奴隷を買いに行こう
私たちは盗賊の馬車に乗り込み、チバケイン神国に向かっていた。
道中話し合い、計画を根本的に見直すことにした。
まず、チバケイン神国の側の話を聞く。
そして、サラスティには関わらせないように約束させる。
この条件が飲めないようなら滅亡も視野にいれるが、できるだけ力に訴えずに話し合いで解決することを旨とした 。
それに対してマリアは不服を漏らすが概ね納得してくれた。
なにか因縁があるようだけど、今は納得してもらうしかない。
そして、馬車に乗ってから重大な事実が判明した。
マリアとミリアスは馬車を操車出来なかったのだ。
今まででメルウスと私で馬車を操車していたので忘れていた。
ちなみに、ミリアスとマリアは操車など下男の仕事と言って変わってくれる気は全くない。
教えようとしても断られる。
まあ、元王族と現王族だからメルウスと相談して二人には操車させないことにしてたんだけど。
これ、私以外3人とも高貴な出だから、操車してくれないよね……。
「あのう、だれか操車変わってくれませんかね」
「お姉様のお願いでも断固拒否します」
「俺も元王族として御者はやれないな」
「私も上級貴族ですので……」
ハイハイ、私は商人の娘ですよ。
あなたたちとは家格が比較になるませんよ。
しかし、頑なに断るけど御者ってそんなに位の下の者がやるものなの?
まあ、この二人からしたら大体の人は下の存在か。
私は不貞腐れて街道沿いの林を眺めながら馬車を操る。
レベルが高いので体の耐久力があるのから御者も苦じゃないけど、永い道のりだ休憩だってしたい。
「仲間もう一人増やすべきかな」
私はいつの間にか一人で呟いていた。
「お姉様! 仲間増やすってなんですか?」
マリアはなにげに地獄耳だなと思いながら荷台を振り向くと、目に涙をためて無言の抗議を見せる。
「だって、いくら疲れないと言っても一人で馬車を操車するの大変なのよ?」
まあ、魔法で全ての疲れは回復できるんだけど。
一人で操車するとか精神衛生上って意味で嫌じゃない?
「だからと言って、仲間を増やすとかありえません、そこはメルウスの席です!」
マリアはメルウスを一途に思う。
私は憧れとか言って、すぐに捨てられたけどね。
「それは良いのだけど、メルウスはガリウス様って言うのは折り合いついたの?」
そう言われたマリアは勢いを無くし押し黙る。
「マイラ姐それは意地悪すぎ」
ミリアスが私をたしなめる。
「ごめん、ごめん。でも冗談じゃなくちゃんと考えておきなさいよ」
マリアは一言返事をすると荷台の後ろの方に移動した。
少し意地悪だった気もするけど、メルウスがガリウス様なのは揺るぎない事実なのだから、ちゃんと考えないといけないと思う。
「マイラ姐。そう言うことならさ、奴隷買えば良いんじゃないかな」
奴隷か、元現代人としては奴隷には抵抗がある。
それに、日本には奴隷制度が無かったので奴隷の扱い方がよく分からない。
両親も奴隷を使っていなかったしね。
「私、奴隷の扱い方分からないわよ」
ミリアスはそれなら大丈夫と胸を叩き大船に乗ったつもりでいろと言う。
泥舟じゃないと良いのだけど。
「奴隷ってどこで手に入れるの?」
「でしたら、この街道を半日ほど進めば城塞都市グラロムに到着しますのでそこでしたら奴隷市場があります」
奴隷市場、サラスティが言うにはチバケイン神国は奴隷の取引が盛んで、その周辺の都市もおこぼれに預かるために奴隷市場があるそうだ。
私は言われるがまま半日かけて馬車を走らせ城塞都市グラロムに入場した。
守衛に馬車を止められる宿屋を聞いたら、ミリアスに宿屋の場所を教えた。
つまり御者とは話をしたくないと言うことらしい。
殴りたいこの守衛。
取り敢えず宿につき落ち着いたところで、ミリアスに100万Gを渡して奴隷の件は一任した。
正直、私にちゃんと選べるか自信ないしね。
マリアとサラスティは留守番だ。
私は念のために冒険者ギルドに顔を出した掲示板の依頼書を覗いく。
そこには一枚気なる依頼書があった。
真の勇者のを求む。
″勇者選抜大会″
王国連合
それはミスティアの代わりの勇者を探す王国連合の依頼書だった。