下卑た笑い声をあげゼロスを嘲笑する。
ゼロスは体をブルブルと震わせ拳を握りしめるが、その顔はかわいがって欲しいと言うような顔をしていた。
「お前の世話もこれから俺達がしてやるからな、B級に上がったばかりの新人は良い先輩の元に付かないとな」
「今夜は楽しみ概がありますね」
「朝までオールだな明日は腰が立たなくしてやるからな」
三人が三人共、思い思いに汚らしい言葉を口にする。
「私の相手は骨がおれますよ?」
「ん、言うじゃねぇか。今夜は寝かせねぇぜ」
そう言うと私の胸にてを伸ばす、何で男ってどいつもこいつも胸が好きなんだろう。
おっぱいの星から来たおっぱい星人の転生者なんだろうか?
私はその伸ばしてきた腕を取りボキボキに折った。
情けない悲鳴をあげ、テーブルの料理や酒をメチャクチャにして倒れ込む。
「だから言ったでしょ、骨がおれるって」
「てめぇ良いのか、お前の幼馴染みがひどい目に遭うぜ」
「なにか勘違いしてるようだから教えるけど私はA級冒険者よ、つまりあなた達からゼロスを取り返す事ができます」
「A級だと、1年かそこらでA級に昇格したのかてめぇ」
「上級の冒険者に向かって、てめぇですか。お仕置きが必要ですね」
「A級になったばかりの奴なんてB級と変わらねえ、こっちは3人だやっちまえ」
ちょうど良いかな、この3人で試してみるか私の創作魔法。
実は魔人を倒したときにレベル200になっていた。
神代魔法もあるし、すべての魔法も使える上に強化魔法も使えるので使う気はなかったけど。
精霊鬼と戦って使えるものを使う努力をしないのは驕りだと気が付いた。
新たに得た神の祝福は創作魔法、ただし作れる魔法は1個だけで新しい魔法を作るときは前回の魔法を破棄しなければいけないと言う微妙に使いづらい神の祝福なのだ。
少しでもこの神の祝福に慣れておかなければいけない。
次に精霊鬼と戦う時のために。
「海賊危機一髪」
私の創作魔法出来たわね。
ちなみにこの魔法は大型の樽に体を拘束され1分毎に激痛を伴う幻想の剣が突き刺さるのだ、物理ダメージはないので永遠に死ぬことはない。
ショック死は回避されるのもこの魔法の良いところかな。
ギャーギャー喚く連中を後に、ギルドの受付でゼロスの保護者を私に変更した。
しかし、これだけやったのにギルドの職員は我関せずである。
まあ、職員も怪我したくないだろうしこれが当然と言えば当然か。
冒険者ギルドって力こそ全てなのよね。
まあ、今はそれがありがたいけど。
「ゼロス行くわよ」
「こんな事したら後が……」
仕返しを恐れるゼロスを引き連れ私はギルドを出た。
「仕返ししてきても返り討ちにするわ。それに、あんな連中と一緒にいたらあなたがダメになるわ」
「……うん。ありがとう」
宿屋に戻ると、なぜかボコボコにされ正座させられているミリアスがいた。
般若の形相のサラスティもいた。
猫耳の女の子もいた。
あ、察し。